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「虫垂炎を1週間放置」するとどうなるかご存知ですか?現れる症状も解説!

 公開日:2025/12/16
「虫垂炎を1週間放置」するとどうなるかご存知ですか?現れる症状も解説!

急性虫垂炎は、盲腸の先にある細い袋状の臓器である虫垂に炎症や感染が起こる病気です。年齢を問わず起こりますが、特に若い世代でよくみられ、腹痛の原因として頻度が高い病気の一つです。早く受診して治療を始めれば、多くの患者さんは大きな後遺症を残さず回復します。しかし痛みを我慢して放置すると、虫垂に穴が開いておなか全体に炎症が広がり、命に関わる状態になることがあります。ここでは、虫垂炎を1週間放置した場合に起こりうる経過と、その後の治療や合併症のリスクを説明します。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

虫垂炎を1週間放置した場合に起きること

虫垂炎を1週間放置した場合に起きること

虫垂炎の症状や原因を教えてください

急性虫垂炎は、虫垂の中が何かでふさがれることがきっかけで起こると考えられています。便のかたまりである糞石や、リンパ組織の腫れなどが原因として知られており、そこに腸内細菌が増えることで炎症や感染が進みます。

症状として多いのは腹痛です。最初はおへその周りやみぞおち付近の、場所がはっきりしない鈍い痛みから始まり、数時間ほどで右下腹部の鋭い痛みに変わることが典型的です。歩く、咳をする、身体を揺らすなどの動きで痛みが強くなることもよくあります。

そのほかに、37〜38度前後の発熱、吐き気や嘔吐、食欲が落ちる、下痢や便秘などの消化器症状がみられることがあります。高齢の方や妊娠中の方、小さな子どもの場合は症状がわかりにくく、典型的な経過をとらないこともあります。

虫垂炎は何もせずに治る病気ですか?

一時的に痛みが軽くなったり、熱が下がったりすることはありますが、虫垂炎が自宅で自然に安全に治ると考えるのは危険です。実際には、炎症の程度が軽い初期の段階であっても、虫垂の内側がふさがった状態が続けば、いつ悪化してもおかしくありません。

最近は、画像検査などで軽い虫垂炎と判断された一部の患者さんに対して、手術ではなく抗菌薬の点滴だけで経過をみる治療も検討されるようになっています。ただし、この判断は血液検査や超音波検査、CT検査などの結果を総合して医師が慎重に行います。自己判断で様子をみることと、病院で状態を確認した上で経過をみることは意味が大きく異なります。

何もせずに放置すれば、炎症が進んで穿孔や腹膜炎に至る危険性があるため、虫垂炎が疑われるときに自宅での様子見はすすめられません。

虫垂炎を治療せずに1週間放置するとどのような経過を辿りますか?

虫垂炎は時間とともに悪化しやすい病気であり、症状が出てから治療までの時間が長くなるほど、虫垂に穴が開く穿孔のリスクが高くなることがわかっています。研究では、おおよそ36時間を過ぎた頃から穿孔の危険が高まり、数日たつと穿孔の割合が明らかに増えると報告されています。

治療を受けずに1週間経過した場合、多くの患者さんではすでに虫垂が穿孔しているか、周囲に膿がたまって膿瘍を作っている可能性が高いと考えられます。虫垂が破れてすぐの段階では、一時的におなかの圧力が下がって痛みが和らいだように感じることがあります。しかし、その後は細菌や膿が腹腔内に広がり、おなか全体が痛む腹膜炎の状態へ進むことがあります。

この段階では高い熱、強い腹痛、吐き気や嘔吐、身体のだるさや息苦しさなどが出て、歩くこともつらくなりやすいです。重症になると血圧が下がる、意識がぼんやりするなど、敗血症と呼ばれる命に関わる状態に陥ることもあります。1週間放置された虫垂炎は、このように重症化している前提で考える必要があります。

1週間放置した虫垂炎の治療法

1週間放置した虫垂炎の治療法

1週間放置した虫垂炎はどのように治療しますか?

1週間放置された虫垂炎では、すでに穿孔や膿瘍、腹膜炎を起こしていることが多く、原則として入院治療が必要になります。治療の柱は、全身状態の安定化、抗菌薬による感染のコントロール、そして必要に応じた手術です。

おなか全体の強い腹膜炎がある場合や、血圧低下などのショック状態がある場合は、点滴で水分や電解質、必要に応じて昇圧薬を投与しながら、緊急手術で炎症の原因となっている虫垂と汚染された腹水を処理します。

一方で、膿が一か所に集まって膿瘍を作っている場合には、画像検査で場所を確認し、皮膚から針を刺して膿を外に出す穿刺排膿と、点滴の抗菌薬で炎症を落ち着かせる方法が選ばれることがあります。この場合、炎症が十分に落ち着いてから、数ヶ月後にあらためて虫垂を切除する手術を検討することもあります。

早期に受診した虫垂炎と1週間放置した虫垂炎の治療法は異なりますか?

