目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「知的障害」にはどんな「特徴」が現れるかご存知ですか?【医師監修】

「知的障害」にはどんな「特徴」が現れるかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2026/01/15
「知的障害」にはどんな「特徴」が現れるかご存知ですか?【医師監修】

周囲の子と比べて発達がゆっくりで、「どうしてできないのだろう」と不安になることもあるかもしれません。知的障害は主に発達期に生じる障害で、知的な発達が遅れ日常生活に支援が必要な状態を指します。単なる努力不足や個性の問題ではなく、適切なサポートを受けることでその方なりの生活を送ることが可能です。本記事では、知的障害の基礎知識や日常生活・学習面での困難、子どもと大人で見られる特徴の違い、そして利用できる支援について解説します。

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

プロフィールをもっと見る
島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。

知的障害の基礎知識

知的障害の基礎知識

知的障害とはどのような障害ですか?

知的障害は、生まれつきまたは発達期に現れる知的機能の障害で、知能の発達水準が大きく平均を下回り、日常生活への適応が難しい状態を指します。具体的には、知能検査で知能指数(IQ)が約70未満であること、生活年齢に見合った日常生活能力が低いこと、2つの基準で定義されます。知的障害は脳の発達に影響を与えるさまざまな要因によって生じます。本人の努力ではなく先天的あるいは発達上の要因が大きいため、完治させる治療法はありませんが、適切な支援により生活能力を向上させることは十分可能です。

知的障害の分類について教えてください

知的障害はその程度に応じて大きく軽度・中等度・重度・最重度の4段階に分類されます。判断は知的能力(IQの測定値)と日常生活での適応能力の両面から総合的に行われます。以下に各分類の概要を示します。

分類 IQの目安
軽度知的障害 50~70程度
中等度知的障害 35~50程度
重度知的障害 20~35程度
最重度知的障害 20未満

これらの特徴はあくまで一般的な目安であり、発達の進み方や得意や不得意は一人ひとり異なります。

参照:『知的障害児(者)基礎調査:調査の結果』(厚生労働省)

知的障害だと日常生活の自立面で困りやすいことを教えてください

知的障害のある方は、日常生活でほかの方なら自立してできる作業に困難を感じることがあります。スケジュール管理や時間の概念の理解が不十分で、約束の時間に遅れてしまったり段取りよく行動したりするのが苦手なこともあります。

また、重度の知的障害の場合は食事や入浴、着替えなど基本的な身の回りの動作ですら一人では行えず、継続的な介助を必要とすることもあります。このように、知的障害があると金銭管理や交通機関の利用、家事や身辺処理など生活のあらゆる場面で健常者よりも苦手に感じることが多く、日常生活の自立には周囲のサポートが欠かせません。

知的障害がある場合、学習面でどのような困りごとが考えられますか?

知的障害のある子どもは学校での学習についていくことが難しくなる傾向があります。理解力や記憶力に遅れがあるため、新しい知識や技能を習得するのに人一倍時間がかかります。また、せっかく習った知識も断片的になりやすく、学んだことを応用して別の場面に活かすことが苦手なこともあります。そのため、一度習得したスキルであっても場面が変わるとうまく使えなかったり、応用問題になると対応できなかったりします。こうした学習面の困難さから、本人は劣等感や自己肯定感の低下を感じることもあるため、周囲が根気強く寄り添いながらその子のペースに合わせた指導を行うことが重要です。

知的障害にみられる特徴

知的障害にみられる特徴

コミュニケーション面ではどのような特徴がありますか?

知的障害がある方は全般的に言葉の発達が遅れやすく、年齢相応の語彙や表現力が身につきにくい傾向があります。軽度の知的障害であれば日常会話程度の簡単なやりとりは可能ですが、冗長な説明や抽象的な表現を理解することが難しく、複雑な内容の会話になるとうまく対応できません。また、自分の気持ちや考えを言葉で整理して伝えることにも時間がかかる場合があります。重度の知的障害になると、言葉による意思疎通そのものが難しくなり、周囲は表情や身振りなどから相手の気持ちを汲み取って支援する必要があります。

大人と子どもで特徴に違いがありますか?

