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「劇症型溶連菌感染症」を発症すると現れる「症状」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2026/02/10
「劇症型溶連菌感染症」を発症すると現れる「症状」はご存知ですか?【医師監修】

「高熱や手足の激しい痛みが起こり、どんどん容体が悪化していく」、そんな症状が現れたら、それは人食いバクテリアとも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)かもしれません。劇症型溶連菌感染症はまれですが極めて重篤な細菌感染症で、初期は風邪のような症状でも急速に悪化し命に関わることがあります。本記事では劇症型溶連菌感染症の基礎知識や一般的な溶連菌感染症との違い、特徴的な症状や見逃さないポイント、疑われるときの対処法について解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

劇症型溶連菌感染症とは

劇症型溶連菌感染症とは

劇症型溶連菌感染症とはどのような病気ですか?

劇症型溶連菌感染症(劇症型溶血性レンサ球菌感染症、STSS)は、溶血性レンサ球菌(溶連菌)によって引き起こされる重篤な感染症です。通常、溶連菌に感染しても喉の炎症(咽頭炎)や皮膚のとびひ程度で済みますが、まれに細菌が血液や筋肉など本来菌がいない組織に侵入すると、急激に症状が進行する重症感染症です。発症は小児から高齢の方まで幅広い年代で起こりますが、年齢とともに患者さんが増えるのが特徴です。病状が突発的に進行し敗血症性ショックに陥り、多臓器不全に至ることがあり、致死率は約30%にものぼるとても危険な疾患です。その深刻さからメディアでは人食いバクテリアと俗称されることもあります。

参照:
『わが国における劇症型溶血性レンサ球菌感染症の疫学(2025年7月4日現在)』(国立健康危機管理研究機構)
『劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)』(厚生労働省)

一般的な溶連菌感染症との違いを教えてください

一般的な溶連菌感染症とは、例えば子どもに多いA群溶連菌による咽頭炎(喉の風邪)や、皮膚の軽い感染症(とびひなど)を指し、発熱や喉の痛みを伴いますが抗菌薬で治療可能な軽症の病気です。

一方、劇症型溶連菌感染症(STSS)は溶連菌が血液や筋肉、脂肪組織など深部に侵入して起こるまれな重症型で、症状の進行がとても速く全身に及ぶ点が大きな違いです。通常の溶連菌感染症は小児に多くみられますが、劇症型は成人に発症することが多く、健康な方にも突然発症しうる点でも異なります。

つまり、同じ溶連菌感染でも劇症型では菌が体内で爆発的に増殖し、短時間でショックや臓器不全を引き起こすため、一般的な喉の溶連菌感染症とはまったく異なる危険性を持つのです。

急激に悪化する理由を教えてください

劇症型溶連菌感染症が急激に重症化する詳しいメカニズムは未解明とされています。しかし、一般には溶連菌が産生する毒素(エンテロトキシンなど)に対する身体の過剰な免疫反応の連鎖が、全身の炎症反応や血圧低下を引き起こし、高い致死率につながっていると考えられています。菌が通常存在しない血流や筋肉内に侵入すると免疫が暴走し、過剰な炎症反応が起こって血圧が急降下、臓器への血流が著しく低下します。その結果、ショック状態に至り、多臓器不全へと進むのです。また、傷口から菌が入った場合は局所で壊死性筋膜炎を起こし、それが全身に波及して劇症型に発展することもあります。このように菌そのものの毒性と宿主の過剰な反応により、劇症型溶連菌感染症はとても速いスピードで重篤化するのです。

劇症型溶連菌感染症の症状

劇症型溶連菌感染症の症状

劇症型溶連菌感染症の初期症状は風邪に似ているのですか?

