「熱が出ると関節痛」が生じる原因はご存知ですか?痛くなりやすい関節も解説!
公開日:2025/12/10


監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
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眼科(角膜外来)
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関節痛と発熱が同時に起きるメカニズムと原因
関節痛と発熱が生じる病気にはどのようなものがありますか?
関節痛と発熱が同時に起きる背景には、感染症・自己免疫疾患・代謝性疾患などが関係します。感染症は、インフルエンザや風疹、パルボウイルスB19、EBウイルス、チクングニア熱、デング熱などが代表的で、発熱とともに全身の関節や筋肉が痛みます。細菌による化膿性関節炎は、高熱に加えて関節の腫れや強い痛みが出ます。感染以外は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど免疫が過剰に働く病気や、痛風・偽痛風などでも発熱と関節痛が同時に起こります。
感染症によって関節痛と発熱が同時に起きるメカニズムを教えてください
ウイルスや細菌が身体に入ると免疫細胞が活性化し、炎症性の物質(サイトカイン)が放出されます。これらが発熱や関節の痛みを引き起こします。インフルエンザは全身の防御反応が強まり、節々が痛むような症状が出やすく、数日で治まることが多い傾向です。チクングニア熱やデング熱など一部のウイルスは関節に強い炎症を起こし、痛みが長引くこともあります。通常は一過性ですが、免疫反応が強く続くと関節の違和感が残ることがあります。
感染症以外で関節痛と発熱が同時に起きる理由を教えてください
関節リウマチや全身性エリテマトーデスは、免疫が自分の組織を攻撃することで慢性的な炎症が起こり、発熱と関節痛が続きます。複数の関節が痛み、倦怠感など全身症状を伴うこともあります。痛風・偽痛風は関節内に結晶が沈着して急な炎症が生じ、発熱がみられます。さらに、細菌が関節内に侵入する化膿性関節炎や、感染後の炎症が残るウイルス関連関節炎でも同じように症状が出ます。発熱や痛みが長引くときは、感染症以外の病気も考えることが必要です。
発熱と同時に起きる関節痛の特徴と生じやすい部位
感染症によって生じる関節痛の特徴を教えてください
感染症による関節痛は、発熱と同時に全身の関節が広く痛むことがよくみられます。ウイルスが原因の場合、関節そのものが腫れたり赤くなることは少なく、押したときの痛みや動かしづらさが中心です。症状は一時的で、熱が下がるのと一緒に数日から1週間ほどで軽快することが多いです。デング熱やチクングニア熱のように、関節炎に近い強い痛みが続く感染症もありますが、多くは自然と回復に向かいます。
風邪で痛くなりやすい関節はどこですか?
風邪の際は、全身のだるさや筋肉痛と一緒に関節の痛みを感じることがあります。膝、肘、肩、腰など大きな関節に違和感が出やすく、重だるい痛み方が特徴です。発熱の過程で炎症性物質が増えることで、関節の周囲に軽い炎症が及ぶためです。
インフルエンザや新型コロナウイルスで痛みやすい関節を教えてください
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症は、発熱と同時に全身の関節や筋肉が痛みやすく、腰・膝・肩・肘など大きな関節に症状が目立ちます。ウイルスに対して免疫反応が強く働くことで、炎症性物質が増え全身の痛みにつながります。インフルエンザは「節々が痛い」と表現される痛み方が多く、熱が下がると改善に向かいます。一方で新型コロナ感染後は、関節の違和感が数週間続くことがあり、回復後の免疫反応が影響すると考えられています。
感染症以外ではどの関節が痛みますか?
感染症以外が原因のときは、病気ごとに痛みやすい関節が異なります。
関節リウマチは手指や手首、膝などさまざまな関節に左右対称の痛みと腫れが起こり、朝のこわばりを伴います。
痛風は足の親指の付け根に激しい痛みが出やすく、急な発熱と強い腫れを伴います。偽痛風は膝や手首に痛みが出ることが多く、特に高齢の方にみられます。
全身性エリテマトーデスは複数の関節に軽い腫れや痛みが出て、発熱や倦怠感を伴うことがあります。これらは慢性的な炎症を背景とするため、感染症のように短期間で治まるものではありません。
発熱と同時に生じた関節痛への対処法と注意すべき徴候
感染症による関節痛は何日程度で治りますか?
感染症が原因の関節痛は、発熱が落ち着くと少しずつ軽くなることが多く、一般的なウイルス感染は4〜5日ほどで改善に向かいます。長くても1週間ほどで治まるケースが多いです。身体がウイルスを排除する過程で起こる一時的な炎症が背景のため、回復に合わせて痛みも自然に和らぎます。一方で、チクングニア熱やデング熱など一部の感染症は炎症が長く続き、関節痛が数週間以上残ることもあります。回復後に軽いこわばりや違和感が続くこともありますが、時間とともに改善することが多い傾向です。
感染症による関節痛をやわらげる方法を教えてください
改善のためには、まずしっかり休むことが重要です。発熱中は身体のエネルギーが免疫反応に使われるため、無理に動くと痛みが悪化しやすくなります。水分補給や十分な睡眠を心がけ、身体を必要以上に温めすぎないようにします。
痛みが強いときは、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬が症状を和らげることがあります。関節が熱を持つ場合は、短時間の冷却が役立ちますが、冷やしすぎないようにしましょう。腫れが目立たず、筋肉の緊張が原因と思われる痛みは、体調が落ち着いてから軽いストレッチが有効なこともあります。日頃から適度な食事と水分摂取を意識することが回復の助けになります。
医師による診察を受けた方がよい症状や徴候を教えてください
発熱と関節痛が数日で改善しない、痛みが徐々に強くなるといった場合は、感染症以外の病気を考える必要があります。関節が赤く腫れ、強い痛みで動かせない状態は、細菌が関節内に入り込む化膿性関節炎の可能性があり、緊急の対応が必要です。発疹、強い倦怠感、息切れなど全身の症状を伴うときは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患が背景にあることもあります。発熱が長く続いた後に関節痛だけが残る場合は、感染後関節炎の可能性もあります。症状が長引くときは市販薬で様子をみるだけにせず、医療機関で検査を受けて原因を確かめることが大切です。
編集部まとめ
発熱と関節痛が同時に現れるときは、体内で何らかの炎症が起きているサインです。風邪やインフルエンザなどのウイルス感染は、免疫が病原体に反応する過程で炎症性物質が増え、関節や筋肉の痛みにつながります。多くは一時的なもので、発熱が下がるにつれて自然に軽くなります。一方、関節リウマチや全身性エリテマトーデスのように免疫が過剰に働く病気は、関節の腫れや発熱が続き、長期的な炎症を伴うことがあります。痛風や細菌性関節炎のように関節に急な強い炎症が起こる病気は、激しい痛みや高熱が特徴で、早い受診が必要です。
発熱と関節痛が出たときは、数日で改善に向かうか、痛みや腫れが強まるかが重要な観察ポイントです。症状が長引く、悪化する、ほかの症状を伴うといった場合は、医療機関で原因を確認することが大切です。早期に適切な対応をとることで、重症化を防ぎ関節の機能を守ることにつながります。
参考文献



