「うつ病」を発症するとどれくらい「薬」を飲み続けるの?副作用となる症状も解説!

うつ病は薬で治るのかと疑問を抱く方が少なくありません。気分の落ち込みや意欲の低下が長く続くと、日常生活にも支障をきたし、放置すると再発を繰り返す可能性もあります。うつ病は脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こる医学的な疾患であり、適切な治療が必要です。
近年はSSRIやSNRIなどの抗うつ薬が主流となり、気分の安定や意欲の改善を目的に用いられています。薬物療法は効果が現れるまで数週間かかることもあり、副作用や服用期間にも注意が必要です。この記事では、うつ病の薬の種類や効果、副作用、服用時の注意点を解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
目次 -INDEX-
うつ病の治療方法と用いられる薬の種類

うつ病とはどのような病気ですか?
うつ病の主な治療法を教えてください
中等症以上では薬物療法と心理療法の併用が第一選択となることが多く、重症例で薬物療法や心理療法の効果が得られない場合は電気痙攣療法(ECT) や 反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS) の実施も検討します。 ECTは、全身麻酔下で脳に電気刺激を与える治療です。一方、rTMSは頭部に磁気コイルを当てて、脳の特定部位を電気刺激で活性化する治療法です。
参照:
『うつ病の薬物療法』(昭和学士会誌)
『うつ病,うつ状態の薬物療法・心理療法』(心身医)
うつ病は薬を飲むことで治癒しますか?
うつ病の薬の効果と服用期間

うつ病の治療で用いられる薬の種類を教えてください
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
- セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
- 三環系抗うつ薬
- モノアミン酸化酵素阻害薬
- ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬
上記の薬剤は症状や効果によって使い分けられます。治療の効果が乏しい例では非定型抗精神病薬の併用、電気けいれん療法なども検討されます。非定型抗精神病薬は通常、統合失調症で用いられますが補助的にうつ病でも使用される薬剤です。電気けいれん療法では、脳に電気刺激を与えて症状の改善を目指します。
うつ病の薬の種類別に効果を教えてください
| 薬の種類 | 効果 |
|---|---|
| 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) | セロトニンの再取り込みを選択的に阻害し、シナプス間隙のセロトニン濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。 |
| セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) | セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、気分の安定と意欲の増加を促します。 |
| 三環系抗うつ薬 | セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これらの濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。 |
| モノアミン酸化酵素阻害薬 | 神経内でセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンを分解するモノアミン酸化酵素を阻害し、濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。 |
| ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬 | ノルアドレナリンとドパミンの再取り込みを阻害し、報酬系を活性化して意欲や集中力を高めます。SSRIとは異なり、眠気や性機能低下が少ないです。 |
上記のような効果があり、症状によって使い分けます。
参照:『うつ病の薬物療法』(昭和学士会誌)
うつ病の薬はどの程度の期間飲み続けるのですか?
参照:
『うつ病の薬物療法と電気けいれん療法』(昭和医会)
『うつ病のアルゴリズム治療』(精神経誌)
うつ病の薬でみられる副作用と注意点

うつ病の薬にはどのような副作用がありますか?
| 薬の種類 | 主な副作用 |
|---|---|
| SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) | 吐き気、下痢、頭痛、眠気、不眠、性機能障害(性欲低下・射精遅延など) |
| SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬) | 吐き気、発汗、動悸、血圧上昇、便秘、不眠 |
| NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬) | 強い眠気、体重増加、口渇 |
| 三環系抗うつ薬例 | 口渇、便秘、尿が出にくい、眠気、ふらつき、動悸 |
上記の副作用に注意しながら服用しましょう。
うつ病の薬には依存性はありますか?
うつ病の薬を飲むときの注意点を教えてください
| うつ病の薬を服用する際の注意点 | 内容 |
|---|---|
| 効果が出るまでに時間がかかる | 効果が出るまでに数週間から数ヶ月ほどかかるため、気長に効果を観察しましょう。 |
| 副作用をこまめに観察する | 服用初期には一時的な副作用が現れる場合があります。多くの場合1〜2週間で軽減しますが、症状が長く続く場合は医師に相談しましょう。 |
| ほかの薬やお酒との併用に注意する | 抗筒薬は、睡眠薬、抗不安薬、鎮痛薬などと相互作用があります。また、アルコールは薬の作用を強めたり、副作用を悪化させたりするため注意しましょう。 |
| 自己判断で中止、増減しない | 調子がよくなったからといって勝手に服用をやめると、離脱症状や再発のリスクが高まります。 |
うつ病の薬は、医師の指示にしたがって服用しましょう。服用後すぐに効果がみられなかったからといって、服用を中止したり、自己判断で量を増やしたりすることは避けてください。副作用が気になる場合も服用を止めず、医師に相談をして対策を検討してもらいましょう。
編集部まとめ

うつ病は気分の落ち込みや意欲低下、睡眠、疲労などの症状があり、日常生活に支障を来す疾患で治療が必要です。主に薬物療法と心理療法による治療が基本で、中等症以上は併用、重症では電気痙攣療法(ECT) や 反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)も検討します。
薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬などを症状に応じて使用します。副作用は吐き気、頭痛、眠気、不眠、性機能障害、体重変動、口渇、便秘、めまいです。依存性は通常ほぼありませんが、急な中止で離脱症状が出るため自己判断の減量は避けましょう。



