給料日前にお金がないのについネットで買い物をしてしまい、後から後悔することが続くようなら、買い物依存症の可能性があります。買い物依存症は単なる浪費癖ではなく、自分の意思ではコントロールが難しい依存症の一種です。本記事では、買い物依存症の症状や特徴、治療方法や期間の目安、費用と保険適用、そしてご自身でできる対策や家族によるサポート方法について解説します。
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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
買い物依存症で治療が必要なサインとは

買い物依存症は病気として治療できるのでしょうか?
はい、買い物依存症は病気として専門的な治療の対象です。買い物依存症は、ギャンブルやゲームなどと同じ行動嗜癖(行動依存症)の一種であり、衝動的な買い物行動が自分では制御できなくなる精神疾患です。脳の報酬系と呼ばれる回路が過剰に刺激され、買い物による強い快感を覚えることでやめられなくなってしまいます。決して本人の意思が弱い性格の問題ではなく、脳や心の機能障害に起因するため、専門の医療機関で治療やサポートを受けることが重要です。
買い物依存症の主な症状や特徴を教えてください
買い物依存症には以下のような特徴的な症状がみられます。
- 衝動的・強迫的に買い物を繰り返す
- 買い物後の一時的な高揚と自己嫌悪
- 経済的・社会的な問題の発生
- 「もうやめよう」と思ってもやめられない
- ストレス解消の手段になっている
- 買い物の事実を隠す
このような症状がいくつかある、あるいは強ければ、買い物依存症の存在を疑う必要が出てきます。
浪費癖と買い物依存症の違いはありますか?
はい、浪費癖と買い物依存症には明確な違いがあります。浪費癖は文字通り「お金を浪費するクセ」であり、強い意識を持てば自制できる場合もあります。一方、買い物依存症は「買い物をしてはダメ」と自分ではっきりわかっているにも関わらず、購買行動を抑えられない状態です。これは特定の行為で得られる強烈な快楽に脳の報酬系が支配され、機能不全を起こしている状態です。つまり、浪費癖は意思の力でやめられますが、買い物依存症は意思では止められない点が大きな違いです。その結果、買い物依存症では借金や人間関係の悪化など生活への深刻な影響が生じやすくなります。
受診すべき症状やタイミングはありますか?
「もしかして買い物依存症かも?」と思ったら、早めに専門家に相談することをおすすめします。特に以下のような場合は受診を検討しましょう。
- 経済的な危機が迫っているとき
- 自分では止められないと自覚したとき
- 周囲から指摘・注意を受けたとき
- 精神的な不調を伴うとき
以上のようなサインがあれば、精神科や心療内科などで相談してみましょう。早期に対応するほど、社会生活への影響を最小限に抑えて回復できる可能性が高まります。
買い物依存症の主な治療方法

