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「熱中症で発熱」する原因はご存知ですか?いつまで発熱が続くかも解説!【医師監修】

 公開日:2025/08/19
「熱中症で発熱」する原因はご存知ですか?いつまで発熱が続くかも解説!【医師監修】

炎天下での活動後、なんとなく熱っぽい、汗が止まらないと感じたことはありませんか? それは熱中症による発熱のサインかもしれません。体温が高い状態が続くと、頭痛や吐き気などの症状を起こすこともあります。この記事では、熱中症による発熱がいつまで続くのか、発熱が起こるメカニズムと適切な対処法をわかりやすく解説していきます。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

熱中症で発熱するメカニズム

熱中症で発熱するメカニズム

熱中症による発熱の発生確率を教えてください

熱中症になるとすべての方が発熱を起こすわけではありません。熱中症は重症度により下記のように4つに分類されます。

  • I度 めまい、失神、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむら返りがあるものの意識障害を認めないもの。
  • II度 頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下。
  • Ⅲ度 中枢神経症状、肝・腎機能障害、血液凝固異常の3つのうち、いずれかを含む
  • Ⅳ度 深部体温40.0度以上かつ、GCS(意識レベルを評価するスコア)≦8

このうちⅠ度の軽症の場合には、発熱を認めないことがあります。Ⅱ度以上になると、中等症あるいは重症となり、多くの場合発熱を認めるようになります。

熱中症で発熱する原因を教えてください

風邪などの感染症で発熱するメカニズムと、熱中症で発熱するメカニズムは異なります。風邪などの感染症では、体内にウイルスが侵入すると、免疫反応としてプロスタグランジンという物質が放出されます。この物質が脳の視床下部という部位に作用することで、身体の防御反応として発熱が起こります。

一方、熱中症で発熱が起こる原因は、身体の熱を逃がす仕組みが正常に働かなくなることです。通常私たち人間は、身体が熱を持つと、2つの方法で体温を下げています。1つは皮膚の血管を広げて熱を逃がすこと、もう1つは汗をかいて蒸発するときの気化熱で冷やすことです。

しかし、高温多湿の環境に長時間さらされ、大量に発汗すると全身の血液量が減少します。それにより、皮膚の血管からの熱放出が減少し、また体内の水分量も減少するため次第に発汗も少なくなります。 そうなると、熱を体外へ逃がすことができず、熱がこもり、深部体温が上昇することで熱中症になります。

熱中症で発熱しているとき、身体の中で何が起きていますか?

熱中症で発熱をしているときは、上述したように、体表からの熱を冷却できず、深部体温が上昇しています。深部体温が40度を超えてくると細胞の変性が起こるとされています。人間の体内では通常、肝臓腎臓などの重要臓器への血流が保たれるように調節されています。しかし、熱中症のときには、体内の水分量が減少し、全身を巡る血液の量が減少するため、重要臓器への血流維持もままならなくなります。

また、Ⅲ度以上の重症のケースでは、ときに後遺症を残すことも報告されています。なかには、永久的な神経障害を起こしたとされるケースもあります。地球温暖化によりここ数年はさらに熱中症になる方が増加しています。しかし、熱中症は十分な対策をすることで、発症リスクは軽減できますので、予防がとても重要になります。

熱中症による発熱の平均体温と発熱の持続期間

熱中症による発熱の平均体温と発熱の持続期間

熱中症による発熱の平均体温を教えてください

人間の体温は、通常、36~37度になるように調節されます。しかし、熱中症では、体表からの熱を冷却ができず発熱を認める場合があります。

Ⅰ度の軽症の場合は、発熱は認めない、もしくは37度台の発熱を認めることがあります。 しかし、Ⅱ度の中等症以上になると38度を超える発熱や、場合によっては40度を超え熱射病に陥る場合もあります。 年齢や一人ひとりによって体温調節機能やいわゆる平熱も異なるため発熱時の平均体温は一概にいうことは困難です。しかし、上述したとおり、熱中症は、40度を超え、臓器障害を引き起こす危険な病気です。

熱中症の発熱はどの程度の期間続きますか?

