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「梅毒が進行すると鼻」が落ちてくるってホント?治療や予防法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/09/16
「梅毒が進行すると鼻」が落ちてくるってホント?治療や予防法も解説!【医師監修】
梅毒にかかると鼻が落ちるというイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。都市伝説や昔の迷信のように思えるかもしれませんが、梅毒の治療をせずに放置すると、実際に鼻の変形や組織の欠損といった深刻な症状が現れることがあります。

この記事では梅毒が進行した際にみられる鼻の変形や欠損の背景をはじめ、感染の経過や代表的な症状や治療方法、予防方法を解説します。
居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

梅毒で鼻が落ちるといわれる理由

梅毒で鼻が落ちるといわれる理由

梅毒になると鼻がなくなるというのは本当ですか?

梅毒に感染したすべての方の鼻がなくなるわけではありません。しかし、梅毒の治療をせずに放置すると、鼻がなくなってしまったように見える状態に陥ることがあります。これを鞍鼻(あんび)と呼びます。

これは梅毒の末期に見られる象徴的な症状のひとつです。 梅毒が広く蔓延していたとされる江戸時代には、梅毒といえば鼻が落ちるとするような川柳や書物の記録が多く残されています。 こうした表現が生まれた背景には、梅毒の病原体が皮膚や骨、筋肉などの組織を壊すといった特徴にあります。顔の中心にある鼻が崩れるという現象は、梅毒の深刻さを直感的に伝えるのに十分な恐ろしさがあり、風刺画や川柳などで取り上げられました。

梅毒で鼻が落ちてしまう理由を教えてください

梅毒が進行するとゴム腫と呼ばれる腫瘤が形成されます。ゴム腫はゴムのような弾力を持つ硬いしこりです。筋肉や骨、皮膚などに発生し、次第に周囲の骨や皮膚組織を破壊していきます。

鼻の内部や周囲にゴム腫ができると、鼻の皮膚や骨に慢性炎症が生じ、組織破壊が起こることがあります。。その結果、鼻の形が崩れたり欠損したりして鼻が落ちると表現されるような状態になるのです。

このような重度の症状は梅毒を長期間放置した場合に起こりえます。しかし現在では、梅毒の治療方法が確立されています。早期から治療を開始する例が多く、ゴム腫が形成されるほど病気が進行することはほとんどありません。

梅毒に感染するとどの程度の期間で鼻が落ちるのですか?

ゴム腫により鼻に深刻な症状が現れるのは、感染から約数年から数十年後の、晩期顕症梅毒と呼ばれる梅毒の末期の段階です。この病期に至るまでの期間や症状の現れ方には個人差があります。

ただし、梅毒を治療せずに放置しても、すべての患者さんの鼻に変形が生じるとは限りません。晩期梅毒で現れるゴム腫は、未治療の患者さんのうち約15%の方にみられるとされています。またゴム腫は鼻に限らず、全身さまざまな部位に発生する可能性があります。

梅毒の進行と鼻以外の症状

梅毒の進行と鼻以外の症状

梅毒は感染してからどのような経過をたどりますか?

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌により引き起こされる性感染症です。さまざまな症状が現れたり消失したりしながら進行していきます。

感染からおよそ3週間前後が経過した頃に初期症状が現れます。この時期をⅠ期顕症梅毒と呼びます。感染部位に特徴的なしこり(初期硬結)ができ、潰瘍となります。ほかには足の付け根部分のリンパ節が腫れることもありますが、どちらの症状も痛みはほとんどなく、多くは自然に消失します。

症状がおさまっている期間を潜伏期と呼びます。潜伏期には症状はほとんどありません。しかし梅毒トレポネーマは体内で静かに活動を続け、血液を通じて全身に広がっていきます。

感染から約3ヶ月経過すると、次の段階であるⅡ期顕症梅毒に移行します。Ⅱ期顕症梅毒ではバラ疹という淡く赤い色の発疹が出ることがあります。また肝臓や腎臓などの全身の臓器に症状が現れることもあります。

バラ疹は時間が経つと消失し、再び無症状の期間(潜伏期)となります。

晩期顕症梅毒は感染から約数年から数十年が経過した後に、新たな症状が現れる病期を指します。ゴム腫をはじめ、全身に重篤な症状が現れることがあり、死に至る場合もあります。

現在では、晩期顕症梅毒にまで至ることはまれです。しかし梅毒は症状が消失して治ったように見える時期もあることから油断はできません。また近年、梅毒の感染者数が急増しており、政府や各自治体からも注意喚起がなされています。

