「ADHDとASDの違い」はご存知ですか?それぞれの症状や原因も解説!
公開日:2025/10/10

ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)は、どちらも発達障害の一種ですが、その特性は大きく異なります。しかし、症状の一部が重なることも多く、違いを見分けるのが難しい場合があります。
本記事では、ADHDとASDの違いについて以下の点を中心にご紹介します!
- ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性
- ASD(自閉スペクトラム症)の特性
- ADHDとASDの違い
ADHDとASDの違いについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
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医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性
ADHDはどのような発達障害ですか?
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害の一種であり、不注意、多動性、衝動性の3つの特徴を持つ状態です。
大人になると多動性は目立たなくなることが多いようですが、不注意や衝動性は続くことがあります。
ADHDの原因を教えてください
ADHDの原因は、現在の医学では解明されていませんが、主に脳の機能に関わる要因が関係していると考えられています。
特に、注意力や衝動の制御を担う前頭前野の働きが弱いことが、症状の要因の一つとされています。これは、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの不足や異常が影響していると考えられています。
その結果、注意を維持することや行動をコントロールすることが難しくなり、不注意や衝動的な行動、多動などの症状が現れます。
また、遺伝的な要因も指摘されており、親がADHDを持っている場合、子どももADHDを発症する可能性が高まることが示唆されています。
ADHDの主な症状を教えてください
不注意の症状では、一つのことに集中するのが難しく、些細なミスをしやすい、忘れ物や遅刻が頻繁に起こる、指示を最後まで聞けずに途中で作業をやめてしまうなどの特徴が見られます。
多動性の症状は、じっと座れず、無意識に手足を動かしたり、授業中や会議中でも突然立ち上がることがあるのが特徴です。
衝動性の症状では、思いついたことをすぐにお口に出してしまう、順番を待つのが苦手、相手の話を最後まで聞かずに遮ってしまうなどの行動が見られます。これらの症状は成長とともに変化することがあり、特に成人では不注意の傾向が強くなることが多いようですが、症状の現れ方には個人差があります。
ADHDはどのような治療を行いますか?
ADHDの治療には主に心理社会的治療と薬物療法の二つのアプローチがあります。
心理社会的治療では、環境の調整や行動療法を取り入れ、本人が日常生活をよりスムーズに送れるよう支援します。
具体的には、家庭や学校での環境を整えること、ペアレントトレーニングを通じて保護者が適切な対応を学ぶこと、ソーシャルスキルトレーニングで社会的な対人スキルを向上させることなどが含まれます。
一方で、症状が強く日常生活に支障をきたしている場合は、薬物療法が検討されます。主にコンサータやストラテラ、インチュニブ、ビバンセなどの薬が使用され、注意力の向上や衝動性の抑制を目的としています。ADHDの治療は治癒を目指すものではなく、生活の質を向上させ、個々の特性に合わせた適切なサポートを行うことが重要です。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性
ASDはどのような発達障害ですか?
ASD(自閉スペクトラム症)は、社会的なコミュニケーションの困難や行動への強いこだわり、感覚の過敏・鈍感などの特徴を持つ発達障害の一つです。
従来は自閉症やアスペルガー症候群と分類されていましたが、現在はこれらを包括してASDと呼ばれています。
ASDの原因を教えてください
ASDの原因も解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因は、一卵性双生児の一方がASDである場合、もう一方もASDである確率が高いことや、家族内での発生率が高いようです。しかし、両親にASDの診断がなくても子どもがASDである場合があり、単純に遺伝だけでは説明できません。
環境的要因は、妊娠中や出産時の合併症、低出生体重、早産、母親の高齢出産などがASDの発症リスクを高める可能性が指摘されています。また、妊娠中の栄養状態やタバコ・アルコール摂取の影響も研究が進められています。ただし、これらの環境要因だけでASDを引き起こすわけではなく、複数の要因が絡み合って発症すると考えられています。
ASDはどのような症状が見られますか?
