目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「コーヒーが原因で虫垂炎」を発症するとことはある?治療中に避けた方がいい飲み物も解説!

「コーヒーが原因で虫垂炎」を発症するとことはある?治療中に避けた方がいい飲み物も解説!

 公開日:2025/12/03
虫垂炎とコーヒーの関係は?避けた方がよい飲み物や食生活の注意点を解説
虫垂炎は、いわゆる盲腸と呼ばれることもある病気で、大腸のはじまり部分にある虫垂に炎症が起こった状態です。救急外来を受診する腹痛のなかでもよくみられる病気の一つであり、適切なタイミングで治療すれば予後のよい病気とされています。

この病気は、年齢や性別を問わず誰にでも発症する可能性があるため、日々の生活習慣との関連性を気にされる患者さんは少なくありません。

特に、毎朝の習慣としてコーヒーを愛飲されている方や、仕事の合間にカフェイン飲料を頻繁に摂取される方にとって、「コーヒーが虫垂炎の原因になるのではないか?」「治療中や治療後にコーヒーを飲んでもよいのか?」といった疑問は、切実な悩みとなりえます。

この記事では、そうした疑問にQ&A形式でお答えします。
高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

プロフィールをもっと見る
昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

虫垂炎とコーヒーや飲み物との関係

虫垂炎とコーヒーや飲み物との関係

コーヒーを飲むと虫垂炎を発症しやすくなりますか?

コーヒーが虫垂炎の直接的な原因となる証拠はありません。虫垂炎は主に虫垂の内部が何らかの原因で塞がり、細菌感染が生じることで起こります。例えば硬い便(糞石)が虫垂に詰まったり、腸のリンパ組織が腫れて通路を塞いだりすることで虫垂炎が発症すると考えられています。

原因は完全には解明されていませんが、細菌感染が関与しており、発症のきっかけとして過労や暴飲暴食、便秘などが指摘されています。コーヒーや特定の飲み物を飲むこと自体が虫垂炎を誘発することはありません。

虫垂炎の原因になりえる飲み物はありますか?

現時点で、特定の飲み物が虫垂炎の原因になると示した信頼できる研究はありません。虫垂炎の主な原因は、虫垂の入り口が物理的にふさがることであり、そこにどの飲み物を摂ったかは直接関係しないとされています。ただし、水分不足や食物繊維の少ない食事、運動不足は便秘の原因となり、その結果として糞石ができやすくなる可能性が指摘されています。腸全体の健康のためには、十分な水分とバランスのよい食事、適度な運動を続けて便秘を予防することが望ましいといえます。特定の飲み物だけを悪者にするより、生活習慣全体を整える意識が大切です。

虫垂炎の治療中にコーヒーを飲んでも問題ありませんか?

急性期の虫垂炎では、強い腹痛や発熱があるときや手術前後に絶食と点滴で治療することが多く、この間はコーヒーを含め飲食はできません。

状態が落ち着き、医師から飲水や食事再開の指示が出たあとであれば、少量のコーヒーから再開してよいと判断される場合があります。腹部手術後に適切なタイミングでコーヒーを飲むと、腸の動きが戻るのが早くなったという研究もあります。

ただし、コーヒーで胃痛や胸やけ、下痢が出る方もいるため、飲んだあとにお腹の張りや痛みが強くなる場合はいったん中止して主治医に相談してください。体調が安定するまでは、水や白湯、麦茶など刺激の少ない飲み物を基本にすることが安心です。

参照:『The effect of coffee/caffeine on postoperative ileus(Meta-analysis of RCTs)』(International Journal of Colorectal Disease, 2022)

虫垂炎の治療中に避けた方がよい飲み物を教えてください

治療中は、まずアルコール飲料を避けることが大切です。アルコールは胃腸粘膜や肝臓に負担をかけ、抗生物質や痛み止めとの相互作用もあるため、治療が終わるまでは控えましょう。強い炭酸飲料やエナジードリンクは、お腹の張りや動悸を強めることがあり、急性期や術後まもない時期にはおすすめできません。砂糖を多く含む清涼飲料水を大量に飲む習慣は、虫垂炎とは直接関係しませんが、肥満や糖尿病のリスクを高めるため控えめにしたほうがよいです。

虫垂炎の治療の流れと治療後の経過

虫垂炎の治療の流れと治療後の経過

虫垂炎の治療法を教えてください

急性虫垂炎の基本的な治療は、炎症を起こした虫垂を取り除く虫垂切除術です。お腹に小さな穴をあけて行う腹腔鏡手術と、右下腹部を切開して行う開腹手術があり、炎症の程度や全身状態によって方法が選ばれます。

症状が軽い一部の急性虫垂炎に対して、抗菌薬だけで治療する方法も研究されています。短期的には手術と同程度に症状が改善することが報告されていますが、再発の可能性が残ることも知られています。どの治療を選ぶかは、検査結果や持病、患者さんの希望を踏まえて外科医が説明し、相談しながら決めます。

参照:『Comparing Surgery vs Antibiotics – CODA Evidence Update』(PCORI)

虫垂炎の治療はどのように進みますか?

