「副鼻腔炎」を疑う「咳の特徴」はご存知ですか?咳が出る原因も解説!【医師監修】
公開日:2025/11/27


監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
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脳神経内科
眼科(角膜外来)
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副鼻腔炎の症状と原因
副鼻腔炎とはどのような病気ですか?
副鼻腔炎は、鼻の奥にある複数の空洞(副鼻腔)に炎症が起こり、膿や分泌液がたまる病気です。副鼻腔は額のうしろ、目の奥、頬の内部、鼻の奥などに広がっており、空気の通り道として鼻の換気や声の響きに関係しています。この部分の粘膜が腫れると通気が悪くなり、膿が排出されにくくなって炎症が続きます。急に発症して4週間以内に改善するものを急性副鼻腔炎、3ヶ月以上症状が続くものを慢性副鼻腔炎と呼びます。炎症の部位によって痛みの場所や症状の出方が異なり、放置すると再発をくり返すこともあります。
参照:
『急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010 年版』(日本鼻科学会)
『慢性副鼻腔炎』(東京都健康長寿医療センター)
副鼻腔炎の主な症状を教えてください
代表的な症状は、鼻づまり、粘り気のある鼻水、においが感じにくい、顔の重さや頭の奥の痛みなどです。炎症が強い場合は、膿がのどに流れ込み、違和感やせきが出ることもあります。これは後鼻漏と呼ばれ、副鼻腔炎でよくみられる症状です。また、慢性化すると鼻水や鼻づまりが軽くても、倦怠感や集中力の低下など全身の不調につながる場合があります。
なぜ副鼻腔炎になるのですか?
主な原因は、風邪やインフルエンザなどによるウイルス感染です。鼻やのどの粘膜が炎症を起こすと、副鼻腔と鼻をつなぐ通り道がふさがれ、膿がたまりやすくなります。そこに細菌感染が加わると、炎症がさらに悪化します。また、アレルギー性鼻炎や花粉症がある方は、粘膜が腫れやすく、副鼻腔炎をくり返す傾向があります。加えて、鼻中隔のゆがみやポリープ(鼻茸)、喫煙、気圧の変化なども発症に関係します。
参照:
『急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010 年版』(日本鼻科学会)
『慢性副鼻腔炎』(東京都健康長寿医療センター)
副鼻腔炎で咳が出る理由とほかの疾患による咳との違い
副鼻腔炎が原因で咳が出ることはありますか?
はい、副鼻腔炎が原因で咳が出ることがあります。副鼻腔内にたまった膿や分泌液がのどへ流れ落ちる後鼻漏が起こると、のどの粘膜が刺激されて咳が続くようになります。気管支そのものに炎症がなくても、後鼻漏による刺激だけで咳が出ることがあるため、気管支炎や風邪の治りかけと誤解されることがあります。特に、横になると膿がのどへ流れやすくなるため、夜間や朝方に咳が強く出やすいのが特徴です。
副鼻腔炎による咳の特徴を教えてください
副鼻腔炎による咳は、乾いた咳ではなく、のどに何かが落ちてくるような違和感を伴う湿った咳として現れることが多いです。痰が少し出ることもありますが、胸の奥がゴロゴロするような音はあまりみられません。夜に悪化しやすく、朝起きたときに強く出る傾向があります。また、咳止めを服用しても改善が乏しい一方で、副鼻腔炎の治療を進めると咳が軽くなるケースが多いです。鼻をかんでもすっきりせず、のどの刺激感が続く場合、副鼻腔炎が関与している可能性があります。
なぜ副鼻腔炎で咳が出るのですか?
