「大人のADHDの女性が持つ特徴」はご存知ですか?日常生活での注意点も解説!

ADHDは、注意力の欠如や衝動性・多動を特徴とする発達障害です。
ADHDの方は、性別や社会的な立場により、さまざまな悩みを持つことがあります。
本記事では、ADHDの診断基準や検査方法、ADHDと診断される方の人数、大人のADHD女性にみられる特徴、悩み、生活上の注意点などを解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
ADHDの基礎知識

ADHDとはどのような病気ですか?
不注意傾向がある方は以下のような困りごとを抱えることがあります。
- 一定時間集中を保つことが難しく仕事や授業に集中できない
- 予定や持ち物を忘れてしまう
- タスクを先延ばしにしてしまう
衝動性がある方は、話を最後まで聞けない、順番を守れない、思いつきで行動をするといった悩みを抱えることが珍しくありません。多動がある方は、じっとしていることが難しい、常に手足を動かしているなどの様子がみられ、やるべきことに取り組めない悩みを抱えることもあります。
不注意、衝動性・多動の何が強く出るか、特性がどのような形で現れるかは個人差があり、生活場面での困りごとも多岐にわたります。
子どもの頃は多動が強くみられていて、成長とともに不注意や衝動性の問題が残るケースもあります。
ADHDの検査方法と診断基準を教えてください
不注意や多動・衝動性の症状のうち一方または両方が6ヶ月以上続くこと、学校や家庭、職場など複数の環境で認められること、そして12歳以前から症状がみられることの3点を満たす場合、ADHDと診断されます。
ADHDは、検査結果のみで診断できるものではなく、問診や検査の結果、行動観察などから総合的に判断します。問診では、家族歴や幼少期の行動傾向などの生育歴を詳しく確認します。子どもの頃の通知表を参考にする場合もあります。
ADHDの評価では、質問紙法と知能検査がよく用いられます。
質問紙法は、本人が行動特性に関する質問に自己評価形式で答え、ADHDの傾向を把握します。
知能検査では、成人ではWAIS-IVが用いられることが多く、注意力や処理速度など各能力のばらつきを確認し、生活上の困難さを考える材料にします。
参照:『DSM-5と成人期ADHDの適正診断について』(精神神経学雑誌)
日本ではどの程度の人がADHDと診断を受けていますか?
参照:
『注意欠如多動性障害(ADHD)の疫学と病態: 遺伝要因と環境要因の関係性の視点から』(日健医誌)
『日本におけるADHDの制度化』(大阪市立大学社会学研究科)
ADHDの患者数に男女差がある理由を教えてください
成人のADHDは、男性:女性が1.6:1と、小児期と比較して性差が少なくなる傾向です。ADHDの患者数の男女差は、ADHDの方が受診し診断に至る率の違いが一因です。
ADHDの特性は、男児は衝動性・多動の形で出る場合が多く、女児では注意欠陥の形で出ることが多い傾向があると考えられています。
学齢期早期には、衝動性としての特性が問題になる場合が多く、男児のADHDが見つけられやすい傾向があります。
参照:『DSM-5と成人期ADHDの適正診断について』(精神神経学雑誌)
大人のADHDの女性が持つ特徴と悩み

