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「虫垂炎」を発症するとどんな「治療法」を行う?【医師監修】

 公開日:2026/01/16
「虫垂炎」を発症するとどんな「治療法」を行う?【医師監修】

虫垂炎は、右下腹部にある小さな袋状の臓器である虫垂に炎症が起こる病気です。突然の腹痛で救急受診につながることが多く、治療が遅れると腹膜炎敗血症など命に関わる状態になるおそれがあります。

その一方で、早期に適切な治療を受ければ多くの患者さんがよい経過をたどります。現在も虫垂切除術は世界的に標準的な治療ですが、近年は条件を満たす一部の単純性虫垂炎で抗菌薬による保存的治療が選択肢になることもわかってきました。どの治療法を選ぶかで再発リスクや合併症が変わるため、正しい知識を持つことが大切です。この記事では、最新の知見を踏まえながら、虫垂炎の治療法と注意点を解説します。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

虫垂炎の基礎知識

虫垂炎の基礎知識

虫垂炎とはどのような病気ですか?

虫垂炎は、盲腸の先にある虫垂の中で細菌が増え、強い炎症が起こった状態です。多くはおへその周りの痛みから始まり、次第に右下腹部の痛みへと移動します。吐き気や嘔吐、食欲低下、発熱などを伴うことが多く、押したときや離したときに強い痛みを感じることがあります。炎症が進むと虫垂に穴が開き、膿や腸の内容物が腹腔内に漏れて腹膜炎を起こすことがあります。腹膜炎になると強い痛みや高熱、血圧低下などをきたし命に関わることもあるため、異常を感じたら早めに受診することが大切です。

虫垂炎の原因を教えてください

虫垂炎の主な原因は、虫垂の内側が何かで塞がれてしまうことと考えられています。便のかたまりである糞石、腫れたリンパ組織、異物、腫瘍などが出口をふさぐと、内部の圧が高まり血流が悪くなり、細菌が増えやすい環境になります。ただし、実際には原因を一つに特定できないことも多く、生活習慣だけで完全に防ぐことは難しい病気です。香辛料の多い食事などが直接の原因になるといった明確な根拠はなく、過度に気にしすぎる必要はありません。

虫垂炎の治療法

虫垂炎の治療法

虫垂炎の治療法にはどのような種類がありますか?

虫垂炎の治療は、大きく手術療法と抗菌薬による保存的治療に分けられます。手術療法では炎症を起こしている虫垂を切除するため、同じ虫垂炎を繰り返す心配がほとんどないことが大きな利点です。

現在も世界的に虫垂切除術が標準的な治療とされています。一方、画像検査で穿孔や膿瘍がなく炎症が限局している単純性虫垂炎の一部では、抗菌薬を用いた保存的治療が選択肢となる場合があります。どの治療を選ぶかは、症状の強さ、検査結果、全身状態、患者さんの希望などを総合的に考えて判断します。

虫垂炎で投薬治療が選択されるケースを教えてください

投薬治療が検討されるのは、主に単純性虫垂炎で全身状態が安定している場合です。具体的には、CTや超音波検査で虫垂が腫れていても穴が開いていないこと、腹膜炎が広がっていないことが重要です。また、がんなどほかの病気が疑われないことも条件になります。

虫垂の中に大きな糞石がある場合は保存的治療がうまくいかないことが多く、最初から手術がすすめられることがよくあります。抗菌薬でいったん症状が落ち着いても、数年のあいだに再発して最終的に手術が必要になる方が一定の割合でいることがわかっており、この点を理解したうえで選択することが大切です。治療の選び方について不安があるときは、遠慮せずに主治医に質問して自分の納得できる方針を一緒に考えることが大切です。

虫垂炎の手術にはどのような種類がありますか?

