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「劇症型溶連菌感染症」の症状はご存知ですか?重症化するとどうなるのかも解説!

 公開日:2026/01/20
「劇症型溶連菌感染症」の症状はご存知ですか?重症化するとどうなるのかも解説!

劇症型溶連菌感染症は、一般的な喉の感染症として知られる溶連菌感染とは異なり、短時間で全身に炎症が広がり、命に関わる危険性があるとても重篤な病気です。高熱や強い痛みから始まり、急速に血圧低下や多臓器不全を引き起こすこともあります。わずかな体調変化でも重症化する可能性があるため、早期の受診と適切な治療が何より重要です。本記事は、その危険性の理由と重症化を防ぐために知っておくべきポイントを詳しく解説します。

伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

劇症型溶連菌感染症とは

劇症型溶連菌感染症とは

「劇症化」とはなんですか?

劇症化とは、症状がごく短い時間のうちに一気に悪化し、命に関わるような危険な状態になることを指します。劇症型溶連菌感染症では、数時間から数日のうちに血圧低下や呼吸不全、多臓器不全などが急速に進行し、ショック状態に陥ることがあります。このように、通常の感染症と比べて進行がとても早く、重症度が高い状態になることを劇症化と表現します。

参照:『劇症型溶血性レンザ球菌感染症(STSS)』(国立健康危機管理研究機構 )

劇症型溶連菌感染症とはどのような病気ですか?

主にβ(A群、B群、C群、G群など)溶血性レンサ球菌の毒素産生株が全身に広がることで起こる、きわめて重い細菌感染症です。一般的なのどの溶連菌感染症とは異なり、菌が産生する毒素などの影響で急速に血圧低下や多臓器不全を来し、短時間で命に関わる状態に進行しやすいのが特徴です。初期には発熱や強い痛み、倦怠感など一見、風邪のような症状から始まることもありますが、数時間から数日のうちにショックや呼吸不全、腎不全などの進行があります。

参照:『劇症型溶血性レンサ球菌感染症』(厚生労働省)

一般的な溶連菌感染症との違いを教えてください

一般的な溶連菌感染症は、主に子どもの咽頭炎(のどの風邪)としてみられ、発熱やのどの痛み、発疹などが出ますが、適切な抗菌薬治療を行えば多くは数日〜1週間ほどで改善し、命に関わることはまれです。一方、劇症型溶連菌感染症は、同じ溶連菌による感染症の一種ですが、菌や産生される毒素が血流に乗って全身に広がり、急速に血圧低下や多臓器不全を起こす点が大きく違います。進行がとても速く、発症から数十時間以内にショックや軟部組織壊死を来しての死亡もあるため、致死率が高く、ICUでの集中的な治療が必要になる重篤な病気です。

参照:『劇症型溶血レンサ球菌感染症(STSS)~人食いバクテリア~ 』( 急性期ケア協会)

劇症型溶連菌感染症の重症化のリスク

劇症型溶連菌感染症の重症化のリスク

劇症型溶連菌感染症が重症化するとどうなりますか?

全身の臓器が次々と障害される多臓器不全の状態に陥る危険があります。初期の発熱や痛みなどの症状に続いて、血圧が急激に下がり、意識がもうろうとするショック状態、呼吸不全による呼吸困難、腎不全による尿量の低下などが短時間のうちに進行します。さらに、筋肉や皮下組織が壊死して黒く変色したり、血液の凝固異常(DIC)が起こり出血や血栓が生じたりすることもあります。発症から数十時間以内に致命的な経過をたどることもあります。

参照:『劇症型溶血性レンサ球菌感染症』(厚生労働省)

劇症型溶連菌感染症はどのようなときに重症化しやすいですか?

もともと発症すると短時間で重くなりやすい病気ですが、特に重症化しやすい状況がいくつか知られています。高齢の方新生児糖尿病慢性肝疾患悪性腫瘍アルコール依存症などの基礎疾患がある場合、またステロイドや免疫抑制薬を使用している方は、感染に対する抵抗力が弱く、菌が全身に広がりやすいです。さらに、外傷や手術後、産後、水痘の経過中など、皮膚や粘膜のバリアが傷つくときは、菌が体内に侵入しやすく、壊死性筋膜炎や敗血症へ進行しやすいとされています。また、強い痛みや発熱などの初期症状があるのに受診が遅れ、抗菌薬や集中治療の開始が遅くなることも、重症化の大きなリスクです。

参照:『劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS) 』(感染症対策支援サービス)

免疫力が低いと重症化の可能性が高くなりますか?

免疫力が低いと重症化の可能性が高くなると考えられています。高齢の方、糖尿病や肝疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患がある方、ステロイドや免疫抑制薬を使用している方では、細菌に対する防御機能が弱く、少ない菌でも血流に乗って全身に広がりやすいです。その結果、敗血症やショック、多臓器不全へ進行しやすく、ICUでの集中治療が必要となるケースが増えるとされています。ただし、基礎疾患のない健康な方でも突然劇症型の発症があるため、免疫が弱い方だけの病気とはいえず、誰にとっても注意が必要です。

糖尿病や心臓・肝臓の持病があると重症化しやすいですか?

