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「歯周病の初期症状」はご存知ですか?進行すると現れる症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/10/12
「歯周病の初期症状」はご存知ですか?進行すると現れる症状も解説!【医師監修】

歯周病は歯を失う原因の一つであり、成人の多くが罹患しているとされる身近な病気です。ところが初期段階では自覚症状がほとんどなく、気付いたときには進行しているケースも珍しくありません。放置すると歯を失うだけでなく、全身の健康にまで悪影響を及ぼすこともわかっています。本記事では、歯周病の基礎知識から初期症状、進行時の症状、さらに効果的な治療法までを解説します。

松浦 京之介

監修歯科医師
松浦 京之介(歯科医師)

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歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。

歯周病の基礎知識

歯周病の基礎知識

歯周病とはどのような病気ですか?

 歯周病はむし歯と並んで歯科の2大疾患といわれており、成人期において歯を失う原因の一つです。

歯周病とは、歯を支える土台となる組織に炎症が起こり、徐々に破壊されていく病気です。具体的には、歯茎や歯を支える歯槽骨が細菌感染によって障害を受け、放置すると最終的に歯が抜け落ちてしまう可能性があります。歯周病の怖い点は、痛みなどの自覚症状が乏しいまま進行してしまうことです。そのため、気付いたときには重症化していることも珍しくありません。

参照:『歯周病検診マニュアル2023』(厚生労働省)

歯周病の原因を教えてください

歯周病の主な原因は歯垢(プラーク)です。毎日の歯磨きが不十分だと、歯と歯茎の境目に歯垢がたまっていきます。歯垢は歯に付着している白、または黄白色の粘着性の沈着物で、わずか1mgのなかに1億個以上の細菌が潜んでいるといわれます。

この細菌が出す毒素が原因で歯茎に炎症を生じます。さらに症状が進行すると歯と歯茎の間に歯周ポケットと呼ばれる空間ができます。その中は酸素が少ない環境になるため、歯周病菌がますます繁殖しやすくなり、炎症はさらに広がります。

また、歯垢は唾液に含まれるカルシウムやリン酸と結びついて硬い歯石となり、歯の表面にこびりつきます。歯石が歯周病菌が定着する足場のような役割を果たします。その結果、細菌はより奥深くにまで入り込み、炎症を悪化させていきます。炎症が強まると、歯槽骨が細菌の毒素によって溶かされ、歯茎が退縮したり、歯がぐらついたりする原因となります。

さらに、歯周病はさまざまな要因が重なって進行します。例えば、年齢や体質、糖尿病などの全身の病気、免疫力の低下などの身体の状態(宿主因子)です。また、喫煙、ストレス・食生活といった生活習慣(環境因子)も深く関係しています。

参照:
『e-ヘルスネット「歯周病とは」』(厚生労働省)
『歯周病検診マニュアル2023』(厚生労働省)

歯周病の前兆と初期症状

歯周病の前兆と初期症状

歯周病には前兆はありますか?

歯周病の前兆は、健康な口腔状態から少しずつ変化していくときに、ちょっとした違和感として現れます。

例えば、細菌の増殖が原因でお口の中がねばつき、朝起きたときの口臭が強くなります。歯磨きでたまに血が混じる場合も、歯肉に炎症が生じ始めている兆候です。

歯周病の初期症状を教えてください

歯周病の初期には、下記のような症状がみられます。

  • 歯磨きの際に少量の出血がある
  • 歯茎が赤く腫れている
  • 口臭が強くなる
  • 歯と歯の間に食べ物がつまりやすい

歯茎からの出血は、細菌によって炎症が起こり、血管が拡張して弱くなっている証拠です。通常、健康な歯茎からは歯磨き方法や食事程度の刺激で出血することはないため、少しでも出血するのであれば、それはすでに歯肉炎が始まっているサインと考えられます。

また、歯茎の赤みや腫れも同様に炎症反応の一つです。健康な歯茎は薄いピンク色で引き締まった状態ですが、炎症が進むと赤みを帯びて腫れぼったくなります。

さらに、強い口臭を感じる場合も注意が必要です。歯周病菌は嫌気性菌と呼ばれ、酸素の少ない環境で活動し、代謝の過程で悪臭のガスを発生させます。これが口臭の大きな原因です。

歯茎が腫れて形が変わったり、炎症で歯と歯茎の間に歯周ポケットができ始めることで、食べかすが残りやすくなります。

これらの症状は軽視されがちですが、歯周病の始まりを示している可能性が高いといえます。

進行した歯周病の症状

進行した歯周病の症状

歯周病が進行するとどのような症状が現れますか?

