「熱中症で腹痛」を感じる原因とは?食べていいもの・避けた方がいい食べものも解説!

夏の厳しい暑さのなかでは熱中症が起こりやすいです。めまいや頭痛、こむら返りといった症状はよく知られていますが、腹痛もまた見過ごすことのできない重要なサインの一つです。近年の研究では、熱中症が単なる脱水や体温上昇だけでなく、内臓、特に腸に深刻な影響を及ぼすことがわかってきました。総務省消防庁の統計によれば、熱中症による救急搬送は後を絶たず、その発生場所は屋外だけでなく、住宅など屋内も多数を占めています。これは、誰にとっても熱中症が身近な危険であることを示しています。
熱中症による腹痛は、軽度の熱けいれんから、重症化の引き金となる腸管バリアの破綻まで、さまざまな病態を反映しています。この腹痛という症状を正しく理解することは、熱中症の重症度を判断し、適切な対応をとるために大変重要です。
この記事では、なぜ熱中症で腹痛が起こるのか、そのメカニズムと痛みの種類、重症度の見極め方と対処法を詳しく解説します。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
目次 -INDEX-
熱中症による腹痛の特徴とほかの腹痛との違い

熱中症で腹痛になることはありますか?
熱中症による腹痛の特徴を教えてください
- 差し込むような強いけいれん性の痛み
- 腹直筋が硬くなり触れると痛む
- 大量発汗後に水だけを飲んだ直後に起こりやすい
腸が血流不足・酸素不足に陥ると、腸の粘膜がダメージを受け、機能が低下します。これにより、お腹全体の鈍い痛みや張っている感じ(膨満感)、さらには吐き気や下痢(ときには血が混じることもあります)といった症状が現れます。この状態は、虚血性腸炎に似た病態と考えられています。
鈍い腹痛や消化器症状は、内臓機能に影響が出始めているサインであり、熱中症の重症度分類ではII度以上への進行を示唆する危険な兆候です。
熱中症の腹痛とほかの腹痛はどう違いますか?
まずは環境です。高温多湿の環境に長時間いたか、炎天下でのスポーツや労働など、激しい運動を行っていたかが重要です。
次に随伴症状です。腹痛のほかに、めまい、立ちくらみ、大量の発汗(または逆に汗が出ない)、ズキズキする頭痛、強い倦怠感、吐き気、手足のしびれなど、熱中症に典型的な症状があるかを確認します。
これらの状況や全身症状がなく、腹痛や下痢・嘔吐が主な症状である場合は、ウイルス性胃腸炎などの可能性も考えられます。しかし、暑い環境下で体調不良になったときは、まず熱中症を疑って対処を始めることが重要です。
熱中症の際に現れる腹痛以外の症状を教えてください
軽症(I度)
- めまい、立ちくらみ(失神)
- 筋肉痛、手足や腹部の筋肉のけいれん(こむら返り)
- 大量の発汗
中等症(II度)
- 頭痛、吐き気、嘔吐
- 全身の倦怠感、力が入らない感じ(虚脱感)
- 集中力や判断力の低下
重症(III度・IV度)
- 意識がない、呼びかけへの反応がおかしい
- けいれん発作
- まっすぐ歩けない、身体がガクガクする
- 体温が大変高い(触ると熱い)
熱中症で腹痛になるメカニズムと熱中症の重症度

熱中症でお腹が痛くなるのはなぜですか?
- 発汗によりNa⁺が不足し、腹筋がけいれんする
- 皮膚冷却のため血液が体表に集まり腸管血流が低下、虚血で鈍い痛みや下痢が起こる
- 高体温が腸管バリアを壊し、毒素が血中へ漏れ全身炎症を促進する
腹痛が生じた場合の熱中症の程度を教えてください
差し込むような鋭い腹痛(熱けいれん)のみの場合
I度の可能性が高いです。まずは現場での応急手当を行い、症状が改善すれば様子をみてもよいでしょう。
お腹全体の鈍い痛みや下痢、吐き気がある場合
II度以上の可能性があります。内臓への血流低下が疑われるため、医療機関の受診を検討すべきです。
激しい腹痛や腹部膨満感があり、かつ意識がおかしい場合
III度またはIV度という大変危険な状態です。腸管バリアの破綻から多臓器不全へ移行している可能性があります。ためらわずに救急車を呼び、到着を待つ間も身体を冷やし続けてください。
熱中症による腹痛への対処法

熱中症でお腹が痛いときはどうすればよいですか?
熱中症でお腹が痛いときに飲んでよいもの、食べてよいものを教えてください
推奨されるもの
- 経口補水液(Na⁺40–60 mEq/リットル)
- スポーツドリンク
- 冷たいみそ汁や梅干し入り麦茶
- バナナや塩むすび
避けた方がよいもの
- アルコールやカフェイン飲料(利尿で脱水を悪化)
- 糖分の多い炭酸飲料をがぶ飲み(胃での水分吸収を遅らせることがある)
熱中症による腹痛で受診する目安はありますか?
救急受診を考える危険なサイン
- 意識がおかしい
- 自分でまったく水分が摂れない
- 応急手当をしても症状が改善しない、または悪化する
- 全身のけいれんがある
これらのサインは、中等症(II度)から重症(III度・IV度)へ移行している可能性を示しており、専門的な治療が必要な可能性があります。
熱中症の腹痛に対して病院ではどのような治療を行いますか?
優先される迅速な体表冷却(Active Cooling)
重症熱中症の治療で重要なのは、一刻も早く深部体温を下げることです。ガイドラインでは、あらゆる手段を用いて積極的に身体を冷やすActive Coolingを優先するよう強く推奨しています。
具体的な方法としては、冷水に身体を浸す冷水浸漬法(アイスバス)が冷却効率が高いとされています。そのほか、全身に霧状の水を吹きかけてファンで風を送る蒸散冷却法や、冷却機能のある特殊なブランケットやパッドを使用する方法があります。
脱水と電解質異常を是正する輸液療法
経口での水分補給が困難な場合や、重度の脱水がみられる場合は、点滴(静脈内輸液)を行います。これにより、水分と不足したナトリウムなどの電解質を迅速かつに補給し、循環する血液量を安定させます。
多臓器不全を防ぐための集中治療
III度やIV度の重症例では、体温を下げると同時に、全身で起きている合併症の管理を行います。エンドトキシンの侵入によって引き起こされた過剰な炎症反応は、腎臓や肝臓の機能障害、血液凝固異常(DIC)など、生命を脅かすさまざまな問題を引き起こします。
編集部まとめ

夏の暑さは避けられませんが、正しい知識を持つことで熱中症の危険から身を守ることは可能です。ご自身や周りの方の体調変化に気を配り、万が一のときにはこの記事で解説した知識を役立て、快適な夏をお過ごしください。




