「虫垂炎」が進行するとどんな症状が現れる?受診の目安となる症状も解説!

虫垂炎は、大腸の一部である虫垂に炎症が起こる病気です。一般には盲腸という名前で知られています。多くは急にお腹が痛くなって始まり、放っておくと虫垂に穴が開いて腹膜炎という重い状態につながる場合があります。その一方で、早く受診して適切な治療を受ければ、予後は良好な病気です。この記事では、虫垂炎の初期症状から進行したときの症状、ほかの病気との違い、受診の目安や検査・治療について解説します。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
目次 -INDEX-
虫垂炎の初期症状

虫垂炎には前兆はありますか?
ただし、急にといっても、いきなり強い右下腹部痛が出るとは限りません。最初はみぞおちやおへそのあたりが重い、すこし気持ち悪いなど、胃の調子が悪いような自覚から始まることが多いです。この段階では、本人も周囲も虫垂炎とは気が付きにくく、胃腸炎や食べ過ぎと思い込んでしまう場合があります。
このように、虫垂炎には特別な長期の予兆はなく、初期の軽い腹痛や気持ち悪さが唯一のサインです。いつもと違うお腹の痛みが続く場合は、注意を払いましょう。
虫垂炎の初期症状を教えてください
腹痛と一緒に、食欲がなくなる、ムカムカする、吐き気が出るなどの症状がみられることが多いです。実際には嘔吐まで至らない方も多く、少し気持ち悪い程度のこともあります。体温は、最初は平熱か37度前後の微熱程度である場合が多いですが、必ずしも発熱を伴うとは限りません。
このような典型的な流れがすべての方に当てはまるわけではありません。初めから右下腹部が強く痛くなる方や、痛みだけが目立ち、熱や吐き気がほとんど出ない方もいます。特に高齢の方や小さなお子さんでは症状がわかりにくく、虫垂炎と気付くのが遅れやすい傾向です。
進行した虫垂炎の症状とほかの病気との見分け方

虫垂炎はどのようなスピードで進行しますか?
進行した虫垂炎ではどのような症状がみられますか?
また、体温が38度前後まで上がる、寒気がする、全身がだるいといった全身症状が出てきます。お腹を触ると板のように固くなることがあり、これは筋性防御と呼ばれ、腹膜炎が疑われる状態です。腸の動きが悪くなるため、便が出にくい、逆に下痢気味になる、お腹が張るなどの変化が起きることもあります。
虫垂炎と間違えやすい症状を持つほかの病気を教えてください
尿管結石も急な腹痛の原因として重要です。脇腹から下腹部へ激しい痛みが走り、血尿を伴うことがよくあります。大腸の憩室に炎症が起こる憩室炎は、虫垂炎と似た右下腹部痛や発熱を起こすため、画像検査まで行わないと区別が難しい場合があります。
若い女性の場合は、卵巣のねじれや卵巣出血、卵管や卵巣の炎症、子宮外妊娠など、婦人科の病気かどうかも見分ける必要があります。これらも急な下腹部痛や吐き気を起こすことがあるためです。子どもの場合、ひどい便秘や腸間膜リンパ節炎、腸閉塞なども腹痛の原因です。
このように、右下腹部痛にはさまざまな原因があります。症状だけでは判断が難しいため、医師は問診、診察、検査を組み合わせて原因を絞り込んでいきます。
虫垂炎の受診の目安と検査、診断

虫垂炎の受診する目安を教えてください
特に、今まで経験したことがない強い腹痛が続く場合や、冷や汗が出るほどの痛みがある場合は、夜間や休日でも受診を急いだほうが安全です。自宅で市販の痛み止めを飲んでしまうと、症状が一時的に和らいで診断が遅れるおそれがあるため、自己判断での服用は避けたほうがよいとされています。
虫垂炎で受診したらどのような検査を行い診断しますか?
さらに、腹部の超音波検査やCT検査を行い、虫垂が太く腫れていないか、周囲に膿のたまりや腹膜炎の所見がないかを確認します。成人ではCT検査が診断に大きく役立ちますが、被ばくを避けたい妊婦さんや小児では超音波検査を優先します。また、尿検査で尿路結石や尿路感染症の有無を調べ、妊娠の可能性がある女性では妊娠検査や婦人科の診察も行います。
虫垂炎の治療法を教えてください
より根本的な治療は、炎症を起こしている虫垂を切除する手術です。現在は、お腹に数か所の小さな穴を開けて行う腹腔鏡下虫垂切除術が広く行われています。開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みが少ないことが利点です。ただし、膿が広がっている場合や、腸の状態が悪い場合などには、開腹手術が選ばれることもあります。
どの治療を選ぶかは、虫垂炎の程度、膿のたまりの有無、患者さんの年齢や合併症、仕事や生活への影響などを総合的に考えて決めます。医師からそれぞれの治療法のメリットとデメリットについて説明を受け、納得したうえで方針を選ぶことが大切です。
編集部まとめ

虫垂炎は、若い世代に多いものの、どの年代にも起こりうる急性の腹痛の原因です。典型例では、みぞおちやおへそのあたりのはっきりしない痛みから始まり、時間とともに右下腹部へ痛みが移動し、発熱や吐き気を伴うようになります。しかし、すべての方が教科書どおりに症状を示すわけではなく、高齢の方や小児、妊娠中の方では症状がわかりにくいこともあります。
自己判断で胃腸炎や疲れだと思い込んで様子をみていると、虫垂に穴が開いて腹膜炎になり、入院や重い治療が必要になる場合があります。一方で、早めに受診して診断がつけば、適切なタイミングで抗菌薬治療や腹腔鏡手術を受けることができ、その後の経過も良好なことがほとんどです。
いつもと違う腹痛が続く、痛みが右下腹部へ移って強くなってきた、発熱や吐き気を伴う、といったサインがあるときは、早めに医療機関を受診してください。この記事の内容が、虫垂炎を疑うべきタイミングや受診の判断に役立てば幸いです。
参考文献



