目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「子どもが手足口病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?看病する際のポイントも解説!

「子どもが手足口病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?看病する際のポイントも解説!

 公開日:2025/08/12
「子どもが手足口病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?看病する際のポイントも解説!

手足口病は、夏に流行しやすい子ども特有のウイルス感染症で、特に5歳未満の乳幼児によくみられます。手や足、口腔内に小さな水ぶくれができるのが特徴で、多くの場合は自然に回復しますが、まれに重い合併症を引き起こすこともあります。本記事では、手足口病の原因や感染経路、代表的な症状、注意すべき合併症など、保護者が知っておきたい基本情報をわかりやすく解説します。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

プロフィールをもっと見る
浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

子どもの手足口病とは

子どもの手足口病とは

子どもの手足口病はどのような疾患ですか?

手足口病とは、手のひら・足の裏・口腔内などに、水ぶくれ(水疱)を伴う発疹(ほっしん)が現れる感染症です。乳幼児(特に5歳未満)を中心に、例年夏をピークに流行します。一般的には数日から1週間ほどで回復しますが、まれに重い合併症を起こすこともあるため、保護者の観察と適切な対応が重要です。

手足口病の原因を教えてください

主な原因ウイルスは、コクサッキーウイルスエンテロウイルスです。感染経路は、くしゃみや咳による飛沫感染(ひまつかんせん)や、ウイルスが付着した物を触ることによる接触感染が一般的です。保育園や幼稚園などの集団生活では特に広がりやすく、ひとりの感染からクラス全体に広がることもあります。

手足口病にはどのような症状がありますか?

手足口病は、感染してから3~5日の潜伏期間を経て発症します。症状は、口腔内や喉の粘膜、手のひら、足の裏、指先、おしりなどに2~3mm程度の水疱を伴う発疹ができるのが特徴的です。口腔内の痛みから、子どもが食事を嫌がることもあります。感染者の30〜50%で発熱がみられますが、熱はあまり高くならず(38℃以下)、通常は1〜3日で自然に解熱することが多いです。水疱は3~7日ほどで消退するといわれています。

手足口病の合併症を教えてください

手足口病は、多くの場合は軽症で済みますが、まれに重い合併症を起こすことがあります。

【脳や神経への影響】 まれですが、脳や神経系に関連した合併症が報告されています。代表的な疾患は、以下のとおりです。

  • 無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)・脳炎 髄膜炎は、脳を包む膜(髄膜)に炎症が起きる疾患です。主な症状として、頭痛と発熱、嘔吐がみられます。多くは自然軽快し、後遺症を残さず回復しますが、まれに脳炎に進行する可能性もあるため注意が必要です。脳炎に進行すると、髄膜炎の症状に加えて意識障害やけいれん、記憶障害などが現れます。
  • 小脳失調症(しょうのうしっちょうしょう) 身体のバランスや動きを調整する小脳や、小脳に関連した神経が障害されることで発症します。歩行時のふらつきや、手足をうまく動かせない、話し方が不明瞭になるなどの症状がみられます。
  • 急性弛緩性麻痺(きゅうせいしかんせいまひ) 筋力が急激に低下し、手足に力が入らなくなるといった麻痺の症状がみられます。重症例では呼吸筋の麻痺を来すこともあります。

これらの合併症は、エンテロウイルス71型というウイルスが原因の場合に起こりやすいとされています。

【心臓や肺への影響】 神経や脳以外にも、心臓や肺に関連する合併症を引き起こすこともあります。
  • 心筋炎 ウイルスが心筋に感染して発症する疾患です。初期症状には息切れ、動悸、胸の痛みなどが現れることがあります。進行すると、心不全や不整脈を引き起こすリスクもあります。
  • 神経原性肺水腫(しんけいげんせいはいすいしゅ) 神経の異常によって、肺に水がたまった状態です。症状には、突然の呼吸困難、息切れ、顔色不良、チアノーゼ(唇や爪先が青紫色になる)などがあげられます。

注意が必要なのは、発疹や発熱などの典型的な症状があまり出ないのに、疾患が重くなってしまうケースもある点です。見た目が軽いように見えても、子どもの様子がおかしいと感じたら、すぐに病院を受診してください。

そのほか、コクサッキーウイルスA6型による手足口病では、症状がおさまった後に手や足の爪が一時的に剥がれてしまうことがあります。見た目には驚かれるかもしれませんが、多くの場合は自然にもとに戻ります。

子どもが手足口病に感染した際の対処法と治療法

子どもが手足口病に感染した際の対処法と治療法

子どもに手足口病の疑いがあるときは受診した方がよいですか?

