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「マイコプラズマ肺炎」はうつるの?うつりやすい期間や症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/10/11
「マイコプラズマ肺炎」はうつるの?うつりやすい期間や症状も解説!【医師監修】
マイコプラズマ肺炎が学校や職場で流行していると聞くと、どのくらい感染しやすいのか、いつまでうつる可能性があるのかなど疑問が浮かぶことでしょう。

この記事では、マイコプラズマ肺炎に関する疑問に答えるため、感染経路やうつる期間、家庭や職場でできる予防法を解説します。
居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

マイコプラズマ肺炎の原因と感染経路

マイコプラズマ肺炎の原因と感染経路

マイコプラズマ肺炎になるとどのような症状が現れますか?

特徴的な症状は、発熱後から少し遅れて始まる、痰のからまない乾いた咳(乾性咳嗽)です 。この咳は3〜4週間と長く続くこともあります1一度咳き込むとなかなか止まらず、夜間や早朝に症状が出やすいのが特徴です。 咳以外にも、以下のような症状がみられます。

  • 38度以上の発熱
  • 頭痛
  • のどの痛み
  • 鼻水・鼻づまり
  • 倦怠感(だるさ)
  • 胸の痛み

重症化して胸水が溜まるケースがあり、中耳炎、髄膜炎、心筋炎などの合併症を引き起こすこともあります。

ご高齢の方は、高熱や激しい咳などの典型的な症状がみられず、なんとなく元気がない、食欲がないなどの症状が現れることもあります。 そのため、発見が遅れがちになり、気付いたときには重症化しているケースもあります。

参照: 1.『マイコプラズマ肺炎』(厚生労働省) 2.『IDWR2012年第39号<注意すべき感染症>マイコプラズマ肺炎』(JIHS国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト)

マイコプラズマ肺炎の原因を教えてください

マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌が原因で引き起こされる呼吸器感染症です。3この細菌は、細胞壁を持たない細菌であり、β-ラクタム系(ペニシリン/セフェム系)の抗菌薬は無効です。そのため治療には、マクロライド系テトラサイクリン系ニューキノロン系などが選択されます。4.5

参照: 3.『マイコプラズマ肺炎の発生状況について』(国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト) 4.『IASR45(1),2024【特集】マイコプラズマ肺炎2023年現在』(JIHS国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト) 5.『マイコプラズマ肺炎増加に関する学会からの提言について(周知)P4 3)病院へのお願い』(厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課)

マイコプラズマ肺炎はどのような経路で感染しますか?

マイコプラズマ肺炎の主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。6

飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみで飛び散る細菌を含んだしぶきを吸い込むことで感染することを指します。また、接触感染は、感染者が触れたドアノブなどの表面に付着した細菌に触れ、その手でお口や鼻、目を触ることで粘膜から細菌が侵入して感染することです。

参照: 6.『マイコプラズマ肺炎』(厚生労働省)

マイコプラズマ肺炎はほかの肺炎とくらべてうつりやすいですか?

マイコプラズマ肺炎は、ほかの肺炎とくらべて感染が広がりやすい傾向にあります。 例えば、肺炎球菌による肺炎は、免疫力が落ちている方には感染しやすく、健康な方には感染しにくいといわれています。しかし、マイコプラズマ肺炎は、感染した方との接触が長時間にわたる場合や、近い距離で接する場合には、感染が広がりやすい傾向にあります。7 そのため、家庭内や学校のクラス、職場の同僚、高齢者施設など、閉鎖された空間で長く時間をともにする場所では、集団感染がみられます。

参照: 7.『IDWR2012年第39号<注意すべき感染症>マイコプラズマ肺炎』(JIHS国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト)

マイコプラズマ肺炎がうつる期間

マイコプラズマ肺炎がうつる期間

マイコプラズマ肺炎には潜伏期間はありますか?

はい、あります。マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は通常2〜3週間です8 マイコプラズマは感染してから症状が現れるまでの潜伏期間が長いため、感染したことに気付かずに、周りの方にうつしてしまいます。これが、家庭や学校などで感染が広がる一因と考えられています。

参照: 8.『IDWR2012年第39号<注意すべき感染症>マイコプラズマ肺炎』(JIHS国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト)

マイコプラズマ肺炎がうつりやすい期間を教えてください

症状が出現する数日前から、咳の症状が強い時期が感染力のピークで、うつりやすい期間です。インフルエンザのように解熱後〇日と明確な出席停止期間は定められていません。症状が軽快したら登校可というのが行政周知事項です。医療機関や自治体では、解熱後、激しい咳がおさまるまでは、登校や出社を控えるよう推奨しています。9周囲への感染リスクを考慮し、症状が強い間は自宅で安静に過ごしましょう。

参照: 9.『マイコプラズマ肺炎増加に関する学会からの提言について(周知)P3 ⑥学童の場合、出席停止期間は?』(厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課)

マイコプラズマ肺炎の症状がおさまっても感染しますか?

