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「子どもが熱中症」になったらどんな症状が現れるかご存知ですか?対処法も解説!

 公開日:2025/08/14
「子どもが熱中症」になったらどんな症状が現れるかご存知ですか?対処法も解説!
毎年夏になると、子どもの熱中症に関するニュースが後を絶ちません。消防庁の統計によると、熱中症で救急搬送される方のうち、子ども(新生児、乳幼児、少年)が占める割合は決して少なくなく全体の約1割にものぼります。特に、その半数近くは未就学児が占めることもあり、注意が必要です。

子どもは小さな大人ではありません。体温調節機能が未熟であることに加え、身長が低く地面からの照り返しの影響を強く受けるなど、大人とは異なる特有のリスクにさらされています。さらに、近年の気候変動により、日本の夏の平均気温は上昇傾向にあり、猛暑日(最高気温35度以上)の日数も増加しています。この環境の変化は、子どもたちの熱中症リスクを一層高める要因となっています。

しかし、熱中症は正しい知識を持って適切に対応すれば、予防できる病気です。万が一発症してしまっても、早期に発見し、正しい応急処置を行うことで重症化を防ぐことができます。本記事では、子どもの熱中症の症状の見分け方から、具体的な対処法、そして家庭で実践できる予防策まで、Q&A形式で網羅的に解説します。
高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

子どもの熱中症の症状について

子どもの熱中症の症状について

子どもの熱中症はどのような症状が現れますか?

熱中症の症状は、その重症度によって異なります。保護者の方が救急要請する際に呼びかけてもほとんど反応がない、身体が火のように熱いといった状況を伝えることが、救急隊の迅速な対応につながります。現場では、体温計がなくても明らかに熱感があり、意識レベルが著しく低い状態であれば、重症と判断して対応が開始されます。重症度に応じて以下のような症状があらわれます。

  • めまい・立ちくらみ・顔色の変化
  • 筋肉の痛みやけいれん、大量の汗
  • 頭痛・吐き気・強いだるさ
  • 意識がぼんやりする、ぐったりして反応が遅い
  • けいれん、呼吸が速い、発汗が止まる(重症)

子どもが熱中症かどうかを判断する基準を教えてください

早期発見のために以下のような症状に注意してください。

  • 腋の下で37.5度、耳式で38度以上の発熱
  • 6時間以上尿が出ない、または母乳・水分を拒否
  • 呼びかけに対する返事が遅い、泣き方が弱い
  • WBGT(暑さ指数)が28度以上の日に上記症状がある

まだ話せない子どもが熱中症かどうかを判断することはできますか?

言葉で不調を訴えられない乳幼児の熱中症は、周囲の大人がいかに早くいつもと違うサインに気付けるかにかかっています。以下の観察ポイントを参考に、注意深く様子を見てあげてください。

機嫌・行動の変化
  • いつもより機嫌が悪く、ぐずって泣きやまない
  • 逆に、急に静かになり、ぐったりして活気がない
  • 泣き声が弱々しい、または甲高い声で泣く

授乳・哺乳の様子
  • 母乳やミルクを欲しがらない
  • もしくは、異常に水分を欲しがる

おしっこの状態(客観的な重要サイン)
  • おむつが長時間濡れていない(目安として6時間以上)
  • おしっこの色がいつもより濃い、または量が少ない

皮膚・体温の状態
  • 顔が赤くほてっている
  • 身体、特に首の後ろや背中を触るととても熱い
  • 唇がカサカサに乾いている
  • たくさん汗をかいている、あるいは逆に重症化して汗が出なくなり皮膚が乾いている

これらのサインが複数当てはまる場合は、熱中症の可能性があります。すぐに涼しい場所へ移動させ、身体を冷やし、水分補給を行うなどの応急処置を開始してください。

子どもが熱中症になったときの対処法

子どもが熱中症になったときの対処法

熱中症が疑われるときにまずやるべきことを教えてください

子どもに熱中症の疑いがあるときは、ためらわずに、迅速に応急処置を開始することが重症化を防ぐ鍵となります。涼しい場所へ移動、身体を冷やす、水分・塩分補給の3つを基本として、落ち着いて行動しましょう。

子どもの熱中症ですぐに受診した方がよい症状はありますか?

