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「ヘルパンギーナと手足口病」の症状とその違いとは?発症しやすい年齢層も解説!

 公開日:2025/08/07
「ヘルパンギーナと手足口病」の症状とその違いとは?発症しやすい年齢層も解説!
暑い季節になると、子どもが突然高熱を出し、のどが痛い、食べない、発疹が出るなどといった症状が発生し、驚き、戸惑うこともあるのではないでしょうか。そんなときによく聞かれるのが、ヘルパンギーナや手足口病といった夏の代表的な感染症です。

これらは症状がよく似ており、家庭では見分けがつきにくい一方で、強い感染力があり、まわりの子どもたちや家族に広がる可能性もあります。

この記事では、ヘルパンギーナと手足口病それぞれの症状や違い、感染経路、判断のポイント、治療方法、そして受診の目安まで、医学的な知見に基づいてわかりやすく解説していきます。
居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

ヘルパンギーナと手足口病の症状とその違い

ヘルパンギーナと手足口病の症状とその違い

ヘルパンギーナとはどのような病気ですか?

ヘルパンギーナは、初夏から夏にかけて乳幼児を中心に流行するウイルス性の感染症です。突然38〜40度の高熱が出ることが多く、のどの奥に小さな水ぶくれ(小水疱)ができて、破れると強い痛みを伴います。この痛みによって、水分や食事を嫌がるお子さんも少なくありません。

主な原因は、コクサッキーウイルスA群をはじめとするエンテロウイルス属に属するウイルスです。日本では5月頃から流行が始まり、7月頃にかけて流行します。多くは1〜3日程度で自然に回復しますが、のどの痛みが強く、水分摂取が不十分な場合は脱水につながることがあるため注意が必要です。

手足口病の概要を教えてください

手足口病も、ヘルパンギーナと同じくエンテロウイルス属のウイルスによって引き起こされ、夏に流行する感染症です。代表的な原因ウイルスは、コクサッキーウイルスA16型やエンテロウイルス71型などです。

主な症状は、お口の中(くちびるの裏や頬の内側など)、手のひら、足の裏などにできる小さな水ぶくれです。発熱は約1/3にみられますが、高熱は少なく、微熱または熱が出ないこともあります。手足口病を発症するお子さんの年齢は4歳以下に多く、軽い風邪のような症状で終わることがほとんどです。通常は3〜7日ほどで改善します。

ヘルパンギーナと手足口病の似ている症状を教えてください

どちらの病気も、ウイルスによる夏季の感染症であり、お口の中に水ぶくれができる、食欲が落ちる、水分をとりにくくなるといった症状が共通しています。また、保育園や幼稚園などで集団感染しやすく、ほとんど発症から7日以内に改善する点も似ています。

ヘルパンギーナと手足口病の症状はどう違いますか?

ヘルパンギーナと手足口病は、どちらも夏に流行しやすいウイルス感染症ですが、症状のあらわれ方にはいくつか違いがあります。ヘルパンギーナでは、38〜40度前後の高熱が突然出ることが多く、のどの奥に小さな水ぶくれができるのが特徴です。これが破れて強い痛みを生じることで、水分を嫌がるようになり、脱水になる可能性が高くなります。

一方、手足口病は発熱しても微熱であることが多く、のどの奥ではなくお口の前方(くちびるの裏や頬の内側)や、手のひら、足の裏など複数の部位に水ぶくれが現れるのが特徴です。のどの痛みは軽く、全体的な症状も軽めに経過する傾向があります。

ヘルパンギーナと手足口病の原因と感染経路

ヘルパンギーナと手足口病の原因と感染経路

ヘルパンギーナと手足口病に感染しやすい年齢を教えてください

どちらの病気も、主に5歳以下の乳幼児に多くみられる、夏に流行しやすい感染症です。特に1歳前後の子どもで感染が目立ちます。

ただし、年齢に関係なく誰でも感染する可能性があります。免疫が十分に備わっていない小学生や大人でもかかることがあり、手足口病においては、大人が感染して強い症状が出ることもあるため注意が必要です。

ヘルパンギーナと手足口病の原因を教えてください

いずれもエンテロウイルス属に分類されるウイルスが原因となる感染症です。ただし、関与するウイルスの型に違いがあります。

ヘルパンギーナ コクサッキーウイルスA群(CA2〜CA6、CA10など)が主な原因です。お口の奥の粘膜に感染し、炎症や小さな潰瘍を引き起こします。

手足口病 主にコクサッキーウイルスA16型や、エンテロウイルス71型(EV71)などが原因です。EV71型はまれに脳炎など重い合併症を起こすことがあり、特に注意が必要とされています。

ヘルパンギーナと手足口病の感染経路はどのように違いますか?

