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「虫垂炎」を発症すると「どこにどんな痛み」を感じる?【医師監修】

 公開日:2025/12/06
「虫垂炎」を発症すると「どこにどんな痛み」を感じる?【医師監修】
虫垂炎は、いわゆる盲腸と呼ばれることもある病気で、大腸のはじまり部分にある虫垂に炎症が起こった状態です。救急外来を受診する腹痛のなかでもよくみられる病気の一つであり、適切なタイミングで治療すれば予後のよい病気とされています。

一方で、痛みの出方や場所には個人差があり、初期には胃腸炎などと区別がつきにくい場合があります。痛みが強くなってから受診すると、虫垂が破れて腹膜炎を起こすなど、命に関わる状態に進んでしまうこともあります。

この記事では、虫垂炎の痛みの特徴や進み方、痛みがあるときの受診の目安や治療後の痛みについて解説します。
高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

虫垂炎の痛みの特徴

虫垂炎の痛みの特徴

虫垂炎では必ず腹痛がありますか?

虫垂炎の代表的な症状は腹痛で、ほとんどの患者さんで何らかの腹痛がみられます。 ただし、高齢の方や糖尿病、免疫を抑える薬を使っている方などでは、痛みが弱かったり、場所がはっきりしなかったりする場合があります。まったく痛みを感じない虫垂炎は大変まれですが、痛みが軽いから虫垂炎ではないと自己判断することは危険です。

腹痛に加えて、食欲が落ちる、気持ちが悪い、微熱が続くといった変化もヒントになります。お腹の痛みが数時間以上続いているときは、自己判断せず医療機関で評価を受けましょう。

虫垂炎の痛みの特徴を教えてください

典型的な虫垂炎の痛みは、最初はみぞおちやおへその周りに出る鈍い痛みから始まり、その後、右下腹部に移動して局所的で強い痛みになると説明されています。

初期はお腹の真ん中あたりが重い、しくしくする、といったはっきりしない痛みですが、炎症が進むと虫垂のある右下腹部の一点に、刺すような痛みとして感じられることが多いです。

歩いたり、走ったり、咳やくしゃみをしたり、車の揺れでお腹が揺れると痛みが強くなるのも虫垂炎にみられやすい特徴です。右下腹部を押したときや、押した手を離したときに痛みが強くなる場合は、炎症が進んでいる可能性があります。ただし、こうした典型的な経過をたどらない虫垂炎もあるため、痛みの出方だけで安心しないことが大切です。

虫垂炎の痛みは胃腸炎や胃炎の痛みとは異なりますか?

胃腸炎では、お腹全体の痛みや差し込むような痛みに加えて、下痢や嘔吐が目立つことが多いとされています。

胃炎では、みぞおち付近の痛みや焼けるような感じ、食後に痛みが悪化しやすいといった症状が中心になる傾向があります。

虫垂炎では、初めはお腹の中央付近の痛みから始まり、その後、右下腹部に痛みが集まっていくことが典型的です。また、歩いたときや咳をしたときに右下腹部の痛みが強くなるのも特徴です。

ただし、胃腸炎や胃炎でも右下腹部に痛みを感じる場合があり、症状だけで完全に区別することはできません。腹痛が続く、悪化していく、発熱を伴うといった場合には、医師による診察が必要です。

虫垂炎の痛みかどうかを確かめる方法を教えてください

自宅でお腹を押してみるだけで、虫垂炎かどうかを正確に見分けることはできません。医療機関では、痛みがいつから、どの部位に、どのような性質で出ているかを丁寧にうかがい、身体診察や検査を組み合わせて診断します。

診察では、右下腹部を押したときの痛みや、押した手を離したときの痛み、腹筋が無意識に硬くなるかどうかなどを確認します。さらに、血液検査で白血球やCRPなどの炎症反応を調べ、必要に応じて超音波検査やCT検査で虫垂の腫れや周囲の炎症を確認します。妊婦さんや若い方では、放射線被曝の影響を考慮して、超音波検査やMRIを優先することがあります。

痛みが強いときに自分で繰り返し強く押したり揉んだりすると、かえって症状を悪化させるおそれがあるため避けてください。

虫垂炎の痛みの進み方

虫垂炎の痛みの進み方

虫垂炎の痛みは進行にしたがって変化しますか?

虫垂炎の痛みは、炎症が進むにつれて変化していくことが多いです。初期にはお腹の中央付近の鈍い痛みから始まり、その後、虫垂のある右下腹部に痛みが移動して、局所的で鋭い痛みになっていくとされています。

炎症が強くなると、右下腹部を押したときだけでなく、押した手を離したときにも強い痛みを感じるようになります。また、歩く、立ち上がる、咳をするなどの動作で痛みが増し、寝返りもつらくなることがあります。

さらに進行して腹膜炎という状態になると、お腹全体が板のように硬くなり、軽く触れただけでも激しい痛みを感じます。この段階では緊急の治療が必要になるため、痛みが強まる、広がる、動けないほど痛いといった変化があれば、早急に受診することが重要です。

虫垂炎の痛み以外の症状の変化を教えてください

虫垂炎では、痛み以外にもさまざまな症状の変化がみられます。初期には、食欲低下や軽い吐き気、37度台の微熱など、かぜに似た症状から始まることもあります。炎症が進むと、38度前後の発熱や強い吐き気、嘔吐、全身の強いだるさなどが目立ってきます。

血液検査では白血球数の増加やCRPの上昇といった炎症反応が強くなる傾向があります。虫垂が破れて腹膜炎を起こすと、意識がもうろうとする、脈が速くなる、冷や汗が出るなど全身の状態が急速に悪化することもあります。このような状態は命に関わる危険なサインのため、救急の対応が必要です。

虫垂炎が治っていないのに痛みが消えることはありますか?