買い物依存症の治療は何科に相談すればよいですか?
買い物依存症かなと感じたら、精神科あるいは心療内科を受診するのが一般的です。依存症は脳と心の病気として扱われ、専門領域は主に精神科です。精神科では医学的根拠に基づいた診断と、薬物療法や精神療法による治療が受けられます。また、心療内科でも相談可能です。地域によっては依存症外来を設けている医療機関もあります。まずはお近くの医療機関に問い合わせてみるとよいでしょう。
買い物依存症で薬物療法が適用されることはありますか?
場合によっては薬物療法が行われることもあります。ただし、買い物依存症そのものを治す特効薬があるわけではありません。根本的な治療は心理療法ですが、症状や精神状態に応じて補助的に薬を用いることがあります。例えば、衝動性が強い場合や気分の落ち込みがみられる場合には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が処方されることがあります。SSRIは衝動の抑制力を高め、不安や抑うつ症状の改善に役立ちます。また、背景にほかの精神疾患が隠れている場合はそれらへの薬物治療も並行して行います。薬の使用有無は本人の状態によって医師が判断しますので、気になる症状は受診時に詳しく伝えるとよいでしょう。
買い物依存症の治療期間の目安を教えてください
治療期間には個人差がありますが、長い治療期間になると考えておきましょう。依存症は生活習慣や考え方を根本から見直す必要があるため、短期間で完治するものではありません。もちろん症状の重さによってはさらに長引くこともありますし、治療中に再発してしまうこともあります。その場合も焦らず治療を続けることが大切です。医師やカウンセラーと相談しながら、自分のペースで回復を目指しましょう。
治療費や保険適用について教えてください
買い物依存症の治療は基本的に健康保険が適用されます。ほかの疾病と同様に公的医療保険の範囲内で診療が受けられるため、自己負担は通常3割です。また、長期にわたる通院になる場合は自立支援医療制度を利用できることもあります。これは自治体の窓口で申請することで自己負担が原則1割に軽減される公的制度です。ただし、適用には自治体の定める条件がありますので、詳しくは医療機関や役所に相談してみましょう。なお、心理療法に関しては自費診療となる場合があるため、その点も併せて確認しておくとよいでしょう。
ネットショッピング依存にも買い物依存症と同じ治療が必要ですか?
はい、ネットショッピングであっても買い物依存症であることに変わりはなく、
基本的な治療方針は同じです。スマートフォンや通販サイトの普及により、24時間買い物ができる環境が依存を助長することがあります。そのため、治療においてはオンライン環境への対策も重要です。
この点を除けば、ネットで買おうと店舗で買おうと「買い物衝動に駆られて制御できない」という本質は同じです。よって、カウンセリングや認知行動療法を中心に進める治療プロセス自体はほかの買い物依存症と変わりません。ネット通販の場合はクレジットカードや電子決済を使うケースが多いため、カードを解約したり利用限度額を下げたりといった対策もよいでしょう。
買い物依存症の改善と支援のポイント

衝動買いを防ぐために自分でできる対策はありますか?
はい、自分で今日から始められる対策もいくつかあります。衝動買い癖を抑えるために次のような工夫を試してみましょう。
- 即買いしないルールを作る
- 家計簿をつけ収支を見える化する
- クレジットカードに頼らず現金を用いる
- 買い物以外のストレス発散法を持つ
すべてを一度に取り入れるのは難しいかもしれませんが、一つずつ取り組むことで少しずつ依存しにくい買い物を実践することができるようになります。
お金の管理はどう見直すとよいでしょうか
買い物依存症の改善にはお金の管理方法を見直すことが不可欠です。先ほどの対策と重なる部分もありますが、金銭管理のポイントをまとめます。
- 収入と支出を書き出す
- 支払い方法を制限する
- 先取り貯蓄の仕組みを作る
これらの習慣は最初こそ手間に感じますが、続けるほどお金の使い方がわかり、衝動買いに振り回されない生活を徐々に取り戻すことができるでしょう。
買い物依存症の家族にできることはありますか?
ご家族が買い物依存症の方を支える場合、適切な関わり方を知ることが大切です。以下に家族ができる主な対策を挙げます。
- 責めずに寄り添う姿勢
- 経済的な援助は慎重に行う
- 精神科など専門機関につなげる
- 環境とルールを整える
こうしたサポートは一度に完璧を目指す必要はありません。そのほかにも、家族向けの心理療法や依存症の家族会を利用して相談していく方法もあります。家族が少しずつ協力しながら環境を整えることで、本人が安心して回復へ向かう土台を築くことができます。
編集部まとめ

買い物依存症は近年増えているといわれる行動の依存症です。ただの浪費癖と違いがないように思えますが、その裏にはストレスや孤独感など心理的な問題が隠れていることもあります。買い物依存症を放置すれば借金や人間関係の悪化など深刻な結果を招きかねません。
本人が症状を自覚しづらいこともありますが、「やめたくてもやめられない」状況になったらそれはすでに自分の力では対処が難しいでしょう。早めに専門家の手を借りることで、適切な治療と環境調整によって改善は可能です。家族の支えも受けながら、少しずつ衝動をコントロールする術を身につけていきましょう。一人で抱え込まずに専門機関に相談することが、健全なお金との付き合いを取り戻す第一歩です。