虫垂炎の手術には、腹腔鏡下虫垂切除術開腹虫垂切除術があります。腹腔鏡手術はお腹に数か所の小さな穴を開け、カメラと細い器具を入れてモニターを見ながら行う方法です。傷が小さく痛みが少ない傾向があり、回復が早いことから多くの施設で採用されています。

開腹手術は右下腹部を切開し、直接目で見ながら虫垂を切除する方法です。癒着が強い場合や腹腔鏡の設備がない場合などに選択されます。どちらの方法でも、炎症が広がっている場合は腹腔内をしっかり洗浄し、必要に応じてドレーン(体液を外に出す管)を留置します。

それぞれの方法にも利点と注意点があるため、自分に合った手術方法を主治医と相談して決めることが大切です。

虫垂炎で手術が必要になるのはどのようなケースですか?

虫垂の穿孔や腹膜炎を起こしている場合、画像や血液検査で炎症が強いと判断される場合は、原則として手術が必要です。また、最初に保存的治療を行っても痛みや発熱が改善しないときや、何度も虫垂炎を繰り返すときも手術がすすめられます。高齢の方や持病のある方、妊娠中の方、小児では重症化しやすいことがあるため、手術のタイミングを逃さないことが重要です。

虫垂炎の治療法別の再発リスクと合併症

虫垂炎の治療法別の再発リスクと合併症

虫垂炎で投薬治療を行う場合に想定されるリスクを教えてください

抗菌薬による保存的治療の主なリスクは、治療がうまくいかずに入院中に手術が必要になる可能性と、いったんよくなっても数年以内に再発しやすいことです。海外の大規模研究では、抗菌薬治療を選んだ患者さんの一部が初回から数ヶ月のあいだに手術へ切り替わり、さらに長期的にみると最終的に手術を受ける割合が数割程度に達すると報告されています。

また、抗菌薬そのものの副作用として下痢や発疹、まれに重いアレルギー反応が起こることもあります。投薬治療を選んだ場合は、退院後も腹痛や発熱が出たときに自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関を受診することが大切です。

虫垂炎の手術にはどのような合併症がありますか?

虫垂切除術は安全性の高い手術ですが、少ないながら合併症が起こることがあります。代表的なものは、傷やお腹の中の感染、出血、癒着による腸閉塞などです。特に穿孔を伴う虫垂炎や腹膜炎では、腹腔内膿瘍と呼ばれる膿のたまりが生じやすくなります。また、腹腔鏡手術でも開腹手術でも、ごくまれに周囲の腸や血管などの臓器損傷が起こる可能性があります。さらに、全身麻酔に伴う肺炎や血栓症など、全身的な合併症にも注意が必要です。入院中に説明された注意点を守り、異変を感じたらすぐに医療スタッフに伝えることが重要です。

虫垂炎は手術を行えば再発しませんか?

虫垂切除術では炎症を起こしている虫垂そのものを取り除くため、同じ虫垂炎を繰り返すことは原則としてありません。ただし、ごくまれに虫垂の根元の部分が少し残り、その残った部分に炎症が起こる断端虫垂炎という状態が報告されています。

一方、投薬治療だけで虫垂を残した場合は、前の質問で述べたように、数年以内に再発して手術が必要となる方が少なくありません。治療後に新たな腹痛や発熱が続く場合は、虫垂炎の再発だけでなく、癒着や別の消化器の病気が原因のこともあるため、自己判断で様子をみず、早めに医師へ相談することをおすすめします。

編集部まとめ

編集部まとめ
虫垂炎は若い年代にも多い身近な病気ですが、放置すると腹膜炎や敗血症につながり、命に関わることがあります。現在も虫垂切除術が確立された標準治療であり、多くの患者さんにとって根治が期待できる方法です。一方で、条件を満たす単純性虫垂炎では抗菌薬による保存的治療が選択肢となる場合もあることが、大規模臨床試験からわかってきました。ただし、その場合は再発や途中で手術が必要になるリスクを受け入れる必要があります。

どの治療法が適しているかは、画像所見や全身状態、年齢や持病、仕事や家庭の事情など、一人ひとりの背景によって変わります。インターネットの情報だけで判断せず、疑問や不安は遠慮なく医師や看護師に質問し、自分が納得できる治療方針を一緒に考えることが大切です。突然の腹痛や発熱が続くときは我慢せず、早めの受診を心がけてください。

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