虫垂炎が治っていないにもかかわらず、一時的に痛みが弱く感じられる場合があります。代表的なのは、虫垂の中の圧力が高まり、虫垂が破れて中身がお腹の中に広がった直後です。このときは一時的にお腹の張りや圧迫感が軽くなり、痛みが和らいだように感じることがありますが、その後、お腹全体の激しい痛みや高い発熱に変わることが多いとされています。

また、抗菌薬の点滴や内服で炎症が一時的に落ち着き、痛みが軽くなることもありますが、炎症が残っていれば再び悪化する可能性があります。痛みが軽くなったからといって通院を中止したり自己判断で薬をやめたりするのではなく、症状の変化に関わらず、主治医の指示に従って経過を確認してもらうことが大切です。

虫垂炎の痛みへの対処法

虫垂炎の痛みへの対処法

虫垂炎が疑われるときはどうすればよいですか?

右下腹部の痛みが数時間以上続く、歩くと痛みが増す、食事がとれないほどの腹痛や吐き気があるといった場合は、虫垂炎を含む急性の病気が隠れている可能性があります。自宅で様子をみるだけにせず、なるべく早く内科や消化器外科、救急外来などを受診することが大切です。

強い腹痛と発熱、冷や汗、息苦しさなどがある場合は、救急車の利用も含めて早急な対応が必要になります。受診までのあいだは、激しい運動を避け、水分を少量ずつとる程度にして、食事は控えた方がよいとされています。市販の痛み止めや胃腸薬だけで長時間様子を見ると、症状が一時的に隠れて受診が遅れるおそれがあるため注意が必要です。

虫垂炎と診断されて治療薬を飲んでいるにも関わらず痛みがある場合の対処法を教えてください

抗菌薬による保存的治療が選択されることがあります。また、手術前後に痛み止めを使っていても、ある程度の痛みが残ることは珍しくありません。

しかし、医師から説明された範囲を超えて痛みが強くなっている場合や、日ごとに痛みが悪化している場合、高い熱が続く場合は、治療がうまくいっていないサインの可能性があります。

自己判断で痛み止めの量を増やしたり、市販薬を追加したりするのではなく、早めに担当医や受診した医療機関に連絡して相談してください。診察や血液検査、画像検査を行い、抗菌薬の変更や追加、手術の必要性、合併症の有無などを確認することが大切です。

虫垂炎の手術後の痛みはどの程度でおさまりますか?

腹腔鏡による手術を受けた場合、多くの患者さんは術後数日で痛みがかなり軽くなっていきます。動くと傷が引きつるように痛むことはありますが、1週間ほどで日常生活の多くはこなせるようになることが多いとされています。

完全に痛みを意識しなくなるまでには、2〜3週間ほどかかる場合もあります。開腹手術や虫垂が破れて腹膜炎を起こしているような重症例では、痛みや体力の回復により長い時間が必要になることがあります。

手術後に傷の周りが大きく赤く腫れてきた、強い痛みが続いて眠れない、発熱が続く、お腹全体が再び強く痛むといった場合は、創部感染や腹腔内膿瘍などの合併症が隠れている可能性があります。気になる症状があるときは、我慢せず手術を受けた医療機関に早めに連絡することが重要です。

編集部まとめ

編集部まとめ 虫垂炎の痛みは、右下腹部だけの突然の激痛というよりも、初期にはお腹の真ん中の鈍い痛みから始まり、時間とともに右下腹部へ場所を移していくことが多いとされています。胃腸炎や胃炎などと症状が重なる部分も多く、痛みの場所や強さだけで自分で病名を決めてしまうことは危険です。

痛みの変化に加えて、食欲低下、吐き気、発熱、全身のだるさなどのサインにも目を向けることが大切です。強い腹痛が続く、歩くと痛みが増す、右下腹部を押すと強く痛むといった場合は、早めに医療機関を受診することで重い合併症を防げる可能性が高くなります。

抗菌薬による治療や手術後に痛みが残っているときも、そのうちよくなるだろうと放置するのではなく、痛みの程度や全身状態の変化を観察し、少しでも不安があれば主治医に相談してください。虫垂炎は、適切なタイミングで診断と治療が行われれば予後のよい病気です。不安なときほど一人で悩まず、早めに専門家に相談することが、からだを守る近道になります。

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