梅毒における鼻以外の症状を教えてください

梅毒は偽装の達人の異名を持つほど症状が多彩です。特に初期の段階では、ほかの疾患との区別が難しく、間違えられることもあります。

梅毒は感染の進行に伴って、皮膚、粘膜、内臓、骨、血管、神経、目、耳など全身のあらゆる部位に病変を起こします。主な症状には以下のようなものがあります。

  • 皮膚病変:しこりを伴う潰瘍、バラ疹、扁平コンジローマ、脱毛など
  • 梅毒性粘膜疹:口腔内や咽喉、性器粘膜に生ずるびらんや白斑など
  • ゴム腫:皮膚や骨、筋肉などにできる腫瘤
  • 心血管系の障害:大動脈瘤、大動脈弁不全
  • 神経梅毒(脊髄瘻):歩行障害や感覚異常、進行性麻痺、認知症状など
  • 目梅毒:視力低下やぶどう膜炎、緑内障など
  • 内耳梅毒:難聴やめまいなど

梅毒は初期の皮膚症状から始まり、放置すると心臓や脳、神経などの重要な臓器に深刻なダメージを与える可能性があります。

梅毒の治療と予防

梅毒の治療と予防

梅毒の検査方法にはどのようなものがありますか?

梅毒の検査は、血液検査梅毒抗体を測定する方法が一般的です。梅毒抗体にはRPR梅毒トレポネーマ抗体の2種類があります。 RPRは梅毒の活動性を示し、梅毒トレポネーマ抗体は感染の有無を確認するために用いられます。

近年では、RPR値が陰性でも、梅毒トレポネーマ抗体が陽性となる早期梅毒の報告例が増加しています。そのため2種の抗体を同時に測定することが推奨されています。

そのほか、皮膚や粘膜の発疹から出る体液を採取し検査する梅毒トレポネーマPCRもあります。この検査では病原体のDNAを検出し、感染の有無を確認します。

梅毒の検査は全国の医療機関や保健所などで実施しています。一部の保健所では匿名、無料での検査が可能です。

梅毒の治療法を教えてください

昔は不治の病であった梅毒ですが、1943年にペニシリンによる治療方法が確立されました。 現在でも、治療の基本はペニシリン系抗菌薬であるアモキシシリンを用います。治療期間は、病期によって異なりますが、通常は約2週間〜4週間にわたり抗菌薬の投与が行われます。最近では、ベンジルペニシリンベンザチン水和物水性懸濁筋注製剤という、筋肉注射の治療薬があります。早期梅毒においては単回投与、後期梅毒では1週間毎に3回投与して治療します。 また、もし患者さんにペニシリンのアレルギーがある場合は、ミノサイクリンスピラマイシンなどが代替薬として使用されます。

治療の効果は、血液検査でRPR値の変化を確認して判断します。治療開始からおおよそ1ヶ月後にRPR値を測定し、その後は検査間隔を徐々に空けながら経過を観察します。経過観察期間中に症状が改善し、RPR値が基準値まで低下していれば治癒とみなされます。

鼻に症状が現れる前に治療をすれば鼻は落ちませんか?

梅毒の治療を早期に開始すれば、鼻の組織の壊死や変形などの深刻な症状が生じることはありません。Ⅰ期、Ⅱ期の段階で治療を行うことで、通常は後遺症を残すことなく完治します。

ただし、治療途中で薬の服用をやめてしまったり、自己判断で通院を中断したりすると、症状が再燃、進行するおそれがあります。重症化を防ぐためには、医師の指示に従い治療を最後まで続けることが重要です。

梅毒の予防法を教えてください

梅毒は主に性的接触によって感染します。膣性交はもちろん、オーラルセックスやアナルセックスによっても感染するリスクがあります。予防の基本は、梅毒に感染している可能性のある相手との性的接触を避けることです。 性交渉の際は、コンドームの適切な使用で感染リスクを下げることができます。ただし、梅毒の病変がコンドームで覆われない場所にある場合は、完全に防ぐことはできません。 また、梅毒陽性者の血液を介して感染する可能性もあるため、他人の血液に直接触れないようにしましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ 梅毒は、早期に適切な治療を受ければ完治が可能な性感染症です。しかし、放置すれば全身に深刻な合併症を引き起こし、鼻の変形や欠損など、見た目にも大きな影響を及ぼすことがあります。

近年では感染者数が増加しており、誰にとっても感染のリスクがあります。正しい知識を身につけ、予防に努めることで感染を防ぎましょう。

この記事の監修医師