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「プール熱の原因」はご存知ですか?発症すると現れる症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/08/05
「プール熱の原因」はご存知ですか?発症すると現れる症状も解説!【医師監修】

プール熱(咽頭結膜熱 -いんとうけつまくねつ- )は、主に子どもがかかることの多いウイルス感染症です。高い発熱とのどの痛み、そして結膜炎による目の充血といった症状が特徴です。かつては夏にプールで集団感染がみられたことからプール熱と呼ばれていましたが、近年はプールそのものが原因となるケースは減っています。今回はプール熱の原因や症状のメカニズム、感染経路、感染しやすい行動、そして予防法をQ&A形式で解説します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

プール熱の原因とメカニズム

プール熱の原因とメカニズム

プール熱の原因を教えてください

プール熱の直接の原因はアデノウイルスの感染です。アデノウイルスには多くの型がありますが、特に3型・4型・7型などがプール熱(咽頭結膜熱)を引き起こしやすいことが知られています。

ウイルスに感染するとおよそ5~7日間の潜伏期を経て発症し、高熱や喉の炎症、結膜炎などの症状が現れます。プール熱は子どもに多くみられ、学齢期の子どもたちに流行しやすい傾向があります。かつてはプールでの接触やタオルの共用によって流行することがあったためプール熱と呼ばれていましたが、現在ではプール以外の場でも感染が広がっており、むしろプール利用による大規模な集団感染の報告はほとんどありません。

なぜプール熱で眼に症状が出るのですか?

プール熱にかかると目に結膜炎の症状(充血や目やに)が現れるのは、アデノウイルスが目の表面を覆う結膜に感染・炎症を起こすためです。ウイルスは結膜に侵入して増殖し、これに対する炎症反応で両目または片目が真っ赤に充血したり、涙や目やにが多く出たりします。症状はまず片方の目から始まり、その後もう片方の目にも広がることが多いです。プール熱という名前のとおり、プールの水を介して目からウイルスが入ることもありますが、現在のプールは塩素消毒が徹底されているため、水泳中に感染する危険性は以前より低くなっています。いずれにせよ、アデノウイルスは結膜で増殖しやすいため、プール熱では目の症状が顕著になるのです。

プール熱で喉が痛くなる理由を教えてください

プール熱では喉の痛み(咽頭痛)が生じます。これは、原因であるアデノウイルスが喉(咽頭)や扁桃に感染し、咽頭炎扁桃炎を起こすためです。ウイルスに感染すると喉の粘膜が炎症を起こし、赤く腫れて強い痛みを感じます。特に扁桃腺が腫れて飲み込むときに痛みを伴うことが多く、子どもは喉の痛みのために食欲が落ちたり機嫌が悪くなったりすることもあります。加えて、高熱が続くことやリンパ節の腫れも喉の違和感や痛みを増強させる一因です。

プール熱の感染経路

プール熱の感染経路

プール熱の感染経路を教えてください

プール熱は主に飛沫感染接触感染によって人から人へと移ります。飛沫感染とは、感染者の咳やくしゃみによる細かな水滴に含まれたウイルスを、周囲の方が吸い込んだり目や鼻の粘膜に受けたりして感染する経路です。接触感染とは、ウイルスが付着した手指や物を介して移る経路で、例えば感染者が触れたおもちゃやドアノブを別の方が触り、その手で目や鼻、口などを触ることでウイルスが体内に入ります。

アデノウイルスは目の結膜や上気道(鼻や喉の粘膜)から体内へ侵入することが知られており、飛沫や手指を介した接触によって結膜あるいは上気道から感染します。日常生活では、家族間や学校・保育園での集団生活のなかで、これら飛沫・接触経路を通じて広がることが多いです。

プール熱はプール施設でも感染しますか?

プール施設でも感染する可能性はあります。実際、かつてはプールでの感染例が多く報告され、プール熱という名前の由来にもなりました。プールの水にアデノウイルスが混入し、それが泳いでいる人の目に入ると、結膜からウイルスが侵入して感染を起こすと考えられています。特に十分に消毒されていないプールでは、過去にプール水を介した集団感染が発生した事例もあります。しかし現在では、多くのプールで塩素濃度など衛生管理が徹底されており、プール利用による大規模な集団感染の報告はみられなくなっています。

また、タオルの共用などプール関連の行動も見直された結果、プールそのものが感染源となるケースは減っています。とはいえ、プール熱のウイルス自体はプール以外の場でも広がるため、プール施設に限らず油断は禁物です。

