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「五十肩を疑う症状」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!【医師監修】

 公開日:2025/10/08

腕が上がらない・腕を上げると肩が痛む・肩が痛くて眠れない、これらの症状がある方は、五十肩の可能性があります。五十肩は、40〜70代の方で起きやすい肩の病気です。

肩の痛みや肩関節の動かせる範囲が狭くなるなどの症状が現れます。この記事では、五十肩の症状や原因、治療法や痛みを和らげるセルフケアなどを紹介します。

肩の痛みで悩んでいる方や肩に違和感を覚えている方の参考になれば幸いです。

松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

五十肩の症状・原因

肩の痛み

五十肩の症状を教えてください。

五十肩になると、以下のような症状が現れます。

  • 腕を上げようとしても上がらない
  • 腕が横や後ろに回らない
  • 動かさなくても痛みがある
  • 肩の痛みで夜間に目が覚める

五十肩は、肩の関節が固くなる病気です。症状は段階的に変化していき、病気の程度も人によって異なります。五十肩の症状には、3つの段階があります。まずは、痛みが目立つ急性期です。この時期は2〜9ヶ月ほど続くとされており、動かしていない状態でも痛みがあり、こわばりなども生じます。次は、慢性期と呼ばれ、動かせる範囲が狭くなる時期が訪れます。この時期には、痛みが徐々にひいていき、肩の硬さが主な症状として現れるでしょう。期間は、4〜12ヶ月ほど続くとされています。その後は、肩の動きにくさが少しずつ改善していく回復期です。五十肩の症状の改善には、12〜42ヶ月ほどかかるとされています。

五十肩の原因を教えてください。

はっきりとした原因はわかっていません。ただ、五十肩の原因は、関節に関与する骨・軟骨・腱などの老化により肩の関節が炎症を起こすためと考えられています。関節を包んでいる関節包や動きを滑らかにする滑液包などが硬くなっても、肩の動きに影響がでるでしょう。また、きっかけがなく五十肩になる場合もあれば、肩をぶつけた際や肩を使うような作業をしたことがきっかけで五十肩になる場合もあります。

五十肩の痛みには特徴がありますか?

五十肩の痛みの特徴に、痛むタイミングと痛みの強さが挙げられます。痛みは個人差があるため、全員が同じように感じるとは限りません。五十肩では、急性期に痛みが現れやすく、この時期には安静時・動作時・夜間に痛みが生じます。じっとしていてもずきずきと痛んだり、夜になると痛みが強くなったりします。夜間の痛みで睡眠に影響が及ぶ場合も出てくるでしょう。

五十肩になりやすい人はどのような方ですか?

五十肩になりやすいとされているのは、以下のような方です。

  • 40〜70代の方
  • 糖尿病の方
  • 甲状腺疾患の方
  • 脂質異常症の方
  • 自己免疫疾患の方
  • デスクワークの方

五十肩と呼ばれるように、40〜70代で発症するケースが8割以上との報告があります。50代ではないからといって、五十肩ではないとは否定できません。肩の痛みや動かせる範囲が狭くなった際には、五十肩の可能性があります。また、糖尿病の方では五十肩を発症する方が少なくありません。糖尿病の10〜20%の方は五十肩になっており、糖尿病ではない方と比べても4〜10倍ほど高いのが特徴です。特に、1型糖尿病の方は五十肩になりやすく、生涯で76%の方が五十肩になるとの報告があります。ほかにも、甲状腺疾患・脂質異常症・自己免疫疾患などさまざまな疾患の方が、五十肩になりやすいとされています。

五十肩の治療法・検査法

肩の診察

五十肩の治療法を教えてください。

治療法には、薬物療法・運動療法・理学療法が行われます。薬物療法は、痛みが強く出る急性期に鎮痛薬を内服したり、肩関節へのステロイド注射をしたりします。ステロイド注射は、痛みの軽減や肩の可動域の改善が期待できる治療法です。痛みがひいてきた頃に、肩関節の動きやすさの改善や拘縮予防のために運動療法が始まります。運動療法では、主にストレッチと振り子運動と呼ばれる体操が行われます。患者さんの肩関節の状態に合わせて、運動の負荷も変わってくるでしょう。振り子運動は、錘(おもり)を片側の手で持ち前かがみの姿勢で、錘を持った腕を前後・左右に動かしたり回したりする運動です。関節包が伸びるため、肩関節の機能改善が図れます。運動療法は、肩関節周囲の血行の改善や痛みの軽減などのために、温熱療法やレーザー療法などと組み合わせて行われます。治療の効果が芳しくない際には、通院でリハビリを行う場合もあるでしょう。上記で紹介した治療法で効果がない場合には、手術が検討されます。

