「女性が低血圧になる原因」はご存知ですか?症状やなりやすい人の特徴も解説!
更新日:2025/11/14

朝、なかなか起きられない、いつも身体がだるくて疲れやすい、立ち上がるとクラっとする、こうした不調に悩まされていませんか?もしかしたら、それは低血圧が原因かもしれません。特に若い女性に多く見られる低血圧は、体質だから仕方ないと見過ごされがちですが、日常生活に大きな影響を及ぼすこともあります。この記事では、女性の低血圧のメカニズムから、具体的な症状、そして辛いときのセルフケアや改善法まで詳しく解説します。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。
女性における低血圧の割合と原因
女性のうち低血圧に該当するのは何割程度ですか?
統計データを見ると、低血圧は男性よりも女性に圧倒的に多く見られます。厚生労働省『国民健康・栄養調査』では、20代女性の2〜3割が低血圧に該当するという結果が出ており、同年代の男性(1割以下)と比べて大変高い割合です。この傾向は30代でも続き、女性の2〜3割が低血圧であるのに対し、男性は1割以下にとどまります。
このように、特に若い世代の女性にとって低血圧は身近な問題です。しかし、体質として片付けられがちな風潮から辛い症状が見過ごされてしまうケースも少なくないのが現状です。
低血圧の原因を教えてください
ご自身の症状がどのタイプに近いかを知ることが、適切な対処への第一歩となります。
- 体質としてやせ形で筋肉量が少ない
- 自律神経の働きが遅い起立性低血圧
- 薬剤性(降圧薬、利尿薬、抗うつ薬など)
- 脱水や出血による循環血液量の減少
- 内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎不全など)
- 妊娠初期の血管反応低下
どのような女性が低血圧になりやすいですか?
若年から更年期前の女性、痩せ型、月経過多、塩分や水分摂取が少ない方が該当しやすいとされています。
これらの特徴は、心臓から血液を送り出す力や、全身から心臓へ血液を戻す力が元々弱い傾向と関連していると考えられています。ただし、これらに当てはまらなくても低血圧に悩む方はいますので、あくまで一般的な傾向としてとらえてください。長距離走のアスリートも血圧は低い傾向にありますが問題になることはほとんどありません。
女性に起こりやすい低血圧の症状
低血圧の女性にはどのような症状が生じやすいですか?
低血圧の症状は、脳や筋肉など全身の臓器への血流が不足し、十分な酸素や栄養が供給されなくなることで起こります。そのため、大変多彩な症状が現れるのが特徴です。
- めまい、立ちくらみ、ふらつき
- 倦怠感、集中力低下
- 冷え、手足のしびれ
- 朝起きにくい、頭痛や肩こり
- 動悸や息切れ(特に起立直後)
低血圧と生理中のめまいや立ちくらみとの関係を教えてください
生理周期に伴う体調不良は多くの女性が経験しますが、低血圧の方は特に生理前や生理中にめまいや立ちくらみが悪化しやすい傾向があります。これには、①女性ホルモンの変動、②自律神経の乱れ、③循環血液量の変化という3つの要因が複雑に絡み合っています。生理周期はホルモンバランス、自律神経、血液量という複数の側面から、低血圧の症状を悪化させる引き金になりうるのです。
低血圧の女性が将来気を付けた方がよい病気はありますか?
注意すべき点が2つあります。
1つ目は、転倒によるケガのリスクです。低血圧、特に起立性低血圧の最も直接的な危険は、めまいや立ちくらみによる失神です。意識を失って転倒すると、骨折や頭部外傷といった重大なケガにつながる可能性があります。
2つ目は、将来的な認知機能低下との関連性です。中年期以降の起立性低血圧が、将来の認知症発症リスクを高める可能性が指摘され始めています。そのメカニズムとして考えられているのが、慢性的脳低灌流です。これは、立ち上がったときの血圧低下が繰り返されることで、脳への血流が慢性的にわずかに不足する状態を指します。この状態が長年続くと、脳に十分な酸素や栄養が行き渡らず、脳の免疫細胞であるミクログリアが過剰に活性化するなどして微細な炎症を引き起こし、徐々に認知機能の低下につながるのではないかと考えられています。
病院を受診した方がよい低血圧の症状を教えてください
体質的な低血圧で、日常生活に大きな支障がなければ、必ずしも治療の必要はありません。しかし、以下のような場合は、医療機関(内科や循環器内科)を受診することをおすすめします。
- 失神や意識消失
- 胸痛、息切れ、動悸が強い
- 持続する視野障害や構音障害
- 大量出血や激しい下痢・嘔吐後
低血圧で辛いときの対処法
低血圧により立ちくらみを起こしたときはどうすればよいですか?
立ちくらみが起きたときは、転倒を防ぎ、速やかに脳への血流を回復させることが大切です。慌てずに以下の対処を行いましょう。
- まず安全な場所に座るか横になる
- 下肢を上げる
- ふくらはぎのポンプ運動(足首を曲げ伸ばししてふくらはぎの筋肉を収縮・弛緩させる)
- 冷たい水200 mLをゆっくり飲む
- 10分ほど安静を保ち、ふらつきやめまいが消失したことを確認する
低血圧が原因の肩こりや頭痛への対処法を教えてください
低血圧の方に多い肩こりや頭痛は、血行不良が主な原因と考えられます。温熱パックや入浴で末梢血管を拡張し、軽いストレッチで筋ポンプを働かせるとよいです。デスクワークでは30分ごとに姿勢を変えます。ただし、頭痛にはタイプがあり、対処法を間違えると悪化させてしまうこともあるため注意が必要です。
低血圧で朝が辛いときはどうすればよいですか?
低血圧の方が朝に弱いのは、睡眠中にリラックスモード(副交感神経優位)だった自律神経が、起床後に活動モード(交感神経優位)へスムーズに切り替わらないためです。以下のステップで、身体に負担をかけずに目覚める習慣をつけましょう。
- 目覚めたら布団の中で膝を曲げ伸ばし
- 起き上がる前に水を用意しこまめに飲む
- 朝食に十分なタンパク質と適度な塩分(みそ汁、ゆで卵など)
- 日光を浴びながら深呼吸し自律神経を整える
低血圧を改善する方法を教えてください
低血圧の症状を根本的に改善するには、食事、運動、生活習慣の3つの柱から、総合的にアプローチすることが大切です。
食事
- 水分は1日1.5〜2 Lを目安に分けて摂る
- 食塩制限が不要な方は1日7 g程度まで許容し、塩分を多めにする(特に朝食時)
- 体重が少ない場合は良質な脂質・たんぱく質でBMI18.5以上を維持する
- 立位保持が長い業務では膝を屈伸して血流を促す
- ウォーキングや軽いジョギングを週150分以上行う
- 弾性ストッキングを活用し下肢血液うっ滞を減らす
- 薬剤性が疑われるときは主治医と相談し減量を検討する
編集部まとめ
女性に多い低血圧について、原因から症状、具体的な対処法までを解説しました。低血圧による朝の辛さや日中のだるさ、立ちくらみは、決して気合が足りないからでも、怠けているからでもありません。女性ホルモンの影響や自律神経の働き、循環血液量など、身体のメカニズムが深く関係しているのです。食事、運動、生活習慣の3つの柱を意識して改善していきましょう。 ただし、症状が強く、日常生活に支障をきたしている場合や、失神を経験したことがある場合は、決して自己判断で済ませず、医療機関を受診するようにしてください。