まず診察と血液検査、超音波検査やCT検査などで、虫垂炎かどうか、どの程度進行しているかを確認します。穿孔や腹膜炎がなく全身状態が安定していれば、早期に虫垂切除術を行い、数日程度の入院で退院できることが多いです。

穿孔や腹膜炎、膿瘍を伴う場合には、緊急手術や膿瘍の排液、抗生物質の点滴を組み合わせ、入院期間が1週間以上になることもあります。強い右下腹部痛や発熱があるときは、早めに医療機関を受診することで重症化を防ぎやすくなります。

虫垂炎の治療後に再発することはありますか?

手術で虫垂を切除した場合、虫垂自体が体内からなくなるため、同じ場所に再び虫垂炎が起こることはほとんどありません。ごくまれに虫垂の根元がわずかに残った部分に炎症が起こる断端虫垂炎という病態がありますが、頻度は低いとされています。

一方、抗生物質だけで治療した場合はいったん症状がよくなっても再発する方がおり、1年以内に約2割前後が再発し、数年の経過では半数近くが手術を受けたとする報告もあります。保存的治療を選んだ方は、再発の可能性を理解したうえで、腹痛が再び出たときは早めに受診することが大切です。

虫垂炎の治療後に食生活で気を付けること

虫垂炎の治療後に食生活で気を付けること

虫垂炎の治療後は普段どおりの食生活に戻ってもよいですか?

手術後は腸の動きが一時的に弱くなるため、まずは水分やおもゆなど消化のよいものから始め、様子をみながら普通のご飯やおかずへと段階的に進めます。

ガスや便が出てお腹の張りが落ち着き、合併症がなければ、多くの方は退院後数日から1週間ほどで普段の食事に近い内容へ戻ることができます。抗生物質だけで治療した場合も、痛みや発熱が落ち着けば特別な制限はなく、体調に合わせてもとの食事に戻してかまいません。長期的には、虫垂炎の治療の有無だけで特別な食事制限が必要になることはほとんどありません。

虫垂炎の治療後に推奨される食生活を教えてください

治療後の食生活で大切なのは、腸に負担をかけ過ぎずに栄養をしっかり補うことです。こまめな水分補給で便秘と脱水を防ぎ、主食、主菜、副菜をそろえたバランスのよい食事を意識しましょう。肉や魚、大豆製品、卵などからたんぱく質を十分に摂ることは傷の回復に役立ちます。野菜や果物、海藻、きのこなどに含まれる食物繊維は便のかさを増やし腸の動きを整えますが、術直後から急に増やすとお腹が張る方もいるため、退院後しばらくは少しずつ量を増やすと安心です。脂っこい料理や香辛料の強い料理、アルコールは、体調が安定してから少量ずつ再開するとよいでしょう。

虫垂炎の治療後はコーヒーをたくさん飲んでも問題はありませんか?

治療が終わり、普段どおりの食事がとれていて腹痛や下痢、便秘などの症状がなければ、コーヒーを飲んでも問題ありません。手術で虫垂を切除していれば、コーヒーを飲むことが虫垂炎の再発につながることはありません。健康な成人では、カフェインとして1日400ミリグラム程度まで(一般的なレギュラーコーヒーならおおよそ3〜4杯)が安全とされています。ただし、胃痛や胸やけ、動悸、不眠が出る方はこの範囲内でも量を減らしたほうがよいです。治療後しばらくは1日1〜2杯程度の少なめの量から始めて体調を確認し、問題がなければもとの飲み方に戻すと安心です。

編集部まとめ

編集部まとめ

虫垂炎は、虫垂の通り道が糞石やリンパ組織の腫れなどでふさがり、内部で細菌が増えることで起こる病気です。現時点で、コーヒーを含む特定の飲み物が虫垂炎の直接的な原因になるという証拠はありません。治療中はアルコールや強い炭酸飲料、エナジードリンクなど刺激の強い飲み物を控え、水や薄いお茶を中心にして回復を妨げないようにすることが大切です。治療後は、十分な水分とバランスのよい食事、適度な食物繊維を意識しながら、体調に合わせて少しずつ通常の食生活とコーヒー習慣に戻していきましょう。飲み方に不安があるときは、自己判断せず、診察のときに普段のコーヒーの量や飲むタイミングを具体的に伝えて主治医に相談することをおすすめします。

この記事の監修医師