五十肩の検査法を教えてください。

五十肩では、画像検査・評価表・病理検査などの検査が行われるでしょう。画像検査や病理検査は、五十肩に似た症状が現れる疾患や腫瘍などとの鑑別に使われます。画像検査で行われるMRI造影では、五十肩で炎症が起きやすい肩関節の腱や靭帯の状態、関節包の容量などが確認できます。MRIでは、脇の部分の関節包の厚みや腫れ、肩関節の腱の損傷度合いがわかるでしょう。評価表は、DASHやSPADIと呼ばれる質問表です。質問票では、肩や腕の動作の可否や痛みの有無を聞かれます。患者さんがその質問に答え、集計した点数で障害の程度を判断する検査です。病理検査では、肩の関節内で生じている変化がわかります。関節鏡と呼ばれる内視鏡を使うと、関節内を覗きながら診察や治療が行えます。ただし、病理検査や関節鏡は手術が選択された際に行われる検査であり、一般的な治療では行われません。

五十肩の受診目安はありますか?

肩の痛み・違和感・動かしにくさを覚える場合には、早めに医療機関を受診しましょう。早期に保存療法を行うと、治療期間が短くすみ、肩の可動域も良好なケースが報告されています。また、ステロイド注射も早期に行うと、肩の痛みや硬さが軽減されやすくなるとの報告があります。そのため、肩の痛みを感じたら、なるべく早めにお近くの医療機関を受診しましょう。

五十肩の痛みを緩和するセルフケア方法

ストレッチをする女性

五十肩の痛みを緩和するセルフケア方法を教えてください。

五十肩で痛みが強い場合には、安静にするか鎮痛薬を服用するのがよいでしょう。急性期には、夜間痛が起きやすいため、寝る際のポジショニングが重要になります。肩の痛みが少ない体制を探り、その状態にして枕やバスタオルなどで腕や肩の位置を維持できるようにしましょう。1日ほどでは効果を感じにくいですが、1週間も行うと変化を感じられる可能性があります。痛みが落ち着いてきたら、肩に痛みが出ない程度に肩を動かすのがおすすめです。セルフケアの方法には、治療法でも紹介した振り子運動やタオルでテーブルを拭く運動、ばんざいの動作で頭の上で掌を合わせる運動などがあります。

五十肩でやってはいけないことはありますか?

急性期に痛みを無視しての運動やストレッチは、痛みの再発につながる可能性があるため、控えるようにしましょう。炎症が落ち着いてくると、安静時や夜間の痛みもひいてくるため、その頃から理学療法で肩を動かしていくのがよいでしょう。

五十肩は予防できますか?

五十肩自体を予防するのは難しいですが、日常生活で注意できることはあります。例えば、重い荷物を持つ際には両手で持つように心がけたり、定期的に肩関節をストレッチしたりすると肩の負担が軽減できるでしょう。また、水泳やウォーキングなど適度な運動を行うことで、血行がよくなり肩関節の筋肉の強化につながります。

編集部まとめ

肩の調子を整える
五十肩は、40〜70代で発症するケースが8割以上です。原因は、肩関節に関係する骨・軟骨・腱などの老化により、肩関節が炎症を起こすためと考えられています。

安静時・運動時・睡眠時の肩の痛みから始まり、痛みがひくと肩関節の動かしにくさが主な症状になるでしょう。

鎮痛薬やステロイド注射などの薬物療法で痛みをとり、運動療法・理学療法で肩の動かしにくさや動かせる範囲を広げていきます。

痛みがひいて動かせるようになった際には、痛みが出ない範囲で動かすことが重要です。

自分で行えることに、腕を前後左右に動かす振り子運動・タオルでテーブルを拭く運動・ばんざいの動作で頭の上で掌を合わせる運動などがあります。

痛みがある場合には、無理に動かすのはやめておきましょう。五十肩は、自然に治るともされていますが、状態がよくなるまでに時間がかかる場合が少なくありません。

そのため、肩の痛みや違和感がある際には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

この記事の監修医師