知的障害の特性は一貫していますが、子どもと大人では環境や役割が異なるため、現れる困難は変化します。子どもの頃は発達の遅れとして現れ、言葉の遅れや学習の習得に時間がかかるといった形で気付きます。幼児期は遊び方や対人交流の幼さ程度でも、小学校入学後には学習や集団行動の困難が目立ち始め、判明する機会が増えます。

一方、大人になると生活範囲や責任が広がることで新たな困難が生じます。学生時代はサポートで生活できていた軽度知的障害のある方も、社会に出て初めて、仕事での指示理解の困難や人間関係の微妙なニュアンスが読めないといった問題に直面し、そこで初めて知的障害だと判明することもあります。

知的障害のある子どもの主な特徴を教えてください

知的障害のある子どもに見られる特徴として、言語発達の遅れがまず挙げられます。就学後は、読み・書き・計算などの学習面のつまずきが顕著で、抽象的な概念の理解も苦手です。また、全体的な学力の低さがみられ、特別支援教育を受けることが多いです。対人面や社会性では、同年代と比べて幼い行動が目立ちます。重度の場合は言葉での発語が少なく、身振り手振りで意思表示をすることもあります。

知的障害のある大人に多い困りごとは何ですか?

大人の知的障害者は、主に就労面日常生活の自立面で困難に直面します。就労面では、仕事の習得や遂行に時間がかかり、文書理解や新しい業務手順の習得に苦労します。また、暗黙の了解や職場のマナーといった目に見えないルールの把握も難しく、意図せずミスをしたり、報連相が滞ることがあります。複数の指示で混乱し、優先順位がつけられないこともミスにつながります。

また、日常生活では、金銭管理や役所の手続き、健康管理で困ることがあります。対人関係でも孤立しやすく、公的支援や理解が得られないと、うつ病などの二次的な精神疾患を発症するリスクもあります。知的障害のある大人が安定した社会生活を送るためには、これらの困難を踏まえた環境調整と支援が不可欠です。

知的障害への支援

知的障害への支援

知的障害が疑われるときはどこに相談すればよいですか?

知的障害の疑いがある場合は、早期に専門機関へ相談しましょう。子どもの場合は、教育センターや児童発達支援センターが主な相談先です。いきなり専門病院が不安な場合は、まず児童発達支援センターで発達検査、支援方針、診断サポート、関係機関との連携、療育施設の利用相談などが可能です。

大人の場合は、市区町村の障害福祉担当窓口や保健所、保健センターに相談してください。福祉サービスの情報提供や、必要に応じて専門医療機関や発達障害者支援センターへの紹介を受けられます。

学校や児童支援ではどのようなサポートを受けられますか?

知的障害のある子どもには、特別支援学校特別支援学級で、個別の指導計画に基づいた教育が提供されます。特別支援学校では、学習内容の断片化や実生活での応用が難しい特性を考慮し、生活場面を想定した実践的かつ継続的な指導により、日常生活で必要な知識や技能の習得を促します。特別支援学級でも同様に、少人数で発達段階に応じたきめ細やかな指導が行われます。また、学校外では、言語聴覚士(ST)や心理士による療育的サポートや、未就学児向けの児童発達支援などの福祉サービスが利用できます。

就労や社会生活でどのようなサポートが必要ですか?

知的障害者が社会生活を送るには、公的な就労支援制度や福祉サービスの活用が不可欠です。就労面では、ハローワーク経由の就労移行支援や一般企業への障害者雇用枠、または就労継続支援A型あるいはB型事業所があります。

生活面では、グループホームや福祉型入所施設での支援、日中の生活介護サービスがあります。また、療育手帳の取得で、年金受給や税金、公共料金の減免、医療費補助などさまざまな福祉サービスが受けやすくなります。このように、安心して働いて暮らせるよう、両方からのサポート体制が必要です。

子どもの頃と大人になってからでサポート内容は変わりますか?

知的障害の支援は成長段階に応じて変化します。子どもの頃は教育と発達促進が中心で、特別支援教育や療育で言語、生活スキル、社会性を高めます。

大人になると、就労支援や地域生活の支援に比重が移ります。福祉サービスで生活を支え、仕事探しや金銭、健康管理のサポートが中心です。

小さい頃から将来を見据えて支援機関と情報共有し、切れ目なくサポートを継続していくことが理想的です。各自治体には障害者相談支援センターなど、大人の障害者を包括支援する窓口もありますので、成長に伴い利用できるサービスを柔軟に見直していきましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

知的障害は決して珍しい障害ではなく、誰にでも起こりうる発達障害の一つです。本人の意志で克服できるものではないため、早期に適切な支援につなげることが大切です。しかし、子どもの頃から大人になるまで、必要な支援の形は変化します。そのため、生涯にわたって利用できる制度やサービスが整備されています。決して一人で抱え込まず、行政や専門家の力を借りながら環境を調整していけば、知的障害があっても社会でその人らしく成長、活躍することができます。

この記事の監修医師