はい。マイコプラズマの菌は、熱が下がったり咳が軽くなったりした後も、数週間にわたり、排菌し続ける可能性があります。この期間は感染力自体はピークにくらべ低下しますが、ゼロではありません。そのため、症状が改善した後も、しばらくはマスクの着用や手洗いなどの感染対策を心がけましょう。

マイコプラズマ感染は大人にもうつりますか?

はい、大人にもうつります10マイコプラズマ肺炎は、子どもがかかるイメージですが、年齢に関わらず1年を通して誰でも感染します。

大人がマイコプラズマに感染し発症した場合、発熱、咳、のどの痛みなど、マイコプラズマ肺炎の症状と変わりません。しかし、症状が長引いたり、咳がより頑固になったりすることがあります。 また、ご高齢の方や基礎疾患のある方が感染した場合は、重症化するリスクも考慮する必要があります。

参照: 10.『マイコプラズマ肺炎』(厚生労働省)

マイコプラズマ肺炎の予防法

マイコプラズマ肺炎の予防法

家庭内でのマイコプラズマ肺炎の感染対策を教えてください

マイコプラズマ肺炎には、インフルエンザのような予防接種(ワクチン)はありません11そのため、日々の感染対策が大切です。ご家族が感染した場合、家庭内での感染拡大を防ぐために、以下の点を心がけましょう。

  • 流水と石鹸による手洗い
  • マスクの着用
  • タオルの共用を避ける
  • 定期的な換気
  • 食器の洗浄
  • 十分な休養と栄養

感染予防の基本は、帰宅時や食事前などのこまめな手洗いです。 感染している方は咳エチケットとしてマスクを着用し、看病する側もマスクをして飛沫感染のリスクを減らしましょう。タオルや食器の共用は避け、個人ごとに分けるかペーパータオルを使用するのがおすすめです。また、定期的に窓を開けて換気を行い、ドアノブなど皆が触れる場所は消毒液でこまめに拭きましょう。12

参照: 11.『IASR45(1),2024【特集】マイコプラズマ肺炎2023年現在』(JIHS国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト) 12.『マイコプラズマ肺炎』(厚生労働省)

学校や職場でマイコプラズマ肺炎が流行しているときはどうすればよいですか?

感染予防の基本的な対策に加え、体調が悪いときは無理せず休みましょう。集団生活の場では、自分自身が感染しない、そして万が一感染した場合には他人にうつさないなど、両方の視点を持つことが大切です。 また、日頃から十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけましょう。 咳や発熱などの症状がある場合は、無理して登校・出社せず、自分の身体を休ませることを優先してください。周囲に感染を広げないための社会的なマナーでもあります。

編集部まとめ

編集部まとめ  マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマという細菌が原因で引き起こされる呼吸器感染症です。感染経路は、飛沫感染接触感染です。 潜伏期間が2〜3週間と長いため、気付かないうちに身近な場所で感染を広げてしまいます。

特徴的な症状は、熱が下がった後も3〜4週間続くしつこい咳です。子どもの場合は痰のからまない乾いた咳がでますが、大人の場合は痰がからむことがあります。初期症状が風邪と似ているため見過ごされやすいですが、市販薬が効きにくいときにはマイコプラズマ肺炎を疑うとよいかもしれません。特にご高齢の方や基礎疾患をお持ちの方は重症化するリスクがあるため考慮しておきましょう。

また、マイコプラズマ肺炎にはワクチンがありません。そのため、ほかの感染症と同じように、こまめな手洗い、マスクの着用、室内の換気など感染対策を徹底し、予防を心がけましょう。また、症状が改善した後も数週間は排菌する可能性があるため、咳が続く間は周囲への配慮を心がけましょう。

もし、ご自身やご家族に、長く乾いた咳や原因のわからない体調不良がみられるようであれば、自己判断で様子をみるのではなく医療機関を受診し、医師の診断を受けることをおすすめします。

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