「インフルエンザで病院に行かない」とどんなリスクがあるかご存知ですか?【医師監修】

インフルエンザは毎年のように流行を繰り返す感染症で、突然の高熱や全身の強い倦怠感を伴うことが特徴です。多くの場合は1週間程度で治癒しますが、頻度は少ないものの肺炎や脳症といった重症化や合併症を引き起こすことがあります。
「軽い症状だから病院に行かなくても大丈夫」と自己判断すると、治療のタイミングを逃し、重症化や後遺症につながる可能性があります。
本記事では、インフルエンザで病院に行かないとどのようなリスクがあるのか、受診が必要な目安や病院で行われる検査や治療を解説します。

監修医師:
居倉 宏樹(医師)
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
目次 -INDEX-
インフルエンザの症状と合併症、後遺症

インフルエンザの症状を教えてください
年齢や体力によって症状の出方には差があり、乳幼児では高熱とともに嘔吐や下痢を伴うことがあります。また、高齢の方では高熱にはならないものの、食欲低下や意識の変化といった症状がみられることもあります。
参照:『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』(厚生労働省)
インフルエンザの合併症にはどのようなものがありますか?
さらに、インフルエンザによって持病が悪化する場合もあります。例えば、心臓疾患を持つ方では心不全の増悪、喘息を持つ方では発作の頻発などがみられ、既往症と重なって危険性が高まります。
インフルエンザの後遺症を教えてください
インフルエンザ脳症を発症した場合には、その後にてんかんや認知機能の低下といった神経学的な障害が残ることがあり、肺炎を合併すると呼吸機能の低下が長く続くことがあります。また、心筋炎を発症した場合には心臓の機能が落ちてしまい、長期的に息切れや疲れやすさが続くこともあります。
これらの長期的な障害は頻度としてはまれですが、発生すると生活へ大きな影響を与える可能性があります。また、流行期にはインフルエンザ脳症の報告が増加する傾向も指摘されています。
参照:『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』(厚生労働省)
インフルエンザで病院に行かないとどうなるのか

インフルエンザで病院に行かないことにはどのようなリスクがありますか?
抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に使用することで効果が高いとされているため、受診が遅れると治療の効果が得られない可能性があります。適切なタイミングでの受診が必要です。
参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)
インフルエンザで病院に行く必要がないのはどのようなケースですか?
ただし、症状が改善しない、悪化しているといった場合には自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
インフルエンザで病院に行った方がよいケース

インフルエンザの疑いがある場合に必ず受診した方がよいのはどのような人ですか?
また、過去にインフルエンザ脳症や重度の合併症を経験したことがある方も注意しましょう。それ以外にも、家庭での対応に不安がある場合は、早めに医師に相談することで、適切な対応を受けられます。
どのような症状がみられたら受診すべきですか?
- 38度以上の発熱が数日間続いている
- 咳が強く呼吸が苦しい
- 意識がもうろうとしている
- けいれんを起こした
- 胸の痛みがある
これらの症状がある場合、重症化や合併症を発症している可能性があります。
また、水分が十分に摂れず尿の量が減っている、お口の渇きが強いといった症状がみられる場合は、脱水症状を起こしている可能性があります。脱水を放置すると、腎機能障害や意識障害につながることもあるため、医療機関を受診して適切な対応を受けましょう。
インフルエンザで病院に行った場合に実施される検査と治療

インフルエンザで受診をするとどのような検査が行われますか?
迅速診断キットは鼻や喉の粘膜から綿棒で検体を採取し、15分程度でインフルエンザ陽性かの結果がわかるのが特徴です。
ただし、この検査は発症後24時間程度で検査精度が高くなるといわれており、発症から間もない場合はウイルス量が少ないため、実際には感染しているのに陰性と出る偽陰性になる可能性があります。そのため、症状や流行状況を踏まえた総合的な判断が必要です。
重症化や合併症が疑われる場合など、より正確な診断が求められるときにはPCR検査が行われることもあります。
参照:『新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)』(一般社団法人日本感染症学会)
インフルエンザが確定した場合の治療法を教えてください
そのうえで、発症から48時間以内であれば抗インフルエンザ薬が処方されることがあります。抗インフルエンザ薬には 飲み薬、吸入薬、点滴薬(注射薬)の3種類があり、どのタイプを使うかは年齢や症状、基礎疾患の有無、妊娠中などによって医師が判断します。
これらの薬は症状を軽くしたり、発熱の期間を短くしたり、合併症にかかる可能性を下げる効果が期待できます。ただし、薬を使ってもすぐに治るわけではなく、数日は熱や倦怠感が続くことがあります。
参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)
編集部まとめ

インフルエンザは急な高熱や全身のだるさを特徴とし、肺炎や脳症などの合併症を起こすこともある感染症です。多くは1週間程度で治癒しますが、まれに倦怠感や関節痛が長く残るなど後遺症につながる場合もあります。
健康な成人で症状が軽いときは自宅で治癒することもありますが、基礎疾患を持つ方や高齢の方、乳幼児、妊婦さんなどは重症化する可能性が高いため早めに医療機関を受診しましょう。医療機関では迅速診断キットや必要に応じてPCR検査が行われ、抗インフルエンザ薬による治療が行われます。
インフルエンザは身近な感染症ですが、軽視すると命に関わることがあります。自己判断せず、体調の変化に応じて適切に受診し、安静や水分補給を心がけましょう。
参考文献



