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「うつ病の症状」はご存知ですか?初期症状やなりやすい人の特徴も解説!【医師監修】

 公開日:2025/09/13
「うつ病の症状」はご存知ですか?初期症状やなりやすい人の特徴も解説!【医師監修】
「疲れが取れない」「何をしても楽しくない」そんな症状が続いていませんか? 実はそれ、うつ病かもしれません。

うつ病は気の持ちようや甘えではなく、医学的な治療が必要なこころの病気です。放っておくと重症化し、日常生活が困難になる可能性もあります。

この記事では、うつ病の特徴や初期サイン、放置するリスク、受診の目安をわかりやすく解説します。
前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。

うつ病の特徴

うつ病の特徴

うつ病とはどのような病気ですか?

うつ病とは、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、食欲低下や不眠などが続き、日常生活に大きな支障をきたす精神疾患です。精神的な症状に加えて、頭痛や胃腸の不調など、身体面にも不調が現れることもあります。

精神的ストレス、身体的ストレスが重なって発症し、脳の機能に何らかの障害が起きていると考えられています。

日本では、生涯のうちにおよそ15人に1人がうつ病を経験するとされており、誰にとっても身近な病気といえます。

うつ病は症状が重くなると「死にたい」と感じるほど追い詰められてしまうこともあり、放置すると自殺につながる危険もあります。だからこそ、早期の診断と適切な治療を受けることが大切です。

うつ病の原因を教えてください

うつ病の病態や発症メカニズムは現時点でまだ完全には解明されていません。原因は1つに特定できず、複数の要因が関与して発症すると考えられています。主な原因は下記のとおりです。

  • 心理的、社会的要因 仕事、人間関係の強いストレスや大切な方との別れなど喪失体験
  • 性格的傾向 几帳面、真面目、責任感が強い性格
  • 遺伝的要因 家族にうつ病の既往歴があること
  • 生理学的要因 脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の働きの乱れ
  • 身体疾患 アルツハイマー病やがんなど線維筋痛症などの慢性疾患

多くの場合、これらのリスク因子が相互に影響しあって発症に至ります。 例えば、責任感が強く完璧主義な性格の男性会社員が、部下への業務の任せ方に悩み、自信を失ったことをきっかけに不眠や吐き気などの身体症状が出現し、うつ病が発覚した事例があります。これは、性格的傾向と心理的、社会的要因が重なった典型的なケースといえます。

うつ病になりやすい人に共通点はありますか?

いくつかの共通点があるといわれています。 うつ病になりやすい方に特有の性格傾向があることは、以前より知られています。

うつ病になりやすい方には、メランコリー親和型執着気質といった性格傾向が共通してみられます。メランコリー親和型は、他者との調和を重んじ、気配りや責任感が強い一方、対人関係で無理をしやすい傾向があります。

執着気質は、几帳面で完璧主義的、物事に粘り強く取り組む反面、柔軟性に欠け、自責的になりやすい特徴があります。

どちらのタイプもストレスが多い環境において自分を追い込みやすく、適切に休んだり助けを求めたりするのが苦手なため、うつ病を発症しやすいとされています。ただし、誰でも環境や状況次第でうつ病を発症する可能性があるため、性格だけが原因とはいえません。

うつ病の前兆と初期症状

うつ病の前兆と初期症状

うつ病には前兆はありますか?

うつ病には前兆として、こころや身体にさまざまなサインが現れることがあります。

こころの面では、以前に比べて表情が暗くなったり、ちょっとしたことで涙が出るようになったりします。また、自責的な発言が増えたり、人間関係が億劫になったりするなどの変化がみられます。

身体の面では、食欲や性欲の低下、不眠や逆に長時間眠ってしまうことがあります。そのほかにも、疲れやすくなる、頭痛や肩こり、胃の不快感といった不調が続くこともあります。

こうした変化が2週間以上続く場合は、一時的な疲労ではなく、うつ病の前触れである可能性があります

うつ病の初期症状を教えてください

うつ病の初期段階では、こころと身体の変化に加え、行動面でも変化が現れます。なかでもうつ病の初期症状として典型的な例は下記のとおりです。

  • 気分が晴れず、いつもより物事に対する興味が薄れる
  • 仕事や家事に集中できない、ミスが増える
  • 朝が起きたときが一番つらい(日内変動)
  • 原因不明の肩こり、頭痛、胃の不調などの身体症状

こうした初期症状は本人が気付きにくく、周囲の方によって受診につながるケースもあります。

うつ病と間違えやすい病気はありますか?

