「五十肩(肩関節周囲炎)」に有効なストレッチはご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/10/21

中年以降の方でよくある悩みが、五十肩です。五十肩になると肩周りの痛みに伴い、腕が上がりにくくなったり、激痛でまともに眠れなかったりと日常生活で支障をきたしやすくなります。 本記事では、五十肩で悩む方のための有効なストレッチを解説します。五十肩の原因や症状に合わせたケア・予防法もまとめました。 五十肩でつらく感じている方は、本記事を参考に効果的なストレッチを身に着けましょう。

監修医師:
吉川 博昭(医師)
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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。
目次 -INDEX-
五十肩の原因や症状
五十肩の原因を教えてください。
五十肩とは、肩関節が痛み関節の動きが悪くなる状態のことです。中年以降に見られる症状で、肩を動かすたびに痛みが生じ、動きが悪くなることが特徴です。ちなみに五十肩の正式名称は、肩関節周囲炎と呼ばれています。五十肩は俗称であり、50代の方が感じやすい痛みとして認知されています。五十肩の明確な原因は、明らかになっていません。主な原因は老化に伴う肩関節周辺の炎症が考えられており、関節を構成する骨や軟骨・靭帯・腱などで炎症が起こると痛みが生じます。五十肩と関連する症状は、肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包を含む)の炎症・上腕二頭筋長頭腱炎・石灰沈着性腱板炎・肩腱板断裂などがあり、人によって原因は異なります。
五十肩はどのような症状が出現しますか?
五十肩の主な症状は、肩周りの炎症に伴う痛みが特徴です。肩回しはもちろんのこと、物をもったり髪を整えたりとちょっとした動作でも痛みが生じ、日常生活で支障をきたしやすくなります。その他にも、さまざまな症状があります。
- 腕が上がらないほど痛む
- 腕が上がらない
- ズキズキとした痛みがある
- 夜中の痛みで寝つけない
- 可動域が狭い
- 背中に手が回らない
五十肩と肩こりの違いを教えてください。
五十肩と聞くと、肩こりを連想してしまう方もいることでしょう。五十肩と肩こりでは、症状が異なります。五十肩は肩周り周辺で生じる炎症で、肩こりは筋肉疲労に伴う筋肉のハリやこりが特徴です。肩こりの原因は以下の要因が考えられます。
- 丸まった姿勢
- 長時間の座りっぱなし
- 前かがみ癖
- 運動不足
- 精神的なストレス
- なで肩
五十肩に有効なストレッチ
五十肩に効果があるストレッチを教えてください。
五十肩に効果のあるストレッチには、前方挙上ストレッチ・外旋ストレッチ・内旋・結帯動作ストレッチ・振り子ストレッチの4つがあります。これらのストレッチを1日に数回行うことで、五十肩の症状が緩和されやすくなります。前方挙上ストレッチは、腕を前から上げていき、限界までバンザイの姿勢をとって10秒間キープする方法です。外旋ストレッチでは、手のひらを前に向けながら腕を横に伸ばしていきます。壁を使うと、より効果的にストレッチすることが可能です。内旋・結帯動作ストレッチは、腰に手を回し、そのまま背中の中心ラインに沿って上へ動かすことで、肩の可動域を広げます。振り子ストレッチは、腰ぐらいの高さのテーブルに片方の手をつき、もう片方の手を振り子のように前後や左右にゆっくり動かす方法です。これらのストレッチを継続することで、肩の可動域が改善しやすくなります。ただし、過度に行うと肩に負担がかかるため注意が必要です。もし痛みが激しく、動かすのが困難な場合は、非ステロイド性消炎鎮痛薬や経口薬による治療で症状を和らげた後に、無理のない範囲でストレッチを行うことが大切です。
痛みがあるときにストレッチをしても大丈夫ですか?
痛みが伴う場合には、無理にストレッチをするのはおすすめできません。無理にストレッチをしてしまうと炎症悪化につながりやすくなり、場合によっては関節包を分厚くさせる可能性があります。特に医師や理学療法士によるリハビリでは無理に動かされる場合もあるため、誰かにケアしてもらう際は注意が必要です。肩のストレッチは無理のない範囲で行いましょう。
五十肩のときにやってはいけないことはありますか?
無理なストレッチはもちろんのこと、肩をまったく動かさないのはおすすめできません。たしかに、肩に痛みがある状態では安静にしていることが重要です。しかしまったく肩を動かさない状態が続くと、肩が拘縮しやすくなり場合によっては凍結肩に至るリスクがあります。また五十肩を放置させてしまうと症状悪化につながりやすくなるため、早めの診察が望ましいです。放置すれば治るだろうと安直に考えず、医師の指導でケアしましょう。
五十肩の治療法と予防法
五十肩の治療法を教えてください。
五十肩の治療法は豊富で、症状に合わせたケアが可能です。例えば痛みが激しい場合は鎮痛剤で痛みを和らげ、軽症の場合にはリハビリやストレッチなどでアプローチしていきます。また症状が改善されない場合に手術による治療法もあり、主にはサイレントマニピュレーションや関節鏡による手術で治療していきます。具体的な治療法は、以下のとおりです。
- ステロイド注射による痛みの緩和
- 痛み止め(飲み薬)による痛みの沈静化
- サイレントマニピュレーション治療
- 関節鏡での手術
- 通院リハビリ
- ストレッチ
五十肩の重症度によって治療法は異なりますか?
五十肩は、重症度によって治療法は異なります。五十肩には症状の段階として炎症期・拘縮期・寛解期の3つがあり、症状に合わせた治療法でケアしていくのがポイントです。例えば炎症期の場合は激しい痛みが伴い鎮静剤を使って安静にしますが、症状が落ち着く寛解期はストレッチやエクササイズなどの運動療法でアプローチしていきます。凍結肩で関節包がかなり癒着している際は、サイレントマニピュレーションによる治療が必要になるでしょう。
五十肩が痛むときに鎮痛薬は有効ですか?
五十肩の痛みが治まらない場合には、鎮痛薬は有効です。五十肩の痛みの緩和には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とステロイド注射などが使用されます。局所部分にアプローチすることで、一時的に痛みを軽減させることが可能です。しかし鎮痛薬による治療は、皮膚のかぶれや胃腸障害・免疫力低下に伴う感染症の発症・うつ症状など、さまざまな副作用のリスクがあります。もし鎮痛薬による治療を検討している場合は、このようなリスクがあることも覚えておきましょう。
五十肩にならないための予防法はありますか?
五十肩にならないためには、普段から適度な運動をし肩関節をこまめに動かすことが重要です。五十肩の原因は老化に伴う肩関節周辺の炎症で、姿勢が悪かったり、肩を動かす習慣がなかったりすると発症する可能性があります。肩周りのストレッチも重要ですが、ランニングやウォーキング・体操・筋力トレーニングなどで腕を振って肩を動かすことも必要です。もし運動が難しい場合には、隙間時間で肩回しをするだけでも予防できます。
編集部まとめ
本記事では、五十肩の有効なストレッチ方法を解説しました。 五十肩でつらくならないためには肩周りのストレッチや運動・正しい姿勢で予防に努めるのが望ましいです。 ストレッチをしても五十肩が改善されない場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