歯周病が初期段階から進行すると、歯茎や歯を支える骨(歯槽骨)に深刻な変化が生じてきます。まず、歯茎が少しずつ退縮し、歯の根本が露出することで歯が長く見えるようになります。さらに歯と歯の間に隙間が広がり、食べ物が挟まりやすくなるだけでなく、歯がぐらつき始めます。歯周ポケットが深くなり、膿が出てくる場合もあります。咬むと痛みを感じるようになり、食事がしにくくなることもあります。

歯周病を放置した場合に口腔内で起きることを教えてください

歯周病を放置すると、歯槽骨が徐々に吸収され、最終的に歯が抜け落ちてしまいます。さらに噛み合わせが崩れ、残っている歯や顎関節にも負担がかかります。その結果、咀嚼や発音にも悪影響を及ぼし、口腔全体の機能低下につながります。

歯周病は身体以外にも悪影響を及ぼしますか?

歯周病は身体の病気としての影響だけでなく、日常生活や社会生活、さらには心の健康にまで悪影響を及ぼします。

歯周病は強い口臭を引き起こします。これは歯周病菌が作り出すガスが原因で、本人が気付かないうちに周囲に不快感を与えることがあります。また、歯茎が退縮し、歯と歯との間にすき間が生じることで、見た目が変わり、対人関係や仕事上のコミュニケーションに悪影響を及ぼす可能性があります。
歯周病が進行すると、歯がぐらつき、咬むことで痛みを感じることがあるため、硬いものが食べにくくなります。その結果食事内容が偏り、栄養バランスが崩れることがあります。
口臭や見た目の変化、食事の制限などが重なることで、自分に自信が持てなくなり、人前で話すことを避ける方もいます。心理的ストレスから生活の質が下がってしまうことも少なくありません。

歯周病の治療法

歯周病の治療法

軽度歯周病の治療法を教えてください

軽度歯周病では、歯茎に炎症がみられますが、歯槽骨の大きな破壊はまだ進んでいません。治療の中心は毎日のセルフケアです。正しい歯磨きの方法を身につけ、歯間ブラシやフロスを使って歯と歯の間の汚れをしっかり取り除きます。歯科医院では、専用の機器とフッ化物入り研磨剤を使用して、歯磨きで落とせない歯石や磨き残した歯垢を中心に清掃、研磨を行います。

また、喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病にかかりやすく、悪化しやすいことがわかっています。禁煙で歯を支える組織の状態が改善するため、歯周病のリスクが下がり、治療効果が上がります。どの重症度であったとしても禁煙を心がけましょう。

参照:『e-ヘルスネット「歯周治療の流れ」』(厚生労働省)

中等度の歯周病はどのように治療しますか?

中等度歯周病では、歯を支える骨が少しずつ溶け、歯周ポケットも深くなってきます。歯茎の腫れや出血も強くなり、口臭が気になる方も増えてきます。

治療では、歯の根の周囲まで徹底的にお掃除を行うルートプレーニングが行われます。また、噛み合わせの乱れがあると、異常な力が歯槽骨にかかり吸収されやすくなるため、噛み合わせの調整も行います。清掃性をよくするために、合っていない被せ物は必要に応じて外すことがあります。さらに症状が進んでいる場合には、歯周外科治療が検討されることもあります。歯周外科治療では、歯周病によって深くなった歯周ポケットや不良肉芽組織を除去し、歯根の表面を清掃することで、歯周組織の再付着や炎症の改善を目指します。また、必要に応じて歯槽骨の形態を整える処置を行うことがあります。

重度歯周病の治療法を教えてください

重度歯周病は、歯を支える骨が大きく失われ、歯がぐらぐらし、嚙みにくくなる段階です。放置すると歯を失う可能性も高くなります。治療では外科的な処置が必要になることがあります。歯周病が進行して歯がぐらぐらしている場合などは、全体のバランスや歯の状態を考えて早期に抜歯を行うこともあります。

編集部まとめ

編集部まとめ

 歯周病は初期症状がわかりにくく、放置すれば歯を失うだけでなく、全身疾患のリスクも高める重大な病気です。初期の段階であれば適切なケアで改善が可能ですが、進行すると治療が複雑化し、完治が難しくなります。日常の歯磨きやフロスの習慣、定期的な歯科検診が歯周病予防の効果的な手段です。歯茎の腫れや出血などのサインを軽視せず、早めに歯科を受診することが、健康な歯と全身を守る第一歩です。

この記事の監修歯科医師