症状が出てすぐに受診した場合、虫垂にまだ穴が開いていない単純性虫垂炎でみつかることが多く、腹腔鏡手術による虫垂切除と短期間の抗菌薬投与で治療が完了するケースが多いです。入院期間も数日程度で済むことがよくあります。

一方、1週間放置された虫垂炎では、多くが穿孔や膿瘍を伴う複雑な虫垂炎に分類され、手術自体も難しくなります。腹腔内の洗浄やドレーンと呼ばれる管の留置、術後の長期にわたる抗菌薬投与が必要になることがあり、入院期間も長くなりやすいです。

また、膿瘍が大きい場合には、前述のようにまず抗菌薬と排膿で炎症を落ち着かせてから、後日に手術を行う二段階治療が選ばれることもあります。早期に受診した場合と比べると、治療の選択肢が複雑になり、身体への負担も大きくなりやすいといえます。

1週間放置した虫垂炎はどのような手術方法が選択されますか?

現在は、可能であれば腹腔鏡手術が第一選択となることが多く、1週間放置された虫垂炎であっても、設備と経験のある施設では腹腔鏡手術が試みられます。腹腔鏡手術では、数ヶ所の小さな切開からカメラと器具を入れて虫垂を切除し、腹腔内を洗浄します。

しかし、炎症が強い場合や癒着が広がっている場合、患者さんの全身状態が不安定な場合には、開腹手術が選ばれることもあります。開腹手術では、おなかを大きく開けて視野を確保し、虫垂の切除と汚染された腹水の除去、必要に応じて腸の一部の切除などを行います。

膿瘍を伴う場合は、手術中または手術に先立って膿を排出する処置を併用し、術後もドレーンを留置して残った膿や浸出液を外に流し出すことがあります。どの方法を選ぶかは、画像検査の結果や患者さんの年齢、基礎疾患、全身状態などを総合して決めます。

1週間虫垂炎を放置した場合の術中・術後合併症リスク

1週間虫垂炎を放置した場合の術中・術後合併症リスク

虫垂炎の手術で想定される合併症を教えてください

虫垂炎の手術に限らず、腹部手術には一定の合併症のリスクがあります。術中の合併症としては、出血や小腸や大腸、尿管など周囲臓器の損傷が挙げられます。

術後の合併症としては、手術創の感染や腹腔内膿瘍、腸の動きが一時的に止まるイレウス、癒着による腸閉塞、縫合した腸管からの漏れなどが知られています。全身麻酔に伴う肺炎や静脈血栓症などの合併症が起こる可能性もあります。

これらのリスクは、炎症の程度や患者さんの年齢、基礎疾患の有無、手術時間の長さなどによって変わります。術前に医師から説明を受け、不安な点は事前に確認しておきましょう。

虫垂炎を1週間放置すると術中術後の合併症のリスクは高くなりますか?

一般に、虫垂炎が進行して穿孔や腹膜炎を起こした状態では、合併症の頻度が上がることが知られています。炎症が強いほど手術時間が長くなり、汚染された腹水も多くなるため、手術創の感染や腹腔内膿瘍などのリスクが高くなります。

また、全身の炎症反応が強い場合は、術後に血圧の低下や臓器機能の悪化をきたしやすく、集中治療室での管理が必要になることもあります。高齢の方や糖尿病、心疾患などの基礎疾患を持つ方は、特に注意が必要です。

1週間放置された虫垂炎は、これらの複雑な虫垂炎の状態でみつかることが多く、術中術後の合併症リスクは、早期に受診して治療を受けた場合より高いと考えられます。

虫垂炎を1週間放置したら、何らかの後遺症が生じる可能性はありますか?

適切な治療が行われれば、多くの患者さんは大きな後遺症を残さずに回復します。しかし、穿孔や重症の腹膜炎を起こした場合には、術後しばらくおなかの張りや違和感が続いたり、癒着による腸閉塞を将来的に起こしたりする可能性があります。

また、大きな開腹手術を行った場合には、傷の部分に切開創ヘルニアが生じることがあります。重症例では、長期の入院や集中治療により、筋力低下や日常生活動作の低下など、身体機能の低下が残ることもあります。

ただし、これらの後遺症が必ず起こるわけではありません。早めに受診して重症化する前に治療を受けること、重症化してしまった場合でも、指示どおりにリハビリや通院を続けることで、多くの方が日常生活に戻ることができます。

編集部まとめ

編集部まとめ
適切な治療が行われれば、多くの患者さんは大きな後遺症を残さずに回復します。しかし、穿孔や重症の腹膜炎を起こした場合には、術後しばらくおなかの張りや違和感が続いたり、癒着による腸閉塞を将来的に起こしたりする可能性があります。

また、大きな開腹手術を行った場合には、傷の部分に切開創ヘルニアが生じることがあります。重症例では、長期の入院や集中治療により、筋力低下や日常生活動作の低下など、身体機能の低下が残ることもあります。

ただし、これらの後遺症が必ず起こるわけではありません。早めに受診して重症化する前に治療を受けること、重症化してしまった場合でも、指示どおりにリハビリや通院を続けることで、多くの方が日常生活に戻ることができます。

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