目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「熱中症の治療法」はご存知ですか?軽度・重症度それぞれの治療法も解説!

「熱中症の治療法」はご存知ですか?軽度・重症度それぞれの治療法も解説!

 公開日:2025/08/03
「熱中症の治療法」はご存知ですか?軽度・重症度それぞれの治療法も解説!

暑い季節になると増加する熱中症は、重症化すると命に関わることのある危険な病気です。軽症では症状がわかりにくいことがあり、重症化すると意識障害を来すため、自分で判断することが難しい場合があります。軽症の段階で対処できれば、重症化のリスクを減らすことができます。本記事では、熱中症の現場での対処法から病院での検査と治療法、自宅での対処法まで詳しく解説します。

江口 瑠衣子

監修医師
江口 瑠衣子(医師)

プロフィールをもっと見る
2009年長崎大学医学部卒業。大学病院での初期臨床研修終了後、10年以上にわたり地域の基幹病院で腎臓内科の診療に従事。患者さん一人ひとりに寄り添った医療を心がけており、現在は内科・精神科の診療を行っている。腎臓専門医。総合内科専門医。

熱中症が疑われるときの現場での対処法

熱中症が疑われるときの現場での対処法

熱中症かどうかを自分で判断する基準を教えてください

屋外の炎天下や蒸し暑い室内などの環境で、以下のような症状が現れたら熱中症を疑います。

  • めまい、立ちくらみ
  • 生あくび
  • 多量の発汗
  • 筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)

これらは熱中症のなかでは最も軽症の症状です。熱中症の病状が進むと頭痛、吐き気や嘔吐、全身倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下などが出現します。こういった症状がみられる場合は熱中症と考え、速やかに対処しましょう。熱中症はさらに進行すると、意識がもうろうとする、今いる場所や時間がわからないなど意識障害を来します。熱中症は病状が進むと自分で判断することのできない状態になるため注意が必要です。

熱中症が疑われるときはどうすればよいですか?

熱中症が疑われたら、すぐに風通しのよい日陰や、涼しい場所へ避難します。可能であればクーラーの効いた室内が望ましいとされています。安静にし、衣服を緩めて身体を冷やします。具体的には皮膚を濡らしてうちわで扇ぐ、扇風機の風を当てる、氷やアイスパックなどで冷やすなどです。同時に水分と塩分を補給します。

重症の場合は、救急車をすぐに呼び、現場で速やかに身体を冷やし始めることが大切です。重症化している場合は、自分で対応することができなくなっている可能性が高く、周囲の方が速やかに対処する必要があります。

熱中症の病院での検査と治療法

熱中症の病院での検査と治療法

病院では熱中症を診断するためにどのような検査を行いますか?

病院では熱中症と診断するために、まずは意識レベルを速やかに評価し、なるべく早く深部体温を測定します。深部体温とは、直腸、膀胱、血液、鼓膜などで測る身体の中心の温度です。そして、血液検査、尿量の確認、尿検査、画像検査などが行われることがあります。特に、肝臓や腎臓の機能が悪くなっていないか、DICと呼ばれる状態がないかを評価することが重要とされています。

DICとは播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群のことで、小さな血の塊(血栓)が全身の血管のさまざまな場所にできて細い血管を詰まらせ、さらにこの血栓ができることで出血しやすくなる状態を指します。血液が固まる作用と、出血しやすくなる状態が同時に存在するため治療がたいへん難しい病態です。

熱中症の診断基準を教えてください

熱中症の診断は、環境、症状、経過などから行われます。気温や湿度が高い、風が弱い、日差しが強いなどの環境下にいた方が、体調不良を訴えた場合は常に熱中症を疑う必要があります。そして、ほかの感染症や甲状腺の病気など原因となりうる病気を除外した場合に診断されます。

さらに、症状に応じて重症度が定められており、Ⅰ~Ⅳ度に分類されます。Ⅰ度はめまい、立ちくらみ、生あくび、多量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)などの症状がみられます。Ⅱ度では、頭痛、吐き気や嘔吐、全身倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下などが出現します。熱中症がさらに進行すると、重症度分類のⅢ度となり、意識障害、けいれん発作、手足の運動障害、ふらつきや手足のふるえ、まっすぐ歩けないなどの症状がみられるようになります。そして、最も重症のIV度では深部体温が40度以上に上がり、意識がほとんどない状態となります。

病院では軽度の熱中症をどのように治療しますか?

