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「腸閉塞」を発症した際に食べてはいけないものはご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/03/26
「腸閉塞」を発症した際に食べてはいけないものはご存知ですか?【医師監修】

腸の健康が免疫向上や疾病予防に与える影響は研究で明らかになってきており、腸は健康維持の大切な役割を担います。

健全な腸を保つためにはバランスのよい食事が基本ですが、もしも腸の病気になってしまったらどのような食事を摂ればよいのでしょうか。

腸の疾患にはさまざまなものがありますが、今回の記事では腸閉塞に重点を置き、腸閉塞を予防できる食事内容を解説していきましょう。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

腸閉塞中で食べてはいけないもの

腸閉塞中で食べてはいけないもの

腸閉塞中や術後に食べてはいけないものを教えてください。

腸閉塞に陥ると腸が正常に機能しないため、いち早く腸管壊死や腹腔内膿瘍、腸の穿孔など重症化を避けなければなりません。病院で腸閉塞の診断を受けると、入院して絶飲食の補液管理(点滴など)になるでしょう。内科的治療の範囲を超える病態の腸閉塞は手術の適応となり、手術後は術後食が提供されます。入院中の食事は主に医師や管理栄養士により栄養管理され、不溶性食物繊維の少ない食事が特徴です。退院後、日常に戻ってご自身で献立を考える際は、不溶性食物繊維は摂り過ぎないことをおすすめします。

腸閉塞のときに摂取すべき栄養素を教えてください。

腸閉塞治療中は絶飲食ですが、患者さんに合わせて栄養素の投与量が計算され、末梢静脈または中心静脈からの補液により栄養は補われるでしょう。主な成分は水分と電解質、糖質やタンパク質、脂質やビタミンです。腸閉塞の急性期を脱すると飲食が開始されます。一般的に、初めは重湯から始まり普通食に至るまで、6段階程度の術後食が用意されます。しかし、普通の食事に戻るまではカロリーや栄養素の摂取が不十分なため、点滴と併せて栄養管理が行われるでしょう。また、便の成分は水分が70〜80%を占め、20〜30%が消化されなかった固形物です。水分不足にならないよう適度に摂取しましょう。

腸閉塞のときにおすすめの食べ物を教えてください。

腸閉塞と診断された場合、飲食は望ましくありません。腸閉塞は、何らかの原因により腸管が狭窄している状態です。無理に食事をすると重篤化するリスクが高まる可能性があるでしょう。腸閉塞の治療後、退院すると次のような消化のよい食べ物を摂るとよいでしょう。

  • 白米やお粥
  • 食パンや白パン
  • 脂肪の少ない肉類
  • 脂肪の少ない魚類 (かれいや鮭など )
  • 卵料理や卵豆腐
  • 豆乳や豆腐
  • 果物(リンゴ、バナナ、桃)
  • 葉野菜

腸に負担が少なく消化吸収のよい穀類や野菜、果物、豆類やたんぱく質などバランスよく食事に取り入れることが大切です。脂肪分を含む食品は、腸蠕動運動を活発にしやすいため、摂り過ぎると腹痛や下痢など腹部症状が出現する可能性があります。また、食欲が低下していたり食事量を過度に減量しすぎたりすると、必要エネルギー量が不足してしまうため適度な量を心がけましょう。

腸閉塞のときに避けるべきことを教えてください。

刺激の強い食事内容にならないよう気を付けましょう。例えば、料理の塩分や香辛料はほどほどに使用します。また、アルコールも腸には刺激となります。食事直後の運動は、消化吸収を妨げるので、食後30分以上は安静にしましょう。早食いや食べ過ぎも腸への負担となります。便の大部分は水分でできているので、水分をこまめに摂取し便秘にならないよう心がけましょう。

腸閉塞予防のための食事

腸閉塞予防のための食事

腸閉塞と食べ物の関係を教えてください。

食事で取り込まれた飲食物はお口から食道や胃、十二指腸、そして小腸から大腸へと運ばれ各臓器で栄養や水分を消化吸収していきます。タンパク質や糖質は消化吸収されますが、食物繊維は消化酵素で分解されません。便の量を増やし、腸の調子を整える働きがあります。しかし腸閉塞の場合は、食物繊維が狭くなっている腸管を通過できないため、食事内容には注意しましょう。