大人のADHDの女性によくみられる特徴を教えてください
ADHDの女性が抱えがちな悩みごとはありますか?
| 不注意によって生じる悩み | ・支払いや行政手続きを先延ばしにしてしまう ・通帳や印鑑など大切なものを紛失する ・片付けができない ・仕事や家庭でのミスが多い ・遅刻しやすい |
| 衝動性によって生じる悩み | ・思いつきで大きな買い物をしてしまう ・親密ではない相手に個人的なことを話しすぎてしまう ・失言が多い |
| 多動によって生じる悩み | ・じっとしていられない ・貧乏ゆすりをしてしまう |
ADHDの女性は、不注意や衝動性の特性が表に現れやすく、多動に関する困りごとは少ない傾向です。一方で不注意や衝動性による困りごとは多く、人間関係や社会生活に支障を来すことも珍しくありません。
ADHDの二次障害とはどのような状態ですか?
ADHDの二次障害は、特性により不適応を起こし、度重なる失敗や叱責により自尊感情が低下して、精神的な問題が起こります。
二次障害は、外在化障害と内在化障害に分けられます。
外在化障害とは、気持ちのイライラや葛藤が他者に向けられる形で現れることを指します。反抗性人格障害や行為障害など、反社会的な行動につながる場合があります。
内在化障害は、ネガティブな気持ちが自分自身に向けて現れることを指し、強迫性障害や気分障害、抑うつにつながることがあります。二次障害は、本人の特性と環境とのミスマッチが大きいと、よりリスクが高まります。
大人のADHDの治療法と生活上の注意点

ADHDの可能性がある場合、病院で治療することはできますか?
薬物治療は、医師の診察によりADHDと診断され、医師が治療上必要と判断した場合に行われます。治療薬を使うことで、衝動性、多動、注意力の欠如が改善され、実生活で集中力が上がり、ケアレスミスが減るといった変化がみられる可能性があります。
大人のADHDの治療薬には、メチルフェニデート徐放剤、アトモキセチン、グアンファシンがあります。18歳未満から服用を続けていた方に限ってはリスデキサンフェタミンも治療薬の選択肢に入ります。
メチルフェニデート徐放剤とリスデキサンフェタミンは、ADHD適正流通管理システムにより管理されており、登録医のみが処方できる仕組みです。
心理社会的治療には、環境調整やカウンセリング、認知行動療法などの方法があります。
参照:
『 ADHD治療システム内の薬物療法,その意義と限界』(日本精神神経学学会)
『GAF尺度』(厚生労働省)
大人のADHDの女性が生活のなかで気を付けることを教えてください
片付けが苦手な方は、全体が見える収納を心がけてみましょう。カバンであれば、大きく口が開き、しっかりとした仕切りが付いているものがよいです。タンスや食器棚の引き出しは、小さな箱や仕切りを作ったうえで、何を入れておくのかを記載しておくと散らかりにくくなります。
衝動買いが多い方は、すぐに決済ができないようにクレジットカードはスマートフォンに登録しない、クレジットカードを持ち歩かないといった対策が有効です。現金での支払いを基本としておけば、「買いたくなった瞬間に高額な不要なものを買ってしまう」という失敗を防ぐことができます。
ADHDの人が仕事で気を付けることを教えてください
また、タスクを先延ばしにして期限を守れない場合には、タスク管理ツールや手帳が有効です。納期や締め切りが決まったらすぐさまタスク管理ツールなどに記載をします。この際は、締め切りを記載するだけでなく、作業を細切れにしてそれぞれの期日を決めておくことがポイントです。作業の先延ばしの多くは、作業の先が見通せない、複雑そうで面倒になるといった心理から発生します。あらかじめ作業を細かく分解することで、「これなら頑張れそう」という気持ちになれますので、先延ばしが発生しにくくなります。
衝動性が強く、同僚や上司の話を遮ってしまったり、話しすぎてしまったりすることでお困りの場合は、「ひと言も話さない程度がちょうどよい」という意識を持ってみましょう。あいづちを打ち、意見を求められたら発言するだけでも職場のコミュニケーションは十分に成立します。
編集部まとめ

大人のADHD女性は、幼少期は特性が目立たず、大人になってから生活や仕事での悩みが大きくなり診断に至るケースが男性と比べて多い傾向です。
社会生活のなかで、注意力や段取りの問題で悩む方が少なくありません。
ADHDは、環境調整や薬物療法で生活の質を上げられる可能性があるため、生活や仕事のなかで困りごとが多い方、支障を来している方は、医療機関の受診を検討してみましょう。
参考文献




