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「虫垂炎の初期症状」はご存知ですか?受診を検討すべき初期症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/12/13
「虫垂炎の初期症状」はご存知ですか?受診を検討すべき初期症状も解説!【医師監修】

虫垂炎は、大腸の一部である虫垂に炎症が起こる病気で、日本では一般に盲腸と呼ばれます。症状が進むと虫垂に穴があいて腹膜炎や敗血症を起こし、命に関わる状態になることもあるため、早期発見と早期治療がとても大切です。

また、一見軽い腹痛から始まることも多く、受診のタイミングを迷いやすい病気でもあります。どのようなサインが危険なのかを知っておくことで、早めに医療機関につながる可能性が高まります。虫垂炎の前兆や初期症状、受診の目安、検査や治療について解説します。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

虫垂炎の前兆と初期症状

虫垂炎の前兆と初期症状

虫垂炎とはどのような病気ですか?

虫垂炎は、大腸の先端にぶら下がるようについている虫垂に細菌などが増えて炎症を起こした状態です。原因は完全にはわかっていませんが、虫垂の中が硬くなった便のかけら(糞石)や腫瘍などで詰まり、その結果として炎症が起こると考えられています。

生涯発症率はおよそ6〜7%とされ、急性の腹痛で手術が必要になる病気のなかでも頻度が高い疾患の一つです。虫垂炎は多くの場合進行性の病気で、治療せずに放置すると穿孔や腹膜炎などを起こす危険があります。自然に軽くなる例がまったくないわけではありませんが、悪化や再発のリスクを予測することは難しく、自己判断で様子をみるのは危険です。

参照:『Appendicitis』(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)

虫垂炎の前兆があれば教えてください

特別な前兆症状が事前に出ることはあまりありません。典型的には、発症のごく初期にみぞおちやおへその周りに違和感や軽い痛みが出て、その後、吐き気や食欲低下を伴いながら痛みが右下腹部へ移動して強くなっていきます。

なんとなく食欲がない、身体がだるいといった全身の不調だけが先に目立つ場合もあります。この上腹部から臍周囲の痛みが虫垂炎の始まりであることが多いのですが、胃腸炎や一時的な腹痛と勘違いされやすい点に注意が必要です。

虫垂炎の初期症状にはどのようなものがありますか?

典型的な初期症状は、心窩部や臍の周りの鈍い痛みから始まり、その後右下腹部に痛みが移動して持続する経過です。痛みが強くなるにつれて、吐き気や嘔吐、食欲低下、微熱などを伴うことが多くなります。

多くの方では、まず腹痛が先に起こり、その後に吐き気や嘔吐が加わる流れになります。お腹を動かすと痛みが増す、歩くと響く、寝返りが打ちにくいと感じる方もいます。右下腹部を押したときの痛みや、押した手を離したときに強く痛む反跳痛がみられると、虫垂炎や腹膜炎の可能性が高くなります。

初期症状は非特異的で、特に小児や高齢者、妊娠中の方では典型的でない経過になることもあり、自己判断で見分けるのは難しい病気です。

虫垂炎の初期症状と似ている症状がみられる病気はありますか?

急性胃腸炎でも腹痛や嘔吐、発熱が出るため、初期の虫垂炎と紛らわしいです。右側の尿路結石では側腹部から下腹部にかけて強い痛みや吐き気を伴うことがあり、右下腹部痛として虫垂炎と似た症状になることがあります。

女性では、卵巣腫瘍の茎捻転や子宮外妊娠、骨盤内感染症などの婦人科疾患も右下腹部痛の原因になります。このほか大腸憩室炎や胆のう炎、膵炎など腹痛の原因となる病気はいくつもあるため、症状だけで虫垂炎かどうかを判断することは困難です。

虫垂炎が疑われるときの受診の目安

虫垂炎が疑われるときの受診の目安

どのような症状がみられたら病院に行くべきですか?