腸閉塞を起こしやすい食べ物を教えてください。

先にも触れましたが、不溶性食物繊維が多く含まれる食べ物の摂りは注意しましょう。具体的には次のような食べ物です。

  • 薩摩芋や蒟蒻
  • 根菜類(レンコンやごぼう、たけのこなど)
  • 山菜類(芹、ゼンマイなど)
  • きのこ類
  • 海藻類

食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。不溶性食物繊維は水に溶けない性質を持ち、腸で水分を吸収して便の容積を増やし腸蠕動運動を亢進させます。不溶性食物繊維を含む食品を摂取し過ぎると、消化できずに腸閉塞を起こす可能性を高めるでしょう。

腸閉塞を起こしやすい食習慣を教えてください。

よく咀嚼せずに早いスピードで食べてしまうと、消化酵素が食物に絡みづらく、消化を妨げてしまいます。嘔気や嘔吐、腹部膨満感、下痢や便秘が出現する場合は腸での消化機能が低下している可能性があるため食習慣の見直しを検討しましょう。ゆっくり食べると消化管の血流が多くなり、結果的に食物の消化と吸収を増加させることも明らかになっています。また、過食や早食いは大量の食物が一気に消化管に流れ込むので、腸で便が滞ることになり腸閉塞のリスクが高まるでしょう。

腸閉塞の予防法を教えてください。

腸閉塞の予防には、日々の食生活が重要です。

  • 過食しない
  • よく咀嚼しゆっくり食べる
  • 腹部膨満感を感じたら消化管を休ませる

食事は満腹感を7〜8分目に止め、食べ過ぎに注意しましょう。体重減少がみられる場合は、適度に間食をして一日の栄養バランスの調整をしましょう。前述のとおり、よく噛んでゆっくり食事をすると消化吸収を助け、腸への負担を防ぐことになります。1回の食事に30分程度かけて、ゆっくり食べましょう。腹部が張っている感じを自覚する場合、腸の機能に異常があるサインです。無理して食事せず、少量にしたり1食抜くなど腸を休めて様子をみましょう。消化器症状が悪化する場合は、早期の受診をおすすめします。

腸閉塞のときの食事レシピの決め方について

腸閉塞のときの食事レシピの決め方について

腸閉塞中の献立の決め方を教えてください。

腸閉塞治療後は、ご自身で腸閉塞再発の予防のため食事管理を行うことになるでしょう。毎日の献立管理は簡単ではありません。入院中は退院後の生活に備えて、個人の状態に合わせて退院指導や栄養指導が組まれるので、看護師や管理栄養士に献立の決め方を相談しましょう。入院中に提供される毎食のメニューも参考にし、日々の食事に取り入れるとよいかもしれません。栄養バランスのとれた献立は大切です。全体の半分が主食、残りの半分の1/3はタンパク質の肉魚類、残りに副菜となるように心がけると献立を考えやすいでしょう。視覚的に色が豊富なことも栄養バランスを整える目安です。また、栄養補助食品や市販の食品を上手に取り入れることで日々の食事管理の負担軽減が期待され、気軽に食事を楽しむことができるでしょう。栄養補助食品は、薬局やオンラインショップで購入できるほか、医療機関で処方されるものもあります。少量で効率よく栄養を補給できるのが特徴です。

食事内容は誰に相談したらよいですか?

腸閉塞の治療中は、医師や管理栄養士などが所属する栄養サポートチーム(NST)が食事療法を担当します。退院後は通院して腸の健康状態をみますが、食事に関する疑問や相談はどう解消すればよいのかご不安かもしれません。栄養指導を設けている病院は多くあり、担当医が管理栄養士との栄養相談を予約します。栄養相談では個人の病状や体調に応じた食事量や栄養バランスを指導してくれるでしょう。また、週に1度程度の頻度で栄養教室を開催している病院もあります。栄養教室は予約がいらない病院もあり、適宜活用いただけます。病院では継続して退院後の生活に役立てるよう連携体制を整えているので、腸閉塞の食事に関して相談したい場合は、まず担当医を受診して相談したい旨を伝えましょう。

編集部まとめ

指示する笑顔の栄養士

腸閉塞治療中は絶飲食の輸液療法が基本ですが、食事が開始されると流動食から常食へ段階的に進められていきます。

不溶性食物繊維を含む食物は摂り過ぎに注意しましょう。主な食品は薩摩芋や筋のある根菜類、キノコ類や山菜類、海藻類です。

食事はゆっくりよく噛んで食べ、体調の変化に気を配りながら食事内容や量など調整しましょう。

食べ過ぎは消化吸収を妨げてしまうので、7〜8分目の満腹度に留めることをおすすめします。

腸閉塞後、日々の食事で気になることがあれば、まずは担当医に相談し病院に設けられている栄養指導への受診や栄養教室に参加しましょう。

この記事の監修医師

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