プール熱に感染しやすい施設や場所を教えてください

プール熱は飛沫・接触感染するため、人が集まって触れ合う場所であればどこでも感染が広がる可能性があります。特に幼稚園・保育園小学校など、幼児や児童が集団生活を送る施設では流行が起こりやすいです。

実際、咽頭結膜熱の患者さんのおよそ6割は5歳以下の小児が占めており、保育園など幼い子どもが集まる場で感染が広がりやすいことが示唆されています。また、家庭内で兄弟姉妹や親子間で移るケースも多くみられます。さらに、病院の小児病棟や子ども同士が長時間過ごす習い事やキャンプなどでも、一人の感染者から飛沫や接触で広がり小規模な集団感染もあります。季節によっては屋内の児童館や遊び場などで広がることもあり、人と人との距離が近く物の共用が起こりやすい環境では注意が必要です。

プール熱はいつ流行しますか?

プール熱は夏場に流行しやすい感染症です。例年、初夏の6月頃から患者報告数が増え始め、7月~8月にかけて流行のピークを迎える傾向があります。夏休みの時期に子ども同士の接触が増えることや、ウイルスが高温多湿の環境で活発になることが一因と考えられています。ただし、アデノウイルスは季節を問わず一年中散発的に見られるウイルスでもあります。冬場にも小規模な流行が起こることがあり、必ずしも夏だけの病気とは限りません。とはいえ、大規模な流行はやはり夏季に集中するため、特に夏場は注意が必要です。流行期には手洗いやうがいの徹底、タオルの共有を避けるなど予防策をより一層心がけるようにしましょう。

プール熱に感染リスクが高い行動と予防法

プール熱に感染リスクが高い行動と予防法

プール熱への感染リスクが高い行動を教えてください

プール熱に感染しやすくなる高リスクの行動としては、ウイルスをもらいやすい状況を自ら作ってしまうような行為が挙げられます。具体的には、感染者に近い距離で長時間過ごすことはリスクが高いです。咳やくしゃみの飛沫は1~2m程度飛ぶため、遊んでいる子ども同士が密接に接触しているとウイルスが飛び移りやすくなります。また、タオルやハンカチの共用、おもちゃの回し使いなどウイルスが付着した可能性のある物品を共有する行為も危険です。特に目やにのついたタオルで顔を拭いてしまう、感染した子の触った手で自分の目や鼻をこする、といった行動はウイルスが体内に入り込みやすいため注意が必要です。

さらに、不特定多数の子どもが触れる場所で手洗いをせずに飲食したり、目鼻を触ったりすることもリスクを高めます。プールに関連していえば、プールから上がった後にシャワーを浴びずに放置するのも衛生上望ましくありません。また、適切に塩素消毒されていないプールで遊ぶことも感染リスクになります。つまり、ウイルスを体内に取り込むような行為(顔に触れる、物を共有する、近距離で大声を出すなど)や、ウイルスを落とさない不衛生な行為(手を洗わない、シャワーで流さないなど)が重なると感染リスクが高まります。

プール熱を予防する方法はありますか?

プール熱に有効なワクチンは残念ながら存在しません。しかし、日頃からの工夫で感染リスクを下げることは可能です。予防の基本は手洗いとうがいの徹底です。帰宅時や食事前、トイレの後、咳やくしゃみの後などには石けんと流水でしっかり手を洗いましょう。

小さいお子さんには保護者が手洗いを促し、場合によっては一緒に洗ってあげることが大切です。また、密接な接触を避けることも重要です。プール熱が流行している時期や園・学校で感染者が出ている場合、なるべく子ども同士の濃厚接触を控えさせるようにしましょう。タオルやコップ、おもちゃなどの共用を避けることも有効です。特に顔を拭くタオルは一人一枚ずつ使い回さないよう徹底します。家庭内ではドアノブやおもちゃを次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤など)で拭くといった環境の消毒も有効ですが、まずは手洗いの励行が何よりの予防になります。さらに、プール利用時にはプールから上がった後にシャワーを浴びて身体を清潔にする習慣もつけましょう。このような習慣を徹底することで、プール熱にかかりにくい状態になります。

編集部まとめ

編集部まとめ

プール熱は、アデノウイルス感染が原因の夏に多い病気です。高熱、喉の痛み、そして結膜炎による目の充血といった症状が現れますが、症状は通常3~5日程度で治まり、ほとんどの場合は自然に回復します。かつてはプールで感染が広がる印象が強かったものの、実際には日常生活のなかで飛沫や接触を通じて広がることが多く、プールに限らず注意が必要です。特に幼い子どもが集団で生活する場では感染が起こりやすいです。夏場の流行シーズンには手洗いや咳エチケットの徹底、タオルの共用を避けるなどの予防策で家族を守りましょう。

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