ほかの疾患との見分けが必要な場合もあるため、一度受診しておくとよいでしょう。また、保育園や幼稚園に通っている場合、登園の判断や診断書の提出が必要なこともあるため、医師の診察を受けておくのが望ましいです。

手足口病の治療方法を教えてください

手足口病には特効薬がないため、対症療法が中心です。発熱がある場合には解熱剤を使用したり、口腔内の痛みが強い場合は、冷たい飲み物ややわらかい食事を与えたりするなど、子どもが少しでも快適に過ごせるようサポートすることが大切です。

手足口病に感染した子どもを看病する際のポイントを教えてください

まず、こまめな水分補給を心がけましょう。水疱の痛みによって、食事をとるのが難しくなる場合もあるかもしれません。その場合には、刺激の少ない食べ物を選ぶのもポイントです。

例えばプリンやゼリー、豆腐、うどんなど、のどごしがよく、冷たくてやわらかいものを与えるとよいでしょう。反対に、みかんやパイナップルなどの酸味の強いものや、熱い料理は刺激になるため避けてください。もし食事量が減っても、焦らずに水分補給を優先して、少しずつ回復を待つことが大切です。

また、看病する保護者も、手足口病のウイルスに感染する可能性があります。マスクの着用や手洗い、うがいなどの基本的な予防策を徹底しましょう。

手足口病で再度受診をした方がよいサインはありますか?

次のような症状がみられた場合は、再度医療機関を受診してください。これらは、重い合併症のサインかもしれません。

  • 嘔吐する
  • 頭を強く痛がる
  • 視線が合わない
  • 呼びかけに反応しない
  • 呼吸が速く、苦しそうにしている
  • 水分がまったくとれない
  • 尿量が少ない

子どもの体調は急に悪化する場合があるため、少しでもおかしいと感じた時点で受診を検討することが大切です。早めの対応が、重症化を防ぐカギになります。

手足口病の感染対策と通学・通園

手足口病の感染対策と通学・通園

子どもが手足口病を発症した際の感染対策を教えてください

手足口病は飛沫感染や接触感染を通じて広がるため、家庭内での感染対策がとても重要です。特に、便のなかには数週間にわたってウイルスが排出されることがあるため、発疹がおさまった後も注意が必要です。

感染拡大を防ぐためには、こまめな手洗いの徹底が基本です。トイレやおむつ交換の後、食事の前後などには、流水と石けんでよく手を洗いましょう。また、タオルやコップ、食器などは家族と共有しないようにして、使用後は丁寧な洗浄や消毒が大切です。 さらに、発疹に触れた手でほかの物を触ることでウイルスが広がります。おもちゃやドアノブなど、よく触る場所も定期的に消毒を行いましょう。感染者で、咳やくしゃみが出る場合は、マスクの着用も有効です。

なお、手足口病は一度かかっても、原因となるウイルスの型が異なれば、同じシーズンでも再び感染する可能性があります。過去に感染した経験がある場合でも油断せず、日頃から手洗いや衛生管理をしっかり行うことが大切です。

子どもが手足口病にかかったら通学や通園は控えるべきですか?

学校や保育園の出席停止期間については明確に定められておらず、学校保健安全法でも出席停止の対象とされていません。全身状態が良好であれば、水疱が完全に消失していなくても登園・登校してよいとされています。

ただし、発熱やのどの痛み、下痢などが見られる場合や、食事がとれない状態のときは、無理に登園させず自宅で安静に過ごさせましょう。本人の全身状態が安定してから登園を再開することが望ましいです。

登園・通学の可否について迷った場合は、医師の判断だけでなく、園や学校の方針に従うことが大切です。事前に園や学校に相談しておくと、スムーズに対応できます。

編集部まとめ

編集部まとめ

 手足口病は子どもに多いウイルス感染症で、特徴的な発疹や口内炎がみられます。基本的には数日で自然に回復する疾患ですが、まれに重症化する症例もあるため、症状の変化に注意して見守る必要があります。特に水分がとれない場合や、ぐったりしているときは早めに医療機関を受診してください。

家庭での看病では、脱水に注意しながら、子どもが快適に過ごせる環境を整えることがポイントです。また、手洗いや消毒をこまめに行い、家庭内の感染予防に努めることも大切です。

この記事の監修医師