腹痛が数時間以上続く、特に痛みが右下腹部に集中してきた場合は、我慢せず医療機関を受診してください。腹痛に加えて吐き気や嘔吐、微熱が続いているときも虫垂炎などの急性腹症の可能性があります。便が出ていない、ガスがまったく出ないといった症状を伴う場合には、腸閉塞など別の病気が隠れている可能性もあります。

症状が出てから時間がたつほど穿孔や腹膜炎のリスクが高まるとされているため、そのうちよくなるかもしれないと様子を見過ぎるのは危険です。小児では進行が速く重症化しやすいため、少しでも様子がおかしいと感じたら早めの受診が重要です。

夜間や休日であっても受診すべき徴候や初期症状を教えてください

まず、動けないほどの強い腹痛が続き、身体を起こしたり歩いたりするだけでお腹に響いてつらい場合は、腹膜炎に近い状態が疑われます。

また、38度以上の発熱が続く、何度も嘔吐して水分が取れない、ぐったりしているといったときも緊急性が高いサインです。いったん強い痛みがあったあと急に痛みが弱くなった場合も、虫垂が破れて一時的に内圧が下がった可能性があり、その後短時間で腹膜炎が進行するおそれがあります。痛みが引いたから大丈夫だと考えず、自己判断で様子をみずに受診することが大切です。

初期の虫垂炎|検査と診断、治療法

初期の虫垂炎|検査と診断、治療法

初期の虫垂炎が疑われる場合はどのような検査を行いますか?

まず問診で痛みの場所や移り方、経過、発熱や吐き気の有無などを聞き、次にお腹の診察で圧痛や反跳痛、筋性防御といった腹膜刺激症状を確認します。そのうえで、血液検査で白血球数やCRPなどの炎症反応を調べ、必要に応じて腹部超音波検査やCT検査を行います。

超音波検査では虫垂の太さや周囲の液体貯留などを確認し、小児や妊婦さんのように放射線を避けたい方では特に重視されます。描出が難しい場合や重症が疑われる場合にはCTで虫垂の腫大や周囲の炎症、膿瘍や穿孔の有無を詳しく評価します。画像検査を組み合わせることで、虫垂炎かどうかの判断とほかの病気との鑑別が精度高く行えるようになります。

初期の虫垂炎の診断基準を教えてください

症状や診察所見、血液検査、画像検査の結果を総合して診断します。典型例では、臍の周りから右下腹部へ移動する持続痛、軽度の発熱、白血球やCRPの上昇、画像検査での虫垂腫大や周囲の炎症所見などがそろうと虫垂炎の可能性が高くなります。

一方で、小児や高齢者ではこうした所見がそろわないこともあり、その場合は診断スコアや経過観察を用いながら、医師が総合的にリスクを評価します。必要に応じて入院のうえで再診察や再検査を行い、誤診や見逃しを防ぐように工夫されています。

初期の虫垂炎はどのように治療しますか?

治療は、虫垂炎の重症度や画像所見によって決まります。虫垂に穴があいていない軽症例では、抗菌薬による保存的治療で炎症が落ち着く場合がありますが、その後数年以内に再発する方がおよそ2〜3割いると報告されています。

仕事や学校への影響、持病の有無、妊娠の可能性なども含めて、どの治療法がご自身に合うかを医師と相談しながら決めていきます。虫垂に穴があいていたり膿瘍や腹膜炎を伴っている場合は、腹腔鏡手術などで虫垂を切除する治療が基本になります。現在は小さな傷で行う内視鏡手術が主流であり、多くの方が術後早期から歩行や食事を再開できます。適切なタイミングで治療を受ければ、多くの場合は数日から1週間前後の入院で回復し、後遺症を残さずに生活へ戻ることが期待できます。

参照:『A Randomized Trial Comparing Antibiotics with Appendectomy for Appendicitis(CODA trial)』(New England Journal of Medicine)

編集部まとめ

編集部まとめ

虫垂炎は身近でありながら、進行すると腹膜炎や敗血症を起こす危険な病気です。初期にはみぞおちやおへその周りの痛みなど、胃腸炎と紛らわしい症状から始まることが多く、その後痛みが右下腹部に移動し、吐き気や発熱を伴うようになります。腹痛が続く、右下腹部に痛みが集中してきた、強い痛みや高熱、繰り返す嘔吐などの症状があれば、時間帯を問わず受診を検討してください。早い段階で診断と治療を受けることで、重症化を防ぎ、手術になった場合でもおおむね短期間で安全に回復することが期待できます。

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