はい、初期症状は風邪やインフルエンザのように感じられることがあります。具体的には発熱や悪寒、のどの痛み、全身の倦怠感、筋肉痛、吐き気や嘔吐、下痢などが初期症状として現れることがあります。こうした症状だけだと風邪様ですが、劇症型溶連菌感染症では早い段階から手足の強い痛みや腫れが現れる点が特徴です。初期は軽い喉の痛み程度でも、その背後で感染が広がっている場合もあります。風邪と思っていたら急に痛みが増してきたという場合は要注意で、油断せず経過を見守ることが大切です。

劇症型溶連菌感染症のショック症状について教えてください

ショック症状とは、血圧が急激に低下して臓器に血液が行き渡らなくなった危険な状態を指します。ショックが起こると、めまいや意識の混濁、冷や汗、手足の冷感などが現れ、立っていられないほどの脱力感が出ます。体内では急速に多臓器不全が進行し、呼吸困難や尿量の減少、肝機能の悪化などが生じます。劇症型溶連菌感染症ではこのショックが大変早く訪れるため、初期段階で適切な治療をしないと数時間~数十時間で致死的な状況に陥りかねません。

劇症型溶連菌感染症は手足の壊死につながることがありますか?

はい、手足の組織の壊死が起こる場合があります。劇症型溶連菌感染症では菌が筋肉や皮下組織に感染すると、該当部位の血流が絶たれて皮膚や筋肉が黒ずんで壊死することがあります。特に、傷口から感染が始まったケースでは、その周囲の軟部組織が急速に壊死していく壊死性軟部組織感染症(壊死性筋膜炎)を併発しやすく、手足の広範囲にわたり組織が死んでしまうこともあります。このような壊死が起きた場合、緊急手術で壊死組織を切除し感染拡大を食い止める必要があります。壊死が進行すると最悪の場合は四肢の切断が命を救うためにやむをえないこともあります。

意識障害や多臓器不全はどの段階で起きますか?

劇症型溶連菌感染症では、意識障害や多臓器不全はショックが発生する段階で起こります。初期には意識ははっきりしていても、感染が進んで血圧低下が起こり始めると脳への血流も不足し、錯乱状態や意識レベルの低下がみられることがあります。ショック状態に陥るときにはすでに肺や腎臓など主要な臓器の機能が急激に悪化し始めており、発症後わずか数十時間で多臓器不全に至る場合も少なくありません。こうした臓器不全が進行すると意識を保てなくなり、命の危険がとても高い状態です。

劇症型溶連菌感染症の症状が疑われるときの対処法

劇症型溶連菌感染症の症状が疑われるときの対処法

どのような症状が出たら救急受診すべきですか?

以下のような異常な症状がみられたら、一刻も早く救急受診すべきです。
  • 手足の激しい痛みや腫れ
  • 傷口の急速な悪化
  • 高熱や寒気、全身の倦怠感
  • めまい・意識レベルの低下

以上のような普段の風邪とは明らかに異なる強い症状が出現したら、迷わず119番で救急車を呼ぶか、速やかに救急外来を受診してください。特に夜間や休日で判断に迷う場合でも、様子をみるのは禁物です。少しでも「おかしい」と感じる点があれば、ためらわず医療機関に連絡をとりましょう。

家庭ではどのような対応をすればよいですか?

劇症型溶連菌感染症が疑われる状況では、家庭でできる対応は限られますが以下のポイントに留意してください。
  • すぐに医療機関へ連絡
  • 安静
  • 布団などで保温
  • 呼吸や意識レベルに変化がないか観察

以上のように、家庭では悪化させず、すぐ病院へつなぐことが最優先です。劇症型溶連菌感染症は在宅で対処できる病気ではありません。少しでも疑わしい場合は早め早めの受診を心がけ、決して様子をみて我慢しないでください。

編集部まとめ

編集部まとめ

劇症型溶連菌感染症は人食いバクテリアと俗称されるほど、とても危険な感染症です。溶連菌自体は子どもの喉の風邪など身近な病原菌ですが、劇症型では菌が血流や筋肉に侵入し爆発的に増殖、毒素を放出することで急速に全身状態が悪化します。初期は発熱や倦怠感など風邪に似た症状のため見逃されがちですが、手足の激しい痛みや腫れ、意識混濁など一つでも普段と違う異変があれば注意が必要です。早期発見と治療が何よりも重要であり、治療が遅れると数十時間以内にショックから多臓器不全に至る怖い病気です。少しでも「おかしい」と思ったら我慢せずすぐに医療機関を受診し、必要なら遠慮なく救急車を呼びましょう。劇症型溶連菌感染症は誰にでも起こりえますが、正しい知識と迅速な対応で重症化を防ぎ、大切な命を守ることができます。

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