軽度の熱中症では、病院でも全身を冷やしながら塩分と水分補給する治療を行います。涼しい環境で安静を保ち、衣服を緩めて身体を冷却しつつ、意識がはっきりしている場合は経口補水液や食塩水を摂取します。経口摂取が難しい場合には点滴が行われます。また、血液検査で電解質などに異常な所見があれば、それを補正する治療も行われます。ナトリウムなどの異常であれば点滴で補正されることがあります。ただし個々の症例に応じて、医師が適切な治療方法を選択します。

病院での重度熱中症に対する治療法を教えてください

重症の熱中症では、まずはできるだけ早く深部体温を下げる必要があるため、Active Coolingと呼ばれる積極的に身体を冷却する治療を開始します。これは、患者さんの身体を外側から、あるいは体内から積極的に冷却する方法をまとめた総称です。具体的には、氷水浴、蒸散冷却、水冷式のゲルパッド、冷却ブランケットなどを用いる方法があります。同時に脱水に対する点滴も行われます。重症例ではActive Coolingを含めた集学的治療が必要であり、呼吸の状態、血圧などの循環動態、肝臓や腎臓などの臓器の障害、DICの状況に応じてそれぞれに対する治療が行われます。

熱中症になったときの自宅での対処法

熱中症になったときの自宅での対処法

熱中症が疑われるとき、診断されるときに推奨される室温を教えてください

熱中症が疑われるとき、診断されるときに、ガイドラインなどで明確な室温の目標値は設定されていません。熱中症を防ぐための指標として、環境省は28度を目安としています。これは冷房の設定温度が28度ではなく室温が28度とされています。熱中症が疑われる、もしくは診断されるときには少なくとも室温28度を目指しましょう。

熱中症と診断されたときは入浴しない方がよいですか?

熱中症と診断されたときは、入浴は控えた方がよいでしょう。浴室は高温多湿で風もない環境であり、室内で熱中症が起こりやすい場所として挙げられます。可能な限り診断されたときは入浴を避け、体調が戻ってから入浴するようにしましょう。

熱中症の際におすすめの飲み物を教えてください

熱中症の際におすすめの飲み物は、経口補水液やスポーツドリンク、食塩水です。汗で失った塩分も補うために、水分のみではなく塩分などの電解質も含まれた飲み物が適しています。まず推奨されるのが経口補水液で、ナトリウムとブドウ糖が適量配合されており、熱中症の際に有効です。食塩水は、水1リットルに1~2gの食塩を入れた0.1~0.2%の食塩水が適しているとされています。

熱中症と診断されたら何日程度で普段の生活に戻れますか?

熱中症と診断されてから回復に要する期間は、重症度や経過によって異なります。軽度の熱中症で経過が問題なく症状がなければ、治療が終了した翌日から普段の生活に戻ることができる場合もあります。翌日に普段どおり食事や水分の摂取ができ、特に症状がなければ普段どおりの生活を行ってもよいとされています。ただし、吐き気や倦怠感など症状が残る場合無理をせず安静を続け、改善がなければ医療機関に相談しましょう。

一方、症状が重い場合は、回復に時間がかかる場合があります。重度の熱中症の方は命に関わる可能性があり、治療自体も長期化する可能性があります。重症の場合は回復に数日から数週間かかることもあるとされており、退院後も水分、塩分摂取を心がけながら十分な休養を取りましょう。また、重症度に関わらず後遺症が残ることがあります。

編集部まとめ

編集部まとめ

熱中症は重症度によって、症状や経過がさまざまです。予防が可能なこともある一方、重症化すると命に関わります。早期の発見と迅速で適切な対応が重要です。軽症の場合は、病院でなくとも対処できることがあります。正しい知識を持ち、早期発見、早期対応を心がけることで、健康な夏を過ごしましょう。

この記事の監修医師