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「低血圧の基準値となる数値」はどれくらいかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/09/01
「低血圧の基準値となる数値」はどれくらいかご存知ですか?【医師監修】
「血圧は、高いより低い方が病気の心配がない」もし、そう思っていたら、その考え方は少し危険かもしれません。ふとした瞬間の立ちくらみ、原因不明のだるさは、単なる体調不良ではなく、低血圧が原因の可能性があります。低血圧のつらい症状はQOL(生活の質)を低下させるだけでなく、症状が続くことで、転倒による骨折や、背後に隠れた病気を見逃してしまう可能性も考えられます。

高血圧ほど知られていませんが、低血圧にも気を付ける点があります。 本記事では、低血圧の基準や種類、今日から始められる対処法や予防法を詳しく解説します。
居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

低血圧の基準値

低血圧の基準値

低血圧に数値の基準はありますか?

明確な国際基準はありませんが、一般には、収縮期血圧(上の血圧)が90〜100 mmHg未満、または拡張期血圧(下の血圧)が60 mmHg未満の場合を指します。

低血圧に高血圧のような明確な基準がない理由を教えてください

低血圧の多くは本態性低血圧(体質的なもの)であり、特に悩まされる症状がない場合には、病気とは必ずしもとらえず、治療介入も行われません。そのため、明確な基準が設けにくいと考えられます

収縮期血圧、拡張期血圧のいずれも基準を下回らなければ低血圧とはいえませんか?

収縮期血圧または拡張期血圧の片方が基準を下回れば、低血圧とみなされることがあります。 ただし、基準を下回っている場合でも、めまい、立ちくらみ、だるさ、疲れやすさなどの自覚症状がない場合には、病的なものとは考えず治療をしない可能性もあります。

低血圧がもたらす身体への悪影響と種類

低血圧がもたらす身体への悪影響と種類

低血圧になると身体にどのような影響が現れますか?

低血圧は、全身に血液を送り出す力が弱いため、脳や身体の各臓器に送られる血液量が減少します。その結果、身体に不調を感じ、QOL(生活の質)に影響します。低血圧の症状1は、次のとおりです。

  • 立ちくらみ、めまい
  • 全身のだるさ、疲労感
  • 頭痛、頭重感
  • 肩こり
  • 動悸、息切れ
  • 吐き気、嘔吐
  • 食欲不振
  • 集中力の低下
  • 不眠
  • 手足の冷え

これらは低血圧の症状としてよくみられますが、ほかの病気も隠れているおそれもあります。気になる症状が続く場合は医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

低血圧の分類方法を教えてください

低血圧は原因によって4つの種類2.3.に分けられます。低血圧の種類は次のとおりです。

本態性低血圧(一次性低血圧) 原因となる病気はなく、体質や遺伝的な要因が関係していると考えられています。低血圧は、本態性低血圧のタイプが多く、自覚症状を伴わない場合は病気とはいえません。

症候性低血圧(二次性低血圧) 遺伝的要因以外に、病気や薬剤が原因で血圧が低下する状態です。原因となる疾患には、心臓病、内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎機能不全など)、神経疾患、重度の感染症(敗血症性ショック)、脱水、出血などがあります。また、降圧剤や利尿剤などの副作用が原因となることもあります。

起立性低血圧 普段の血圧は正常でも、急に立ちあがった際に収縮期血圧が20mmHg以上、または、拡張期血圧が10mmHg以上低下する状態を起立性低血圧といいます。4立ちあがると、重力で下半身に血液が集まりますが、通常は自律神経系が働き、血圧を維持します。しかし、調整がうまくいかないと、脳への血流が一時的に減少し、めまい、立ちくらみ、場合によっては失神の症状が起こります。

食後低血圧 食後2時間以内に収縮期血圧20mmHg以上低下する状態を食後低血圧と呼びます。5食後、食べたものを消化するために消化器系への血流が増え、脳やほかの部位への血流が減少することで起こります。特に高齢者や自律神経機能が低下している方によく見られる傾向にあります。

低血圧の種類によって症状は異なりますか?

