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体のどこを冷やすと「熱中症対策」できる?熱中症の初期症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/08/10
体のどこを冷やすと「熱中症対策」できる?熱中症の初期症状も解説!【医師監修】

夏になると気温や湿度の上昇に伴い、熱中症になる方が増加します。熱中症は重症化すると命に関わる危険な状態ですが、正しい知識と対策を行うことで、多くの場合未然に防ぐことができるとされています。本記事では、熱中症を引き起こす要因、予防のための対策、特に注意が必要な方の特徴や生活上の注意点などを詳しく解説します。

江口 瑠衣子

監修医師
江口 瑠衣子(医師)

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2009年長崎大学医学部卒業。大学病院での初期臨床研修終了後、10年以上にわたり地域の基幹病院で腎臓内科の診療に従事。患者さん一人ひとりに寄り添った医療を心がけており、現在は内科・精神科の診療を行っている。腎臓専門医。総合内科専門医。

熱中症を未然に防ぐ対策

熱中症を未然に防ぐ対策

熱中症を引き起こす要因を教えてください

熱中症を引き起こす要因は、環境、からだ(体調)、行動の3つの条件が重なることとされています。具体的には次のとおりです。

  • 環境:気温が高い、湿度が高い、風が弱い
  • 身体:高齢者、乳幼児、脱水、体調不良
  • 行動:激しい運動、慣れない運動、長時間の屋外作業、水分が補給しにくい環境

通常は体温が上昇するとその熱を皮膚の表面から逃がしたり、汗をかいて熱を逃がしたりします。しかし、環境、からだ、行動の3つの条件がそろうと体温の上昇と調節機能のバランスが崩れてしまい、身体にどんどん熱がたまります。これが熱中症です。熱中症は特に次のような条件で起こりやすくなります。

  • 気温が高い、湿度が高い
  • 風が弱い
  • 日差しが強い、照り返しが強い
  • 急に気温が上がる

具体的な場所は、運動場、体育館、工事現場などです。熱中症は真夏の屋外だけでなく、家の中などでも起こることがあります。

熱中症は予防することができますか?

熱中症は放置すると命に関わる病気ですが、適切な対策により多くの場合で予防可能です。予防の基本は、脱水にならないこと体温の上昇を抑えることの二点です。脱水にならないよう水分摂取を心がけ、暑さを避けるよう行動しましょう。

なお、暑さに備えた身体づくりも有効です。身体が徐々に暑さに慣れて、暑さに強くなることを暑熱順化といいます。暑熱順化すると熱中症にかかりにくくなるとされています。やや暑い環境で、ややきついと感じる程度の運動を続けることで、暑熱順化できるといわれています。まだあまり暑くならない時期から少しずつ運動をして汗をかく機会を増やしていると、夏の暑さに負けない身体づくりができます。

熱中症を未然に防ぐための対策を教えてください

熱中症を未然に防ぐための対策の基本は、暑さを避けることこまめに水分を補給することです。屋外では日傘や帽子を使用し、日陰を利用したりこまめに休憩をとったりします。また、天気がよく気温が高い日は、日中の外出を可能ならば控えることも検討しましょう。

熱中症は屋外だけではなく屋内でも発症します。屋内ではエアコンなどで温度を調節し、天気がよい日は遮光カーテンやすだれを活用するとよいでしょう。なお、エアコンの温度を設定していても室温が目標の温度になっていないこともあるため、室温をこまめに確認します。

さらに、身体に熱がこもらないよう、吸湿性・速乾性があり、通気性のよい衣類を着用することも推奨されています。症状が出る前から保冷剤、氷、冷たいタオルで身体を冷やすことも効果的です。これらの暑さ対策と同時に、こまめに水分をとることも忘れないようにしましょう。のどの渇きを感じてからでは遅い場合があるため、こまめに水分を補給する必要があります。

熱中症対策をしたほうがよい人の特徴と生活上の注意点

熱中症対策をしたほうがよい人の特徴と生活上の注意点

熱中症になりやすい人の特徴を教えてください

熱中症になりやすい方として、子どもや高齢の方が挙げられます。子ども体温の調節能力が十分に発達していないため周囲の大人が注意をすることが大切です。熱中症の患者さんのうち約半数は65歳以上の高齢者といわれています。高齢の方は暑さやのどの渇きを感じる機能や、身体の調節機能が低下しているため熱中症になりやすいとされています。また、障害のある方も症状を訴えることができない場合があるため、配慮が必要です。

ほかには、スポーツをする方、キッチンで火を使う方も、その環境から熱中症になりやすいといわれています。

どのようなときに熱中症の予防法を実践すべきですか?