副鼻腔炎では、炎症によって粘膜が腫れ、副鼻腔から鼻への通り道が狭くなります。その結果、膿や粘液が副鼻腔のなかにたまり、鼻の奥からのどへと流れ落ちていきます。この分泌物がのどの粘膜を刺激し、咳を引き起こします。炎症が長く続くと、のどの粘膜が過敏になり、わずかな刺激でも咳が出やすくなります。さらに、鼻づまりによって口呼吸が増えると、のどが乾燥して炎症が悪化しやすく、咳が長引く原因となります。
副鼻腔炎による咳とほかの疾患による咳に違いを教えてください
副鼻腔炎による咳は、のどの刺激感や鼻水・後鼻漏を伴う点が特徴です。気管支炎では胸の奥がゼーゼーするような咳が出やすく、喘息では呼吸時にヒューヒューと音がすることがあります。アレルギー性鼻炎では、透明な鼻水とくしゃみが中心で、咳は軽度です。胃食道逆流症では、胃酸がのどを刺激して咳を誘発しますが、鼻の症状はみられません。このように、副鼻腔炎による咳は、鼻の奥で起きた炎症がのどへ影響することで生じ、鼻水や鼻づまりなどの鼻の症状を同時に伴う点が、ほかの疾患による咳との違いです。
副鼻腔炎による咳の検査と診断、対処法
副鼻腔炎によるものと思われる咳が続くときは何科を受診しますか?
咳が長く続く場合は、まず耳鼻咽喉科の受診が適しています。副鼻腔炎による咳は、のどや気管支ではなく、鼻の奥の炎症が原因になっていることが多いためです。特に、後鼻漏や鼻づまり、においの低下を伴っている場合には、副鼻腔炎が関係している可能性が高いです。一方、息苦しさや胸の音が気になる場合は、呼吸器内科での診察も検討されます。鼻とのどの両方を確認しながら、どこに炎症の中心があるかを見極めることが、適切な治療につながります。
咳で受診をしたときの病院での検査内容と診断の流れを教えてください
診察では、まず問診で咳の出方や持続期間、鼻やのどの症状の有無を確認します。その後、鼻内をファイバースコープで観察し、膿や粘膜の腫れがないかを調べます。必要に応じてレントゲンやCT検査で副鼻腔の状態を確認し、膿がたまっている部位や炎症の広がりを把握します。診断は、鼻の症状と画像所見、後鼻漏の有無などを総合的に判断して行われます。
副鼻腔炎による咳はどのように治療しますか?
治療の基本は、炎症を抑えて副鼻腔の排膿を促すことです。急性の副鼻腔炎では、細菌感染が関与していると考えられる場合に抗菌薬を使用し、同時に粘膜の腫れを取る点鼻薬や抗炎症薬を併用します。慢性副鼻腔炎では、マクロライド系抗菌薬を少量で長期間使用する治療が行われることがあります。また、アレルギーが関係している場合には、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬で炎症を抑えます。これらの治療により、後鼻漏が減少して咳が改善することが多いです。手術が必要なケースでは、副鼻腔の通りを改善する内視鏡手術を検討します。
自宅でできる副鼻腔炎による咳の対処法を教えてください
自宅では、鼻の通りをよくして後鼻漏を減らす工夫が役立ちます。蒸しタオルで顔を温めると血流が促され、膿が排出されやすくなります。加湿器を使用して室内の湿度を保ち、乾燥を防ぐことものどの刺激をやわらげます。水分を多めにとると痰が切れやすくなり、咳が軽くなる傾向があります。就寝時には頭を少し高くして眠ると、膿がのどに流れ込みにくくなります。また、喫煙は粘膜の炎症を悪化させるため控えることが望ましいです。咳が続く場合には、自己判断で市販薬を使用せず、早めに耳鼻咽喉科で診察を受けることが重要です。
編集部まとめ
副鼻腔炎による咳は、気管支炎や喘息とは異なり、鼻の奥で起こる炎症が原因で生じます。副鼻腔にたまった膿や分泌液がのどへ流れる後鼻漏が刺激となり、夜や朝方に咳が強く出ることがあります。咳止めでは改善しにくく、長引く場合には副鼻腔炎が関係している可能性があります。
咳が続くときは耳鼻咽喉科で鼻や副鼻腔の状態を確認し、炎症を治療することが大切です。抗菌薬や点鼻薬の使用で炎症が落ち着けば、咳も次第に軽くなります。自宅では、加湿や水分補給、顔を温めるなどの工夫が有効です。副鼻腔炎による咳は、原因を見極めて適切に治療すれば改善が期待できます。
参考文献