ヘルパンギーナと手足口病は、どちらもウイルスによる感染症であり、感染経路に大きな違いはありません。いずれも、以下のような経路で人から人へ感染することがわかっています。

  • 飛沫感染:咳やくしゃみのしぶきを通じてウイルスを吸い込む。
  • 接触感染:ウイルスがついた手やおもちゃ、食器などに触れ、その手でお口や鼻に触れることで感染する。
  • 糞口感染:排泄物にふれた手指を介してウイルスがお口に入る。

特にウイルスは便中に2〜4週間ほど残ることがあるため、症状が治まった後も排泄物を介して感染してしまう場合があります。そのため、オムツ交換後の手洗いや便の適切な処理、タオルの使い分けを徹底しましょう。

ヘルパンギーナと手足口病の流行時期に違いがありますか?

どちらの病気も夏に流行する代表的なウイルス感染症ですが、流行の時期にはやや違いがあります。いずれも気温と湿度が高くなる時期に感染が広がりやすいため、夏が近づいてきたら感染予防への意識を高めておくことが重要です。

ヘルパンギーナ 例年、5月頃から流行が始まり、7月頃に流行を迎えます。8月以降は減少し、9〜10月にはほとんどみられなくなります。

手足口病 7月下旬頃に流行を迎えますが、年によっては9〜10月まで流行が続くこともあります。

ヘルパンギーナと手足口病の見分け方と治療法

ヘルパンギーナと手足口病の見分け方と治療法

ヘルパンギーナと手足口病を見分ける方法を教えてください

どちらの病気も、発熱やお口の中の水ぶくれなど、症状がよく似ているため、家庭での判断は難しいことがあります。ただし、いくつかの特徴を知っておくと、見分ける手がかりになります。

例えば、突然の高熱と、のどの奥の強い痛みがある場合は、ヘルパンギーナの可能性が高いと考えられます。一方で、発熱があっても微熱程度にとどまり、お口の前方や手のひら、足の裏など複数の場所に水ぶくれや発疹が出る場合は、手足口病が疑われます。

ただし、実際には区別するのが難しい場合も少なくありません。いつもと違うなどと感じたときは、医療機関を受診しましょう。

ヘルパンギーナと手足口病のどちらか判断に迷ったときは受診してもよいですか?

どちらの病気であっても、受診して問題はありません。特に以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 発熱が続いている
  • 水分や食事をほとんど受け付けない
  • 嘔吐を何度も繰り返している
  • けいれんや意識がぼんやりするなどの症状がある
こうした症状がない場合でも、「元気がなくて心配」、「何かいつもと違う気がする」など、気になる症状があれば自己判断せず、医師へ相談しましょう。

ヘルパンギーナと手足口病の治療法を教えてください

ヘルパンギーナや手足口病には、現在のところウイルスそのものに効く特効薬はありません。そのため、治療の基本は症状を和らげながら自然に改善を待つ対症療法となります。

具体的には、発熱がつらい場合は解熱薬、のどの痛みや口内炎が強いときには塗り薬や鎮痛薬が処方されることもあります。そのなかで重要なのは脱水を防ぐことです。

のどの痛みで飲み物を嫌がる場合には、ゼリー状の飲料や、冷たく刺激の少ない水分を少量ずつ複数回に分けて与えるようにしましょう。食事を無理にとらせる必要はありませんが、水分が数日間ほとんどとれない、ぐったりしているといった場合には、点滴などの医療的な対応が必要になることもあります。

編集部まとめ

編集部まとめ  ヘルパンギーナと手足口病は、いずれも夏に乳幼児を中心に流行するウイルス感染症で、どちらも高熱やお口内の水ぶくれ、食欲不振などの症状がみられることから、ご家庭での見分けが難しい場合があります。

高熱とのどの奥の痛みが強ければヘルパンギーナ、微熱程度で手足やお口の周りに発疹が見られる場合は手足口病の可能性が高いとされます。どちらも多くは7日以内で自然に改善しますが、水分がとれない、ぐったりしているなどの場合は早めに医療機関を受診しましょう。

また、これらの感染症は、咳やくしゃみ、手指や排泄物を介してうつるため、日頃からの丁寧な手洗いや咳エチケット、オムツ交換後の衛生管理が重要です。夏の流行期には感染状況にも注意を払い、子どもの小さな体調の変化にいち早く気付けるよう心がけましょう。

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