重症化しやすいと考えられています。こうした疾患があると、免疫機能が低下したり、血流や臓器の働きがもともと弱っていたりするため、菌が全身に広がったときにショックや多臓器不全へ進行しやすいです。また、糖尿病では高血糖により白血球の機能が落ち、感染防御力が低下するほか、末梢の知覚低下で小さな傷に気付きにくく、感染が進行しやすい背景もあります。

重症化による合併症について教えてください

全身のさまざまな臓器に合併症が起こりやすいです。多くは強い炎症血圧低下が引き金となり、敗血症性ショックと呼ばれる危険な状態に進行します。この結果として、肺がうまく働かなくなる呼吸不全、腎臓の働きが急に落ちる急性腎不全、肝機能障害などの多臓器不全が生じることがあります。また、血液が固まりやすくなったり逆に出血したりしやすくなる播種性血管内凝固症候群(DIC)、筋肉や皮下脂肪が壊れてしまう壊死性筋膜炎などの合併症もみられます。

入院や集中治療が必要になるケースについて教えてください

劇症型溶連菌感染症では、命に関わる状態が疑われる場合には入院、特に集中治療室(ICU)での管理が必要です。全身状態が急激に悪化し、血圧が低下してショック状態になっている場合、呼吸が苦しく酸素投与や人工呼吸器管理が必要な場合、尿量低下や血液検査で腎不全・肝不全が示唆される場合などが代表的です。

劇症型溶連菌感染症が疑われるときの対処方法

劇症型溶連菌感染症が疑われるときの対処方法

どのような症状が出たら救急受診すべきですか?

劇症型溶連菌感染症は進行がとても速いため、「おかしい」と思った時点で早めの受診が大切です。次のような症状がみられた場合は、ためらわず救急外来の受診を検討してください。

  • 38度以上の高熱が続き、悪寒や強い倦怠感が急に悪化している
  • 手足や傷の周囲などに、我慢できないほど強い痛みと急な腫れ・赤みが出てきた
  • 動くと息苦しい、呼吸が速い、胸の圧迫感がある、唇や爪が紫っぽい
  • めまい感やボーッとする、会話がかみ合わないなど意識がはっきりしない
  • 尿の量が極端に少ない、全身のむくみ、皮膚が紫〜黒っぽく変色してきた

参照:『劇症型溶血レンサ球菌感染症(STSS)~人食いバクテリア~ 』( 急性期ケア協会)

自宅で様子を見るときに注意すべき点を教えてください

悪化のサインを見逃さないこと感染を広げないことが大切です。まず、熱や痛みが少しずつでもよくなっているか、逆に急に悪化していないかを数時間ごとに確認し、呼吸が速くなる・息苦しい・ぐったりして反応が鈍い・尿が極端に減る・手足や傷の周りが急に赤く腫れて強く痛む、などの変化があればすぐに受診を検討します。また、こまめな手洗い、マスクの着用、タオルや食器の共用を避けるなどで家族への感染拡大を防ぎ、処方された抗菌薬は症状が軽くなっても自己判断で中止せず、指示どおり飲み切ることが重要です。

参照:『所沢市ホームページ 劇症型溶血性レンサ球菌感染症について』(所沢市)

救急搬送時に伝えておいたほうがよい情報はありますか?

救急搬送時には、限られた時間で適切な治療につなげるために、いくつかの情報をできるだけ整理して伝えるとよいです。まず、現在の症状です。いつから、どの部位に、どのような症状(発熱、激しい痛み、腫れ、息苦しさ、意識状態の変化など)が出ているか、急に悪化したタイミングを伝えます。次に既往歴・服薬です。例えば、糖尿病や心疾患、肝疾患などの持病、最近の手術や外傷、出産歴、ステロイドや免疫抑制薬、抗凝固薬など日常的に飲んでいる薬などです。また、感染の手がかりとして、最近の溶連菌感染症の診断の有無、周囲での流行状況、ケガや傷・水痘など皮膚トラブルの有無などです。さらに、アレルギー歴、特に薬剤アレルギー(ペニシリンなど)の有無です。これらを書き留めて同乗者が代わりに説明できると、現場での判断がさらにスムーズです。

編集部まとめ

編集部まとめ

劇症型溶連菌感染症は、のどの溶連菌感染症とは異なり、短時間で全身に炎症が広がり、ショックや多臓器不全を引き起こすことがあるとても危険な病気です。はじめは発熱やのどの痛み、筋肉痛、倦怠感、手足の腫れや強い痛みなど、一見、よくある風邪や怪我のような症状から始まることがあります。しかし、数時間から数日のうちに血圧低下、呼吸不全、意識障害、腎不全などが急速に進行し、命に関わる状態になることがあるため、早期発見が何より重要です。そのため、「いつもと違う強い痛み」「急なぐったり感」「息苦しさ」「皮膚の急な変色」などがあれば、ためらわず救急受診を検討してください。

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