基本的にどの種類の低血圧であっても、立ちくらみ、めまい、ふらつき、失神、だるさ、頭痛などの症状は共通してみられる傾向です。ただし、症状が引き起こされるタイミングは低血圧の種類によって変わります。

血圧が低く辛いときの対処法

血圧が低く辛いときの対処法

起立性低血圧の予防法を教えてください

起立性低血圧は、急に立ちあがったときに血圧が下がり、めまい、立ちくらみ、ひどい場合には失神などを引き起こします。 予防には、薬を使わない非薬物療法が中心となり、日常生活の工夫が必要となります。起立性低血圧の予防法は以下のとおりです。6

動作はゆっくり行う 寝ている状態や座っている状態から急に立ちあがらず、ワンクッション置いてからゆっくり動きましょう。

頭を高くして眠る 枕やクッションを使い、頭の高さを15〜25cmほど高くして寝ると、血圧の変動を緩やかにする効果が期待できます。

こまめな水分補給 脱水は血液量を減らし、低血圧を悪化させます。こまめに水分をとりましょう。

適度な塩分接種 塩分には体内に水分を保ち、血圧を維持する働きがあります。1日8g程度を目安に塩分を摂るようすすめられていますが、過剰摂取にも注意が必要です。医師に相談しすすめられた量の塩分摂取を行いましょう。

下半身の筋力トレーニング ウォーキングやスクワットで下半身の筋肉を鍛えましょう。筋肉がポンプの役割を果たし、心臓へ血液を戻します。

弾性ストッキングを着用 日中、医療用の弾性ストッキングを履くと、下半身に血液が溜まるのを防げます。

ほかの工夫 長時間の立ちっぱなしを避ける。 アルコールは血管を広げ血圧を下げるため、飲酒を控える。 熱いお風呂やシャワーは血管を拡張させるため、長湯を避ける。

本態性低血圧を改善する方法はありますか?

本態性低血圧を改善するには、生活習慣の見直しが基本となります。 体質を根本から変えるのは難しいですが、日々の工夫で症状をコントロールできる場合があります。具体的には、身体の中を流れる血液の量が減らないように、こまめな水分補給をこころがけましょう。また、ウォーキングや軽い体操など、無理のない範囲で足や全身の筋肉を動かし、血の巡りをよくしていきましょう。食事は、筋肉や血液の材料となる魚、肉、大豆製品と野菜をバランスよく取り入れ1日3食食べることが大切です。 生活習慣の見直しで症状が改善しない場合や、日常生活に支障が出る場合には、医師の診断のもと、薬物療法が検討されます。

食後低血圧の予防法を教えてください

食後低血圧は、食事の消化のために血液が胃や腸に集まり、脳へ行くはずの血液量が減ることで、食後の眠気やふらつきが起こります。特に高齢者は転んでしまう危険性もあるため、注意が必要です。食後低血圧の予防法は次のとおりです。7.8

食事の量を工夫する(一度にたくさん食べない) 食事は腹八分目を心がけ、1回の食事量を減らし、食事の回数を増やす方法もあります。

バランスのよい食事を心がける ごはん、パン、麺などの炭水化物の過剰摂取は食後の血糖値を急激にあげ、インスリンがたくさん分泌されると血圧が下がりやすくなります。タンパク質、ミネラル、ビタミンなどバランスのよい食事をとることを心がけましょう。

食前に水やカフェイン飲料を飲む 食事前にコップ1〜2杯の水を飲むと、血液量が増えます。また、コーヒーやお茶などのカフェインには血管を縮ませる作用があるため、食後低血圧の予防に役立つことがあります。

血圧を測定する 食事の前後に血圧を測り、自分の血圧の変動を知ることで自分の状態を把握できます。

血圧が低く日常生活に支障をきたしている場合は何科を受診すればよいですか?

日常生活に支障をきたすほどの低血圧でお困りの場合は、まずは内科または循環器科内科の受診をおすすめします。低血圧の背景には、心臓や血管、ホルモンなど、さまざまな原因が考えられます。もし、起立性低血圧の症状(めまい、立ちくらみなど)が強い場合には、神経内科が関連することもあります。まずは、かかりつけの内科医に相談しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

 高血圧とは異なり、低血圧には明確な基準がありません。 そのため、健康診断で血圧が低いと指摘されても、まめいやだるさなどの自覚症状がなければ体質の一つと考え、過度に心配する必要はないでしょう。 低血圧の症状を和らげるには、生活習慣を見直すことです。バランスの取れた食事や適度な運動、こまめな水分補給を心がけることで日々の健康管理につながります。 セルフケアを試みても症状が改善しない場合や、つらい症状で日常生活に支障が出ている場合は、背後に治療が必要な病気が隠れている可能性もあります。症状が続くようであれば、内科や循環器内科などを受診し、専門家への相談をおすすめします。

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