麻疹や風疹という病気を一度でも耳にした経験がある方、罹患した経験がある方がいるのではないでしょうか。
麻疹や風疹は子どもがかかりやすい感染症ですが、大人も免疫がなければ予防接種必要です。
本記事は、麻疹と風疹の違いやそれぞれのウイルスが持つ特徴、感染した際の見分け方などの基本的な情報を紹介します。
子育て中の方や麻疹、風疹の予防接種を考えている方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
プロフィールをもっと見る
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。内分泌代謝・糖尿病内科専門医。
麻疹(はしか)と風疹(三日はしか)の原因や症状

麻疹の原因となるウイルスを教えてください。
麻疹(はしか)の原因となる麻疹ウイルスは、強い感染力を持つのが特徴です。感染者との接触はもちろん飛沫、空気を介して感染します。感染力は、1人の麻疹患者さんと同一空間にいるだけで、10名以上の方に感染するほど強力です。そのため、飛沫感染するようなインフルエンザのように日常的なマスクの装着や、手洗いうがいといった予防策だけでは感染を防ぐのに限界があります。感染を予防するために有効とされている手段はワクチン接種とされ、1歳の時期と5〜7歳の時期と合わせて2期の予防接種が必要です。しかし麻疹のワクチンは生ワクチンといい、生きたウイルスを接種する特性から妊娠中の方は接種できません。妊娠中の女性が免疫のない状態で麻疹に感染すると、重症化するだけでなく流産や早産などお腹の赤ちゃんにも影響を及ぼします。
麻疹にかかるとどのような症状が出ますか?
感染してからの約4日間をカタル期と呼び、この時期には38〜39度前後の発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状の出現から始まります。麻疹は風邪症状に加えて目の充血、目やになどの結膜炎症状や下痢、口腔粘膜の発赤などの症状が特徴です。そして感染から4〜8日程度経過すると、発疹期を迎えます。カタル期から発疹期に入る前に体温はいったん解熱しますが、発疹期に突入すると再び39度以上の高熱とともに全身に赤い発疹が出現します。この時期に現れてくる口腔粘膜の症状が、コプリック斑です。コプリック斑は口腔粘膜に出現する白い斑点をいい、頬粘膜を中心に出現します。さらに麻疹は、耳の後ろから始まってやがて全身に広がる発疹の出現が特徴です。この発疹が出てから約4日で体温は解熱し、回復期を迎えます。回復期に入ると全身の症状は次第に軽減し始め、赤い斑点は色素沈着に変化し徐々に戻っていくでしょう。
風疹の原因となるウイルスを教えてください。
風疹ウイルスは風疹を引き起こすウイルスで、咳やくしゃみといった飛沫感染が特徴です。麻疹ほど感染力は強くありませんが、1人の患者さんから5人以上の人へ感染する例も少なくありません。ウイルスは主に鼻や喉といった上気道粘膜から排出されて、飛沫とともに人間の体内へ侵入します。予防方法はワクチンが有効とされ、風疹とともに2回にわたるワクチン接種が必要です。風疹も妊婦が感染すると、母子感染や流産、早産といった胎児への影響も懸念されています。そのため妊娠を希望する女性の場合は、前もってワクチンを接種しておくのが大切です。
風疹にかかるとどのような症状が出ますか?
風疹に感染すると、潜伏期間を経た後に症状が出現します。風疹は、以下のような3症状が同じタイミングで出現するのが特徴です。
- 発熱
- 発疹
- リンパ節腫脹(耳介後部、後頭部、頸部)
上記に示す3つの症状すべてを満たした場合、風疹と診断されます。風疹による発熱は38度前後で留まるのが一般的です。発熱に伴って耳介後部や後頭部、頸部のリンパ節が腫脹します。リンパ節の腫れは触れると明らかに腫れているのがわかるだけでなく、触ったときに圧迫感や痛みを感じるでしょう。発疹は淡い赤色の小さな丘疹が全身に広がり、数日間持続したのち症状の回復とともに消退するのが特徴です。ほかにも関節痛や結膜炎症状、頭痛や全身の倦怠感といった症状を伴うケースも一定数あります。さらに風疹には不顕性感染といって、感染しているにも関わらずまったく症状が出ないケースもあります。風疹に感染した人のうち15〜30%は不顕性感染であるとされているため、感染したからといって必ず症状が出るとは限りません。
麻疹(はしか)と風疹(三日はしか)の違いや見分け方