熱中症による発熱の持続期間は、体表からのクーリングや水分補給などの治療介入の状況や重症度によって異なります。

Ⅰ度の軽症の場合は、発熱を伴わないこともありますが、発熱を起こしている場合でも、体表のクーリングにより数時間以内に解熱することもあります。 中等症以上の場合も体表からのクーリングは必要ですが、解熱が得られない場合や、重症で一刻も早く体温を下げないと危険な場合もあります。そのようなときには、体表からではなく、カテーテルを用いて血管内から冷却をすることもあります。

熱中症による発熱とほかの原因による発熱の違い

熱中症による発熱とほかの原因による発熱の違い

熱中症による発熱の特徴を教えてください

熱中症による発熱の特徴としては、以下のようなものがあげられます。

  • 身体が脱水になり、発汗できず皮膚が乾燥している
  • 深部体温が高温になり脳へ障害を及ぼすと、意識障害、けいれん、異常行動などを起こすことがある
  • 軽症の場合速やかな応急処置により解熱が得られることがある

熱中症での発熱とほかの病気の発熱は何が違いますか?

熱中症とほかの病気の発熱との大きな違いは発熱のメカニズムです。 感染症による発熱は、身体がウイルスや細菌と戦うために、脳が意図的に体温を上げる防御反応です。体温調節機能は正常に働いており、解熱薬が効果を示します。また、咳、鼻水、喉の痛みなど、感染部位特有の症状を伴います。

一方、熱中症による発熱は、体温調節機能が破綻して起こる高体温症です。身体は体温を下げようとしているのに、それができない危険な状態です。解熱薬は効かず、むしろ脱水状態で使用すると臓器に負担をかける可能性があります。

この違いを理解することは、適切な対処法を選ぶうえで極めて重要です。

熱中症による発熱への対処法

熱中症による発熱への対処法

熱中症で発熱をした場合、自宅でどのような対応をすればよいですか?

熱中症が疑われる場合は、以下のような対応を速やかに行ってください。

涼しい環境への移動 熱中症は熱ストレスに身体がさらされることが原因です。まずは熱ストレスから逃れることが大切です。

体表からの冷却 首、脇の下鼠径などの太い血管が走る部分を氷嚢やタオルで巻いた保冷剤で冷やします。血管内の血液が冷やされ全身を循環し身体が冷やされます。

水分、塩分の補給 大量の発汗により体内の水分が減少しています。水分と同時に電解質も失っているため、経口補水液などで補うことが重要です。 意識が朦朧としている、嘔吐している場合は、誤嚥の危険があるため無理に飲ませず、ただちに救急車を呼んでください。

熱中症により発熱した際の受診目安を教えてください

発熱がなく、意識もはっきりとしており、症状は軽いめまいや立ちくらみや筋肉痛といった症状のみの場合、上述した対応で改善が見られる場合があります。

Ⅱ度(頭痛、嘔気、嘔吐、集中力や判断力の低下、倦怠感など)以上の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

熱中症による発熱に対して、医療機関はどのように治療をしますか?

医療機関での治療は重症度により異なります。共通していることは、深部体温を下げること、脱水電解質を補正することです。 医療機関においては以下のような治療を行います。

  • 腋窩(ワキ)や鼠径へのアイスパック
  • 蒸発冷却(霧吹きや濡れタオル、扇風機を使用し気化熱による冷却)
  • 冷却補液
  • カテーテルを用いた血管内冷却

意識障害や呼吸障害がある場合は、全身管理を行います。

編集部まとめ

編集部まとめ

熱中症による発熱は、感染症とは違うメカニズムで起こります。ときに40度を超え、命に危険が及ぶことや、後遺症を残すこともあります。何よりもまず行うことは身体を冷やすことです。頭痛や嘔気、意識障害やけいれんといった症状を認める場合は速やかに救急車を呼び、医療機関を受診しましょう。

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