目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「冬季うつ」を発症したら何を照射して治療していく?【医師監修】

「冬季うつ」を発症したら何を照射して治療していく?【医師監修】

 公開日:2025/12/27
「冬季うつ」を発症したら何を照射して治療していく?【医師監修】

冬になると、何もやる気が起きない、寝すぎてしまう、気分が落ち込む、と感じる方はいませんか?冬になると気分がやや落ち込んだり、やる気が起きなくなったりすることは決して珍しいことではありません。しかし、その症状が強く、日常生活に支障をきたすことがあります。それは、冬季うつの症状かもしれません。冬季うつは、季節に関連して起こるうつの症状で、春から夏には軽快することが少なくありません。しかし、冬がくると再び症状が現れます。本記事では、冬季うつの基礎知識やセルフケア法、治療法、さらには予防する方法などを解説します。

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

プロフィールをもっと見る
島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。

冬季うつの基礎知識

冬季うつの基礎知識

冬季うつとはどのような病気ですか?

冬季うつは正式な医学用語ではありません。一般的にはうつ病(大うつ病性障害)などの症状が冬に出やすくなるタイプをいいます。多くの場合、冬季うつは、うつ病の季節型のことですが、双極性障害でも同様に季節型のパターンを示すケースが存在します。

冬季うつは、毎年秋から冬にかけて症状が現れ、増悪します。その後、春から夏にかけて症状が軽快することが多い特徴があります。冬季うつの主な症状は、以下のとおりです。

  • 倦怠感
  • 過眠
  • 過食
  • 意欲の低下

このように、睡眠時間が長くなる、食欲が増すなど、典型的なうつ病とは異なる症状が多くみられます。なかには炭水化物への欲求が強まったり、外出をせず家に閉じこもりがちにになったりする方もいます。精神面では、意欲の低下や倦怠感などの症状が中心で、抑うつ気分は目立ちにくいとされています。抑うつ気分とは、絶望感や虚しさ、悲しみなどを伴う強い憂鬱な気分をいいます。若い女性にみられる傾向があり、20歳前半で発症する方が多いといわれています。

冬季うつの原因を教えてください

冬季うつは、日照時間の減少によって体内時計(概日リズム)が乱れることが主な原因であると考えられています。人間の身体は1日のリズムに合わせてさまざまなホルモンを分泌しています。冬になって日光に当たる時間が減少することで、このリズムに支障をきたします。とりわけ、気分の安定に関わるセロトニンや、睡眠・覚醒サイクルをを調節するメラトニンというホルモンの分泌バランスが崩れることで、過眠、意欲の低下や気分の落ち込みなどの症状が現れると考えられています。加えて、光に対する感受性の低下に関与する遺伝的な要因の可能性も示唆されています。

冬季うつは春になったら治りますか?

冬季うつは、春になって日照時間が長くなると自然に症状が改善することが少なくありません。多くの患者さんは、日照時間が延びることで乱れていた体内リズムが整い、通常の生活を送れるようになるといわれています。ただし、次の秋から冬にかけて再び症状が現れる可能性が高く、毎年繰り返すことで症状が重くなるケースもあります。

また、春になっても完全に回復しない場合や、症状が長引く場合は、通常のうつ病に移行している可能性も考えられます。そのため、冬季うつの症状を感じたら、春の自然回復を待つだけでなく、必要に応じて医療機関の受診を検討しましょう。

冬季うつのセルフケア法と病院での治療

冬季うつのセルフケア法と病院での治療

冬季うつを自分で治すことはできますか?

冬季うつのごく軽い症状であれば、生活習慣の改善によって自分で症状を軽減できる可能性があります。ただし、症状が重く日常生活に大きな支障が出ている場合や、症状が続く場合は、医療機関の受診を検討してください。自己判断は危険を伴う可能性があります。

冬季うつのときに推奨される生活習慣を教えてください

冬季うつのときに推奨される生活習慣は主に次のとおりです。

  • 朝に日光を浴びる、日光を浴びる時間を増やす
  • 規則正しい生活リズムを守る
  • 適度な運動を行う
  • バランスのいい食事をとる

冬季うつの予防や改善には、日光を積極的に浴びることが大切です。特に朝の日光を浴びることで、気分の安定に関わるセロトニンの分泌が促され、体内時計のリズムも整います。通勤や通学、買い物などで意識的に外出する時間を作り、可能であれば午前中に日光を浴びるよう心がけましょう。また、室内でも窓際で過ごしたり、カーテンを開けて明るい環境を保ったりすることも効果的です。十分な睡眠時間を確保しつつ、毎日同じ時刻に起床・就寝する規則正しい生活リズムを保つようにします。