麻疹と風疹の感染経路や潜伏期間には違いがありますか?
麻疹と風疹では、感染経路や潜伏期間が異なります。麻疹ウイルスは接触感染や飛沫感染以外に空気感染する感染症ですが、風疹は基本的に咳やくしゃみなどの飛沫で感染します。どちらのウイルスも共通して感染力が強く、予防するには乳幼児期のワクチン接種が必要です。それぞれの潜伏期間は麻疹が約10〜12日、風疹は約14〜21日と期間に幅があります。
麻疹と風疹の症状の重さには違いがありますか?
麻疹や風疹はワクチン接種をしていない状態で感染すると、どちらも重症化する感染症です。麻疹と風疹は発熱や発赤といった共通の症状があります。ただし麻疹にかかった場合の発熱は39度以上の高熱が持続したり、全身が真っ赤になるほどの発疹が持続したりして症状が重くなりがちです。麻疹と風疹は、肺炎や脳炎といった合併症のリスクがある点も共通しています。ただし麻疹は合併症の発症や重症化、後遺症に至る頻度が1000人に1人と高頻度であるというデータも出ています。
麻疹と風疹の治癒までの期間には違いがありますか?
麻疹と風疹は潜伏期間だけでなく、治癒までに要する期間も異なります。麻疹の場合は一般的に症状が軽度であれば7〜10日で治癒するケースが多く、免疫を獲得するまでにはさらに約1ヶ月必要です。風疹は、重症化せず順調に回復できている場合は約3日と短期間での治癒が期待できます。ただし免疫不全の人や新生児、高齢者などは重症化しやすい傾向にあります。重症化した場合は治癒するまでの期間が長引きますが、どの程度長引くかは病状次第です。
麻疹と風疹の見分け方を教えてください。
麻疹と風疹は感染初期の症状が異なるだけでなく、特徴的な症状が異なります。麻疹と風疹を見分けたい場合は、熱の出方や口腔内の発疹の有無で見分けるとよいでしょう。麻疹は、多くの症例で感染初期の風邪症状が特徴です。さらに麻疹の場合は高熱が3〜4日ほど続いた後に解熱し、口腔粘膜に白い斑点が出現したり全身に発赤出現したりするのと同時に高熱が現れます。風疹は感染するとリンパ節の腫れと全身に小さな丘疹が現れますが、高熱は伴いません。
麻疹(はしか)と風疹(三日はしか)の治療方法

医療機関での麻疹の治療方法を教えてください。
麻疹の治療は、対症療法が基本です。中耳炎や肺炎、脳炎などが発生した場合は、抗菌薬の投与や必要に応じて人工呼吸器の装着などの全身管理を行います。その場合は医療機関への入院が必要となりますが、周囲への感染を防ぐため、個室管理が基本です。合併症を伴わない場合の治療は、解熱と補液が中心となります。解熱にはアセトアミノフェンを使用しますが、解熱のほかに鎮痛作用もあるため頭痛や関節痛に対しても使用可能です。高熱が続く場合は脱水を防ぐ目的として、経口補水液や点滴を使用して体内に必要な電解質を補給します。
医療機関での風疹の治療方法を教えてください。
風疹の治療法も麻疹と同じように、対症療法を行いながら合併症や症状の重篤化を防ぐのがポイントです。乳幼児の場合は、症状が長引くほど体力の消耗を招きます。そのため解熱剤の使用や補液による脱水予防、体力の温存を目的とした安静を中心に療養します。合併症を起こした場合は、状態に応じた治療が必要です。血小板減少性紫斑病に対しては、必要に応じて血小板輸血やステロイドによる治療を行うケースもあります。ほかにも脳炎や関節炎に対して、抗けいれん薬や脳を保護するための治療などが加わっていきます。
編集部まとめ

今回は風疹や麻疹の違いを始め、ウイルスの特徴や感染した際に実施される治療を紹介してきました。
麻疹や風疹に効果的な治療はなく、対症療法以外に有効な方法はワクチン接種による予防です。
妊婦が感染すると母子感染により胎児が重篤な状態に陥るケースもあり、妊娠希望の女性もワクチン接種は欠かせません。
万が一感染した場合には適切な治療で重篤化を防ぐためにも、心配な症状が現れた場合にはすぐに医療機関を受診しましょう。