うつ病の症状には、ほかの病気や障害と似ている部分が多く、見分けがつきにくいことがあります。特に以下の病気とは症状の重なりが多いため慎重な鑑別が必要です。

  • 更年期障害
  • 認知症
  • 甲状腺機能低下症などの内科疾患
  • 適応障害、躁うつ病などのほかの精神疾患

進行したうつ病の症状

進行したうつ病の症状

中期うつ病の症状にはどのようなものがありますか?

うつ病が進行し、症状が悪化すると、日常生活への影響がより深刻になります

具体的には、強い無気力感や意欲の低下が続き、何事にもやる気が起きなくなります。自己否定感もより強まります。加えて強い疲労感や思考の遅さがみられ、物事の判断が困難になる場合もあります。さらには感情の鈍化が起こり、以前は自然に涙が出ていた状況でも涙が出にくくなることがあります。

この状態を中等症うつ病と呼び、患者さんは、社会的や家庭的な活動がかなり困難になり、仕事を続けられなくなる方も少なくありません

末期うつ病の症状を教えてください

うつ病がさらに進行し、重症になると、心身両面で深刻な機能障害が現れます。

強い抑うつ気分に加えて、絶望感や罪悪感が強まり、死にたい、いなくなりたいと思う気持ち(希死念慮)が現れることがあります。食事や会話、入浴といった基本的な生活も困難になり、ベッドから出られない、無言のまま過ごすといった状態に陥ることもあります。

思考や判断力は著しく低下し、現実的な判断ができなくなるケースもあります。精神的苦痛だけでなく、頭痛や消化器症状など身体の不調も悪化しやすくなります。この段階では自殺のリスクも高まるため、早急に専門医による治療と安全の確保が必要です。

うつ病を放置するとどうなりますか?

うつ病を放置すると、症状が長引き、心身の機能が低下したまま慢性化するおそれがあります。これにより仕事や家庭での役割を果たすのが難しくなり、社会的な孤立や経済的な問題を招くこともあります。さらには深刻な希死念慮や自殺行動につながる危険性もあります。

うつ病は、早期診断と早期治療によって回復のスピードと質が大きく変わります。不調が続くときは遠慮せずにできるだけ早く医療機関を受診することが大切です。

うつ病のセルフチェックと受診サイン

うつ病のセルフチェックと受診サイン

うつ病のセルフチェック方法を教えてください

インターネット上にはさまざまなうつ病のセルフチェックがありますが、誤った情報に惑わされないようにしましょう。医学的な根拠に基づいた公的機関のチェックツールの使用をおすすめします。

例えば、厚生労働省が運営するメンタルヘルス支援サイトでは、国際的にも広く使用されているPHQ-9(患者健康質問表)をベースにしたセルフチェックが公開されています。57問の質問に回答し、結果の合計点から、うつ病の可能性やその程度を把握することができます。短時間(約5分)かつ匿名、無料で利用できるので、気になったときに手軽に試せるのが利点です。

ほかにも、精神的ストレスを簡単に確認できるK6(Kessler6)や、うつ症状を幅広くとらえるCES-D(うつ病自己評価尺度)なども信頼性のあるチェック方法として知られています。

うつ病で受診をする目安はありますか?

受診の目安としては、症状が2週間以上、ほとんど毎日続いているのかどうか、がひとつの判断基準となります。

厚生労働省では、以下のような状態のうち、2つ以上に当てはまり、2週間以上続いている場合、うつ病の可能性があるとしています。

  • 毎日の生活に充実感がない
  • これまで楽しんでやっていたことが、楽しめなくなった
  • 以前は楽にできていたことが、今は億劫に感じる
  • 自分が役に立つ人間だと思えない
  • わけもなく疲れたような感じがする

また、「食欲がない」、「眠れない」といった身体的な不調が続く場合も、こころのサインである可能性があります。早めに医療機関や保健所、精神保健福祉センターなどに相談しましょう。

うつ病は早期診断と早期治療が、回復の鍵です。無理に頑張ろうとせず、まずは相談することから始めてみましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ うつ病はこころと身体に影響を及ぼし、日常生活を困難にする病気です。日本人の15人に1人が生涯のうちに一度は経験するとされており、誰にでも発症の可能性があります。

つらいと感じたら、ひとりで抱え込まず、信頼できる方や医療機関に相談することが大切です。

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