以下のレッドフラッグ(危険な兆候)が見られる場合は、命に関わる危険な状態である可能性が高いため、応急処置を続けながら、病院の受診を考えてください。

  • けいれん、意識がもうろう、呼吸が弱いまたは速い
  • 何度も吐いて水分が取れない
  • 38.5度以上の発熱が冷却で下がらない
  • 汗が出なくなり皮膚が乾燥している

子どもが熱中症と診断された際に自宅で気を付けることを教えてください

医療機関で熱中症と診断され、帰宅を許可された後も、油断は禁物です。身体はまだ回復の途上にあり、体温調節機能が不安定な状態が続いています。再発を防ぎ、完全に回復するために、少なくとも48時間は以下の点に注意して過ごさせてください。

  • 発熱・倦怠感がなくなるまで外遊びと運動を48時間控える
  • 室温26度前後、湿度50~60%を保ちこまめに休ませる
  • 経口補水液を体重1kg当たり1日60mL程度、数回に分けて与える
  • 夜間も2〜3時間ごとに様子を確認し、悪化時は再受診する

熱中症の子どもにはどのような飲み物や食べ物がよいですか?

熱中症からの回復期には、失われた水分と電解質(特にナトリウム)を効率よく補給することが最も重要です。また、体力の回復を助ける消化のよい食事も心がけましょう。

  • 経口補水液(ナトリウム40~60mEq/リットル)
  • イオン飲料(子ども用の薄めタイプ)
  • みそ汁、スープ、バナナやスイカなど水分とミネラルを含む食品
  • カフェイン飲料や糖分の多い炭酸飲料は避ける

子どもの熱中症を予防する方法

子どもの熱中症を予防する方法

どの程度の気温になったら子どもの熱中症リスクが高まりますか?

熱中症のリスクを判断するうえで、気温だけを見るのでは不十分です。重要なのは、気温、湿度、日差し(輻射熱)を総合的に評価した暑さ指数(WBGT: Wet Bulb Globe Temperature)です。この指数を日常生活に取り入れることが、子どもを熱中症から守るための第一歩となります。

暑さ指数は、人体と外気との熱のやりとりに着目した指標で、熱中症の危険度を客観的に示します。気温が同じでも、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温が下がりません。WBGTはこうした湿度の影響を大きく反映するため、実際の体感に近い危険度を示してくれます。

WBGTは、環境省の「熱中症予防情報サイト」や、同省のLINE公式アカウント、民間の天気予報アプリなどで簡単に確認できます。外出前や活動前には、必ずチェックする習慣をつけましょう。WBGT28度で警戒、31度で厳重警戒、33度以上で原則屋外活動中止です。

子どもの熱中症予防に役立つ服装を教えてください

服装の工夫は、手軽にできる効果的な熱中症対策です。熱を吸収しない、熱を逃がすという2つのポイントを意識して選びましょう。以下のような服装がおすすめです。

  • 吸湿速乾素材で淡い色のTシャツと短パン
  • 首筋を覆う日よけ付き帽子
  • ベビーカーでは日除けシェードと携帯ファンを併用する

子どもが熱中症にならないために食生活で気を付けることはありますか?

日々の食事は、暑さに負けない身体を作るための基本です。水分補給はもちろん、汗で失われるミネラルを意識的に摂取することが大切です。睡眠中に失われた水分と塩分を補給するため、朝食は抜かずに食べさせましょう。食事と一緒に、コップ1杯の水やお茶、牛乳などを飲む習慣をつけるとよいです。朝食時にみそ汁やスープを加えるのも、手軽に水分と塩分を補給できるよい方法です。1日3回の食事で、バランスよく栄養を摂ることが夏バテを防ぎ、熱中症に強い身体を作ります。特に、汗で失われやすいカリウムやマグネシウムを意識して摂りましょう。

子どもが外遊びやスポーツをするときの注意点を教えてください

子どもたちが安全に楽しく活動するためには、事前の準備と活動中の管理が不可欠です。特に暑熱順化と計画的な水分補給が重要なキーワードとなります。 「暑熱順化(しょねつじゅんか)」とは、身体を徐々に暑さに慣らしていくことです。暑い環境で適度な運動を続けると、身体は汗をかきやすくなったり、皮膚の血流量を増やして熱を逃がしやすくしたりと、効率的に体温を調節できるようになります。この適応には数日から2週間ほどかかります。

梅雨明けの急に暑くなる時期は、身体がまだ暑さに慣れていないため、熱中症が最も起こりやすいタイミングです。本格的な夏が来る前から、計画的に暑熱順化を進めましょう。 のどが渇いてから飲むのでは遅すぎます。特に活動中は、時間を決めて計画的に水分と塩分を補給させることが事故防止につながります。

編集部まとめ

編集部まとめ

子どもは体温調節機能が未熟なため、大人では問題ないような環境でも、短時間で熱中症を発症し、急速に悪化することがあります。顔色や機嫌、汗のかき方など、いつもと違うというサインを見逃さないことが、重症化を防ぐ第一歩です。 熱中症は、もはや特別な気象条件下で起こるものではなく、夏の日常生活に潜む身近な危険です。家庭、学校、そして地域社会が連携し、正しい知識を持って子どもたちの健康を守っていくことが、今、私たち大人に求められています。

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