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「動脈硬化を改善」する効果が期待できる「食生活」はご存知ですか?【医師監修】

 更新日:2025/10/01
「動脈硬化を改善」する効果が期待できる「食生活」はご存知ですか?【医師監修】

動脈硬化は、放っておくと心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気につながることがある疾患です。初期には自覚症状がないことが多く、気付かないうちに進行してしまうこともあります。しかし、動脈硬化は生活習慣の見直しや適切な治療によって、進行を抑え、合併症のリスクを減らすことができます。本記事では、動脈硬化に関して原因から治療法までわかりやすく解説します。

上田 莉子

監修医師
上田 莉子(医師)

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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

動脈硬化の概要

動脈硬化の概要

動脈硬化とはどのような病気ですか?

動脈硬化とは、動脈の血管の壁が厚くなり、硬くなって弾力を失ってしまう病気です。 動脈には、心臓が送り出す血液を全身に行きわたらせる役割があります。血液の中には酸素や栄養分があり、それらは動脈のおかげで身体の中の細胞や組織に届けられます。心臓は全身に血液を送るためにポンプの役割を果たしますが、この心臓の収縮に伴って動脈には高い圧力がかかります。これに耐えうるために動脈の壁は3層になっています。

壁は外側から外膜、中膜、内膜で構成されており、この内膜の下に主に脂肪でできた沈着物(プラーク)が蓄積することをアテローム性動脈硬化といいます。動脈硬化には3つのタイプがありますが、一般的に動脈硬化というとアテローム性動脈硬化のことを指します。動脈硬化はさまざまな重大な疾患を引き起こす可能性があります。

動脈硬化の原因を教えてください

動脈硬化の原因は、血管の内膜の表面を覆う細胞(内皮)が損傷することだと考えられています。内皮が損傷しその機能が損なわれると、血管の壁にプラークがつき、動脈硬化が始まります。これは、主に次のようなものが原因で引き起こされると考えられています。

  • 高血圧
  • 脂質異常(コレステロールの異常)
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • 加齢

動脈硬化は健康にどのような影響を与えますか?

動脈硬化が進行すると、動脈が硬く狭くなった部分より先に、十分な血液が届かなくなります。そうすると臓器や組織に酸素不足を起こします。また、プラークは大きくなると崩れやすくなります。突然プラークが破裂して血栓ができ、血管が詰まってしまうことがあります。この現象が心臓を栄養する血管で起これば狭心症や心筋梗塞になり、脳の動脈で起これば脳梗塞を発症します。特に、心筋梗塞や脳梗塞は命に関わる重大な病気です。命が助かっても麻痺や言語障害など重い後遺症を残す場合があります。

動脈硬化を放置すると、健康寿命を大きく損ねる可能性があります。そのほかに、足の血管に動脈硬化が起こることがあります。歩くときに痛みがみられたり、重症の場合は足に潰瘍(深い傷)や壊疽(えそ)を引き起こしたりすることがあります。壊疽とは細胞や組織が酸素不足となり、腐って黒くなってしまう状態のことをいいます。このように動脈硬化は全身の血管で起こるため、健康にさまざまな影響を与えます。

一度硬くなった動脈は元に戻りますか?

一度進行してしまった動脈硬化を元に戻すのは難しいと考えられています。しかし、生活習慣の改善や薬での治療によって、動脈硬化をそれ以上悪化させない効果は期待できます。硬くなった血管を以前の状態に戻すことは大変難しいため、動脈硬化になってから治すよりも、なるべく早い段階から進行を予防することが重要です。

動脈硬化を改善する生活習慣の見直し

動脈硬化を改善する生活習慣の見直し

動脈硬化を助長させる生活習慣にはどのようなものがありますか?

