「低血圧の原因」はご存知ですか?原因別の対策も解説!【医師監修】

血圧は、高すぎても低すぎても、身体にさまざまな不調を引き起こすことがあります。
高血圧の予防や治療の重要性はよく知られていますが、実は低血圧でも、めまいや吐き気などの症状が出て治療が必要になる場合や、重大な病気が隠れていることもあります。
では、血圧が低すぎるとは、どの程度を指すのでしょうか?
本記事では、低血圧の基準や症状、原因、さらに、原因別の対処法や薬物療法についても解説します。

監修医師:
居倉 宏樹(医師)
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
目次 -INDEX-
低血圧の原因

低血圧の基準と症状を教えてください
明確な国際基準はありませんが、一般には、上の血圧(収縮期血圧)が90〜100 mmHg未満、または下の血圧(拡張期血圧)が60 mmHg未満の場合を指します。
なお、これらの基準を満たしていても、必ずしも症状が出るとは限りません。
一方で、次のような代表的な症状がみられることがあります。
- めまい
- ふらつき
- 疲労感
- 目のかすみ
- 頭痛
- 吐き気
- 動悸
このほか、血圧が著しく低下すると、失神を起こすことがあります。また、持続的な低血圧は、反応性の低下、錯乱、脱力感などの変化を生じる場合もあります。
また、低血圧となった原因によっては、胸痛や息苦しさ(呼吸困難)、不整脈、発熱、下痢などを伴うこともあります。このような場合は、心疾患や感染症など、別の重大で緊急性の高い病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。こうした症状があるときは、速やかに医療機関を受診しましょう。
なぜ血圧が低くなるのですか?
具体的には、心臓や血管、神経、ホルモン、体液の量などが互いにバランスをとることで、血圧は一定に保たれています。
これらのどこかに問題が生じると、血圧の調節がうまくいかなくなり、低血圧が起こることがあります。
低血圧の原因は、大きく分けて本態性低血圧、起立性低血圧、食後低血圧、症候性低血圧の4つに分類されます。
本態性低血圧は、誘因となる特定の病気が存在しない低血圧のことです。低血圧の多くはこのタイプとされています。
起立性低血圧は、横になった状態(臥位)や座った状態(座位)から立ち上がる(立位)際に、血液が下半身に分布しやすくなり、脳の血流が一時的に低下することで生じます。起立性低血圧はさらに、神経障害が由来となる神経原性と、神経以外の誘因による非神経原性に大きく分けられます。
食後低血圧は、食後に内蔵への血流が増えることで、相対的に脳への血流が減少し、血圧が下がることで症状がみられます。高齢の方、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経疾患をもつ方、高血圧の方などに多くみられます。
症候性低血圧は、二次性低血圧とも呼ばれ、背景に明確な原因が存在する低血圧のことです。体液バランスの異常、心臓疾患、自律神経障害、ホルモンや薬剤の影響などが含まれます。具体的には、不整脈や心不全、糖尿病、神経変性疾患、甲状腺機能低下、副腎不全などが挙げられます。これらの病気は、低血圧以外にもさまざまな症状を伴うため、早期の発見と対応が重要です。
低血圧の原因を確かめる方法を教えてください
まずは問診で、症状が現れるタイミングや状況に特徴がないかを確認します。また、低血圧を引き起こす可能性がある薬を飲んでいるかどうかも調べます。これらは、起立性低血圧や食事性低血圧の診断に役立つことがあります。
さらに、めまいや立ちくらみ以外の症状がある場合は、症候性低血圧を疑う手がかりになることもあります。
必要に応じて、症候性低血圧の原因を調べるために、血液検査、心電図、胸部X線検査などが行われます。そのほか、心臓超音波検査、内分泌機能を調べる血液検査、頭部MRI検査などが行われる場合もあります。
【原因別】低血圧の対策

本態性低血圧の改善方法を教えてください
一方で、症状がつらく、生活に影響がある場合には、生活リズムの改善、適度な運動、十分な睡眠の確保、ストレスの軽減などの非薬物療法が第一選択となります。
これらの方法で効果が不十分な場合には、状況に応じて薬物療法が検討されることもあります。
起立性低血圧を起こしにくくする方法はありますか?
- ゆっくりと立ち上がる
- 適切な水分、塩分を摂取する
- 上半身を高く保持した姿勢(>10度)で睡眠をとる
- 弾性ストッキングを使用する
さらに、不規則な生活、睡眠不足、過労などのストレスも関係するため、生活のリズムを整えることも大切です。
食後低血圧への対処法を教えてください
- 少量、頻回の食事
- ブドウ糖や炭水化物の摂取は、日中は控えめに、夕食に多く配分する
- 熱すぎる料理は避ける
- 食事の前に適量の水を飲む
- 食後に軽い歩行運動を行う
- 弾性ストッキングを使用する
症候性低血圧は元の病気が治れば改善しますか?
ただし、パーキンソン病や糖尿病など、病気によっては、長期的な治療が必要となるケースも少なくありません。
このような場合には、原因疾患への対応と並行して、症状に応じた薬物療法が選択されることもあります。
低血圧の薬物療法

低血圧の治療に薬を使うことはありますか?
一方で、めまいやふらつきなど症状がある場合には、症状の程度と原因に応じて、薬物療法が検討されることがあります。
本態性低血圧では、まず生活習慣の見直しが基本となりますが、症状が強い場合には薬の使用が考慮されます。
起立性低血圧や食後低血圧では、原因への対応や非薬物療法が優先されますが、改善が不十分な場合には薬物療法が用いられることもあります。
また、症候性低血圧では、原因となる病気の治療が優先されますが、それと並行して、低血圧の症状に応じた薬物療法が行われることもあります。
低血圧の治療に使われる薬の種類を教えてください
前者の代表的なものには、ミドドリン塩酸塩、アメジニウムメチル硫酸塩、エチレフリン塩酸塩などがあります。
また後者には、鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン)やエリスロポエチンなどがあります。
そのほか、ドロキシドパや塩化ナトリウム(食塩)が処方されることもあります。
ただし、低血圧の原因や基礎疾患によって選択される薬剤は異なるため、使用にあたっては医師とよく相談することが大切です。
編集部まとめ

低血圧は日常生活に支障をきたすこともあり、背景に重大な病気が隠れている場合もあります。めまいやふらつきなどの症状が続く場合は軽視せずに、早めに医師へ相談することが大切です。
また、日常生活の習慣によって、ある程度症状が軽減できる可能性もあります。
食生活の見直しや、水分や塩分の適切な摂取、睡眠や運動習慣の改善などを、医師と相談しながら無理のない範囲で少しずつ取り入れてみましょう。
特に高齢の方や、持病のある方は、低血圧が思わぬ転倒やけがにつながることもあります。体調に不安があるときは、遠慮せず医療機関を受診しましょう。
日頃から自分の血圧の傾向を知っておくことも、変化に気付くための第一歩です。