適度な運動も症状の改善に役立ちます。屋外でのウォーキングやジョギングなら、日光を浴びながら運動できます。バランスのよい食事を心がけ、過食にならないよう気を付けます。

冬季うつが疑われるとき、病院ではどのような検査を行いますか?

冬季うつが疑われるとき、病院ではまず医師の診察と問診が行われます。問診は、医師が症状の経過や程度、これまでの病歴などを聞き取る作業のことです。具体的には症状がいつから始まったか、どのような症状か、毎年同じ時期に繰り返しているか、日常生活への影響はどの程度かなどを確認されます。

また、医師の判断によって、ほかの病気の可能性を除外するために血液検査などが実施されることがあります。病院によっては、心理検査やうつ病の質問票が用いられることもあります。そのほかに、脳の病気などが疑われる場合にはCT検査やMRI検査などの画像検査が実施されるケースもあります。どのような検査を行うかは患者さんそれぞれの状態によって、医師の判断のもとで決定されます。

病院での冬季うつの治療法を教えてください

病院での冬季うつの治療法の第一選択は、高照度光療法です。これは毎日1~2時間程度、強い光を照射する治療法です。光の照度は2,500から10,000ルクスとされています。早期に効果が出ることが期待され、1週間程度で症状の改善を認める方もいるといわれています。ただし、その一方で中止すると再発する可能性があります。

高照度光療法だけでは十分な効果が得られない場合や、症状が重い場合には、薬物療法の併用が検討されます。主に使用される薬剤は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬です。SSRIは、脳内のセロトニンと呼ばれる神経伝達物質の働きを調整し、気分を安定させたり不安を軽減したりする効果があります。

冬季うつの場合、抗うつ薬は春~夏にかけて減量もしくは中止が検討されます。これは、冬季うつでは、うつ状態と躁状態を繰り返す双極性障害のケースがあるため、躁状態にならないように管理するためです。ほかにも、認知行動療法などの心理療法が有効な場合もあります。いずれの治療法を選択するかは、症状の程度や患者さんの状況に応じて医師が判断します。

冬季うつを予防する方法

冬季うつを予防する方法

冬季うつになりやすい生活習慣はありますか?

冬季うつになりやすい生活習慣は、日光をほとんど浴びない生活です。長時間屋内で過ごす方や、朝日を浴びない生活リズムの方は、発症リスクが高まります。就寝・起床時間が不規則な生活や昼夜逆転の生活を送っていると、朝の日光を浴びる機会が減り、体内時計が乱れやすくなります。また、運動不足や食生活の乱れも冬季うつのリスクを高めます。

冬季うつを避けるためにやった方がよいことを教えてください

冬季うつを避けるためにやった方がよいことは、以下のようなものが挙げられます。

  • 朝の光を浴びる
  • 早寝早起きを心がける
  • 適度な運動習慣を身につける
  • 栄養バランスのよい食事をとる

重要なのは、毎日決まった時間に起床し、朝の日光を浴びる習慣をつけることです。起床時刻を一定にすることで体内時計が整います。適度な運動習慣も大切です。ウォーキングやジョギングなど自分のペースに合わせて行いましょう。食事の面では、炭水化物に偏らず、肉・魚・野菜をまんべんなく摂取し、ビタミン・ミネラルもバランスよく摂ります。冬になる前からこれらの習慣を続けることで、冬季うつの予防につながります。

編集部まとめ

編集部まとめ

冬季うつは、うつ病や双極性障害などが冬に悪化するタイプで、意欲の低下、過眠や過食などの症状がみられます。軽い症状であれば生活習慣の工夫などで症状が軽減することもありますが、強い落ち込みや日常生活への支障が続く場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。必要に応じて高照度光療法や薬物療法などが行われます。春~夏に自然と回復することがあっても、毎年繰り返すことで症状が重くなることもあるため、気になる症状があれば医療機関に相談しましょう。

この記事の監修医師