動脈硬化を助長させる生活習慣には次のようなものがあります。

  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • 不健康な食生活(過食や塩分過多)
  • 運動不足
  • 慢性的なストレス

日々の生活習慣のなかで、これらに心当たりがある方は、動脈硬化予防のために少しずつでも改善していきましょう。

動脈硬化を改善する効果が期待できる食生活を教えてください

食生活の見直しは動脈硬化の進行を抑制するためには欠かせません。具体的には以下のようなポイントに気を付けた食事が推奨されます。

  • 塩分を控える
  • コレステロール、飽和脂肪を控える
  • 魚を積極的に食べる

高血圧対策のため、塩分の摂取はできるだけ控えめにします。濃い味付けや塩辛い食品を減らし、醤油や味噌など塩分の多い調味料の量もできる限り減らしましょう。また、コレステロールの多い食品や動物性の脂肪、飽和脂肪酸の摂取は控えめにします。一方で、魚は積極的に食べるようにしましょう。魚の油は動脈硬化の予防に有効であることがわかっています。

食べ過ぎを避け、適切な体重管理に努めることも重要です。以上のような食生活は、血圧、血糖、脂質のコントロールに有効で、その結果として動脈硬化を予防する効果が期待できます。急な食事制限はせず、無理のない範囲で適切な食事に改善し、続けていくことが大切です。

運動には動脈硬化を改善する効果がありますか?

運動は動脈硬化の予防にとても重要です。運動によって血圧や血糖のコントロールが改善し、肥満の解消や予防も期待できます。その結果、動脈硬化の進行を抑えることにつながります。 具体的には、65歳以上の方で、運動の程度を問わず毎日40分程度、18~64歳の方は1日60分程度の運動をするとよいとされています。ただし、持病がある方などは医師と相談したうえで運動の内容を決めるようにしてください。

禁酒や禁煙は動脈硬化を改善しますか?

禁酒や禁煙は、動脈硬化の予防においてたいへん重要です。禁煙は特に重要です。喫煙は本人の健康を損なうだけでなく、周囲の方にも影響を及ぼすことが知られています。また、動脈硬化だけでなく、がんなどのさまざまな病気のリスクを増加させます。動脈硬化では、喫煙が心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気のリスクを上げ、心臓の病気での死亡や突然死の原因にもなりうることが示されています。一方で、禁煙すると心臓の病気による死亡が減少することがわかっています。また、お酒は適量であれば大きな問題はないとされており、過度な飲酒を控えるようにしましょう。

動脈硬化を改善する病院での治療

動脈硬化を改善する病院での治療

病院では動脈効果に対してどのような治療を行いますか?

病院で行われる動脈硬化の治療は、大きく分けて生活習慣の指導と薬による治療が挙げられます。基本となる日常の生活習慣の指導を行い、必要に応じて薬による治療を行います。

薬の治療は、それぞれの方にあわせて、コレステロールを下げる脂質異常症治療薬、血圧を下げる降圧薬、糖尿病の治療薬などを用いて行われます。また、すでに動脈硬化による心臓や脳の病気などを発症している場合には、血液を固まりにくくする薬(抗血小板薬)を使って血栓の予防を図ります。

重度の動脈効果に対する治療法を教えてください

重度の動脈硬化に対しては、より積極的な治療が必要となります。動脈硬化が進行して血管の狭窄、閉塞が重度になると、薬での治療だけでは十分に血流を確保できなくなります。そのような場合には、血行再建術と呼ばれる血流を改善するための処置や手術が検討されます。代表的な方法は次の2つです。

  • カテーテル治療
  • バイパス手術

カテーテル治療では、足の付け根などから細い管(カテーテル)を血管内に挿入し、狭くなった部分にバルーン(風船)を送り込みます。血管が狭くなったところに到達したら、バルーンを膨らませて血管を広げます。

バイパス手術は、カテーテル治療では対応が難しい場合に選択される治療法です。詰まった血管の代わりに、別の血液の通り道自分の血管や人工の血管で作り(バイパス)、血液の流れを確保します。心臓や足の血管で行われます。

このほかに、首の血管(頸動脈)に病変がある場合は、動脈の内側にたまったプラークを直接取り除く治療などが行われることがあります。

いずれの方法も、動脈硬化そのものを治すわけではなく、血流を改善するための処置です。再発を防ぐには、治療後も生活習慣の見直しや薬の継続が不可欠です。適切な治療法は患者さんの状態によって異なるため、医師と相談しながら決めていきます。

編集部まとめ

編集部まとめ

動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気を引き起こす可能性があります。しかし、生活習慣の改善などによって、進行を防ぐことが可能です。禁煙、食生活の改善、適度な運動といった日々の積み重ねが、血管の健康を守る基本となります。動脈硬化が進行してしまうと、それを元に戻すのは難しいため、予防が大切です。動脈硬化を指摘された方も、これ以上進行しないように今日から始められることを一つずつ実践していきましょう。

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