「インフルエンザ」感染時にお風呂は入ってもいいの？入浴の際の注意点も解説！

インフルエンザで高熱があるときは、お風呂は控えましょう。インフルエンザを発症すると38〜39度あるいはそれ以上の発熱がみられる場合があり、身体はウイルスと戦うために大きなエネルギーを消耗しています。

高温浴は交感神経刺激により血圧上昇や心拍増加を招きます。 高熱がある状態で湯船につかると身体への負荷がかかり、めまいや動悸、息切れなどの症状が出ることがあります。

さらに、一時的に汗を流してさっぱりしたと感じても、体温調節のために余計なエネルギーを消費し、治癒するために必要な体力を奪ってしまうおそれがあります。

参照：『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』（厚生労働省）

インフルエンザの熱が下がり、その状態が1日程度続いているなら、短時間の入浴はおおむね問題ありません。体調が安定していて、強いだるさやふらつきがなければ湯船につかっても問題ありません。

ただし、解熱剤で一時的に熱が下がっている場合は、体調がまだ不安定で、入浴後に再び熱が上がって具合が悪くなることがあります。特に子どもや高齢の方は体力の回復に時間がかかるため、シャワーで汗を流す、あるいはぬるめのお湯に短時間だけつかるなどといった方法から入浴を始め、徐々に普段どおりの生活に戻しましょう。

入浴を避けた方がよいのは、高熱が続いているときだけではありません。咳が強くて呼吸が苦しい場合や、尿の量が少ない、お口が渇くなどといった脱水症状がある場合も入浴は控えるべきです。入浴でさらに発汗すれば脱水が進行する可能性があります。

また、心臓病や慢性呼吸器疾患などの基礎疾患がある方は、入浴が心臓や肺に負担をかけて症状を悪化させることがあります。こうした場合は、入浴ではなく、まずは安静にして体調を回復させることを優先的に考えましょう。

お風呂に入ること自体にインフルエンザを治す効果はありません。インフルエンザはウイルス感染によるものであり、治癒には身体の免疫反応や薬の使用など、適切な治療が必要です。

ただし、体調が落ち着いている場合の入浴は、身体が温まることで血流がよくなり、リラックス効果や眠りやすさへの期待もあります。質のよい睡眠は免疫の働きを支えるため、間接的に回復を助ける可能性があります。つまり、入浴は治すものではなく、あくまでも休養を補助するものとしてとらえましょう。

インフルエンザの症状が落ち着いて入浴できるようになったとしても、熱いお湯に長時間つかるのは、身体への負担が大きいため避けましょう。入浴は38〜40度程度のぬるめのお湯で、5〜10分程度にとどめるのが望ましいとされています。熱いお湯や長時間の入浴は交感神経を刺激して心拍数や血圧を上げやすくなります。その結果、体力が戻っていない時期には、かえって体調を崩す原因となることがあります。

また、浴室や脱衣所が冷えていると血圧の変動が急激になり、めまいや立ちくらみを起こすことがあります。入浴前に脱衣所を温め、入浴後は身体を冷やさないように工夫しましょう。

さらに、インフルエンザを発症している最中は発熱や発汗で脱水になりやすいため、入浴の前後には、こまめな水分補給を心がけてください。

参照：『入浴と各種生体機能』（厚生労働省）

湯船そのものが媒介することはありません。インフルエンザは飛沫感染（咳やくしゃみで飛んだウイルスを吸い込む）や接触感染（手や物を介して口や鼻の粘膜に入る）によって広がります。注意が必要なのは、入浴前後の場面です。例えば、脱衣所や洗面所で咳やくしゃみをすると飛沫が飛び散り、家族にうつす可能性があります。また、タオルやドアノブを介した接触感染もあるため、タオルの共用は避け、入浴後はしっかり換気を行いましょう。

インフルエンザウイルスは熱に弱く、60度程度で加熱されると速やかに死滅します。しかし、家庭のお風呂は40度前後が一般的で、この温度では完全にウイルスを死活化させることはできません。しかし、湯船のなかでは、ウイルスが希釈され、皮膚から体内に侵入することもありません。したがって、お湯にウイルスが存在しても湯船を介して感染することは低いと考えられます。

参照：『Heat Inactivation of Influenza Viruses—Analysis of Published Data and Estimations for Required Decimal Reduction Times for Different Temperatures and Media』（Microbiology Research）

症状がなくなっても、一定の期間が経過していないうちは感染させる可能性があります。学校保健安全法においても、発症から5日間、かつ解熱後2日間（幼児は3日間）は出席停止期間となります。

したがって、インフルエンザの症状がなくなった直後に銭湯や温泉に行くと、周囲に感染させる可能性があります。症状が落ち着いた後も、登校や出勤の基準と同じように、一定の期間が経過してから利用するのが望ましいです。

参照：『令和6年度インフルエンザQ&A』（厚生労働省）

お風呂やシャワーを使用できないときは、濡れタオルを使って身体を拭くだけでも清潔を保てます。

首や脇、背中、股関節まわりなど汗をかきやすい部分を中心に優しく拭くと、不快感は軽減されます。髪のべたつきにはドライシャンプーを活用するとよいでしょう。

お風呂に入れない場合は完璧にきれいにすることよりも、少しでも不快感を減らして休養できる環境を整えましょう。

子どもの熱が高いときは濡れタオルで身体を拭いてあげましょう。特に汗をかいた顔や首、手足をきれいにすると快適に過ごせます。また、下着やパジャマをこまめに着替えることで快適さを保ちやすくなります。

解熱後もいきなり湯船に長くつかるのではなく、ぬるめのシャワーから始めて体調の変化を観察して調整しましょう。