暑くなり始め急に気温が上がった日熱帯夜の次の日厳しい暑さが続くときなどは、熱中症のリスクが高まるため、熱中症の予防法を実践しましょう。

熱中症は真夏の晴れた日だけでなく、さまざまな状況で起こることがあります。特に日本のように蒸し暑い環境では、熱中症が起こるリスクを気温だけで評価できません。このため、気温、湿度、日射・放射、風の要素をもとにして熱中症のリスクを判断するWBGT(暑さ指数)があります。日常生活で、WBGTが25度以上で注意、28度以上で警戒、31度以上で厳重警戒と定められています。環境省は熱中症を未然に防止するために、全国各地のWBGTの予測値をもとに、熱中症警戒アラートを出しています。アラートが発表された場合は、特に厳重な対策が必要です。

熱中症になりやすい人が日常生活で気を付けることを教えてください

熱中症になりやすい方が日常生活で気を付けることとして、まず重要なのは室内環境の管理です。特に高齢の方の場合、もったいないからとエアコンの使用をためらう方も少なくありません。エアコンを積極的に利用し、室温をほぼ28度前後にしましょう。また、温湿度計を置いてこまめにチェックします。次に大切なのが水分補給です。子どもも高齢の方も、のどが渇く前から意識的に水分を摂取することが大切です。たくさん汗をかいたときは水分だけでなく塩分も補給する必要があります。スポーツドリンクや経口補水液を活用すると効果的です。

なお、気温が高い日に散歩などの外出をする場合、幼児は特に注意が必要です。晴れた日には、地面に近いほど気温が高くなります。幼児は身長が低いため、大人が暑いと感じているよりもさらに暑い環境の中にいることになります。幼児は自分の状況を伝えることも難しいため、常に大人が気を配る必要があります。

そのほかには、食事や睡眠を十分にとり、規則正しい生活を送ることも熱中症の予防につながります。気温と湿度をチェックする、水分をこまめにとる丈夫な身体を作る、など日々の生活のなかで行いながら、熱中症のリスクを減らしましょう。

熱中症の初期症状が現れたときの対策

熱中症の初期症状が現れたときの対策

熱中症の前兆や初期症状を教えてください

熱中症になる前兆は、軽い頭痛や不快感、いつもより疲れやすい、口の渇きを感じる、何となく体調がすぐれない、などの症状が挙げられます。そのほかにも軽い吐き気やムカムカ感などもあります。ただ、これらの前兆と熱中症の初期症状との切り分けは難しく、すでに熱中症が始まっているサインの可能性も否定できないため注意が必要です。熱中症の初期症状には、次のような症状があります。

  • めまい、立ちくらみ
  • 生あくび
  • 多量の発汗
  • 筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)

これは熱中症の重症度分類でいうところのⅠ度の症状で、熱中症のなかでは最も軽症の症状です。熱中症の重症度はⅠ~Ⅳ度に分類されています。熱中症の病状が進むと、重症度分類のⅡ度となり、頭痛、吐き気や嘔吐、全身倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下などが出現します。

熱中症の前兆や初期症状が現れたときはどう対策すればよいですか?

熱中症の前兆や初期症状が現れたら、すぐに風通しのよい日陰や、涼しい場所へ避難します。可能であればクーラーの効いた室内がよいでしょう。安静にして、衣服を緩め、身体を冷やします。具体的な方法は、皮膚を濡らしてうちわで扇ぐ、扇風機の風を当てる、氷やアイスパックなどで冷やすなどです。当てる部分は、首の両側、両方のわき、太ももの付け根などが効果的です。同時に、脱水を改善させるために水分と塩分を補給します。水分と塩分の補給で大切なのは、冷たい飲み物を熱中症が疑われる本人に持たせて、自分で飲んでもらうことです。

熱中症ですぐに受診すべきサインを教えてください

熱中症ですぐに受診すべきサインは、次のとおりです。

  • 自力で水分摂取ができない
  • 意識障害(ぼんやりしている・返事がおかしい・呼びかけに反応しない)
  • けいれん発作
  • 手足の運動障害がみられる、まっすぐ歩けないなどの神経症状

このほかにも表面体温で40度以上、もしくは皮膚に明らかな熱感が感じられる場合も、重症の可能性があります。また、軽症と判断して応急処置を行った場合でも、水分を自力で摂取できない、症状が改善しないなどの場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

熱中症は真夏の屋外だけでなく、私たちの身近な生活のなかでも起こる可能性があります。しかし、事前の予防策により多くの場合は防ぐことが可能です。特に熱中症のリスクが高い子どもや高齢の方々は、周囲のサポートがとても重要です。毎日の気温や湿度、熱中症警戒アラートに注意を払い、必要に応じてすぐに対処するようにしましょう。夏を安全に快適に過ごすために、この記事で紹介した対策を日々の生活に取り入れ、しっかりと熱中症対策に取り組んでいきましょう。

この記事の監修医師