ASDでは、主に対人関係やコミュニケーションの困難さ、こだわりの強さ、感覚の違いなどの特性が見られます。具体的には、相手の気持ちを理解したり、表情や視線を使ったやりとりが苦手なことが多く、会話のやりとりが一方的になりやすい傾向があります。
また、ルールや習慣への強いこだわりを持ち、予定の変更や環境の変化に対して強いストレスを感じることがあります。さらに、音や光、匂いなどに対する感覚が過敏であったり、逆に鈍感であったりすることもあります。
これらの特性の現れ方や程度は個人によって異なり、日常生活や社会生活に影響を与える場合もあります。
ASDの治療法を教えてください
ASDの治療法は、根本的に治すものではなく、ご自身が社会で適応しやすくなることを目的とした支援が中心です。主な方法として環境調整、療育、心理社会的療法、薬物療法などが挙げられます。
環境調整では、ご自身の特性に合わせて生活環境を整え、ストレスを軽減します。例えば、視覚的なスケジュールを用いたり、静かな空間を確保したりする工夫が行われます。
療育では、社会的スキルの向上を目的に専門的な指導が行われ、特に幼少期からの支援が有効とされています。
心理社会的療法には、認知行動療法や対人関係を学ぶプログラムがあり、ASDの方が社会で適応しやすくなることを目指します。
薬物療法は、過度な不安や衝動性、不眠などの症状がある場合に用いられますが、根本的な治療ではなく、補助的な役割です。
ADHD(注意欠如・多動性障害)とASD(自閉スペクトラム症)の違い
ADHDとASDにはどのような相違点がありますか?
ADHDとASDはどちらも発達障害に分類されますが、その特性には明確な違いがあります。
ADHDの方は衝動的な発言や行動が多く、場の空気を読めずにトラブルになることがありますが、ASDの方はそもそもコミュニケーション自体が苦手で、人との関わりにストレスを感じやすい傾向があります。
また、ADHDは計画を立てるのが苦手で、思いつきで行動しがちですが、ASDは逆にルールや手順を重視し、予定が変わると混乱しやすい特徴があります。
ADHDとASDは併存することもありますか?
ADHDとASDは併存することがあります。両者は異なる発達障害ですが、共通する特徴も多く、特にADHDの症状が強い方程ASDを併発する傾向があるとされています。
ADHDの衝動性や不注意と、ASDのこだわりやコミュニケーションの困難さが同時に現れることで、生活でさらに困難を感じることがあります。
特に、ASDの方は環境の変化に適応しづらい傾向がありますが、ADHDの衝動性が加わると、予定通りに行動できないことで強いストレスを感じる場合があります。
このように、ADHDとASDの併存は珍しくなく、どちらの特性がより強く表れるかによって支援や治療の方針も変わります。
ADHDとASDを判断するのが難しい理由を教えてください
ADHDとASDの判断が難しい理由は、両者の症状が重なり合う部分が多く、個人によって現れ方が異なるためです。
ADHDは不注意や衝動性が特徴で、ASDは社会的なコミュニケーションの困難さや強いこだわりが特徴ですが、両者の特性が混在するケースもあります。例えば、ASDの方が興味のあることに強く集中する姿は、ADHDの過集中と見分けにくいことがあります。
また、ADHDの方が対人関係で問題を抱えることもあるため、ASDによる社会的コミュニケーションの困難と混同されることがあります。さらに、ADHDの衝動性とASDのこだわりが同時に存在すると、診断がより複雑になります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
ADHDとASDは、それぞれ異なる特性を持ちながらも、個人によって症状の現れ方が異なります。そのため、ご自身や周囲の方がどちらに該当するのか、または両方の特性を併せ持つのかを判断することは容易ではありません。
しかし、発達障害は個性の一部ともいえ、正しい理解と適切なサポートがあれば、より充実した生活を送れるでしょう。もし、ADHDやASDの特徴に悩んでいるなら、一人で抱え込まず、医師や支援機関に相談することをおすすめします。
編集部まとめ
ここまでADHDとASDの違いについてお伝えしてきました。ADHDとASDの違いの要点をまとめると以下のとおりです。
- ADHDは不注意、多動性、衝動性の3つの特徴を持つ発達障害である
- ASDは、社会的なコミュニケーションの困難や行動への強いこだわり、感覚の過敏・鈍感などの特徴を持つ発達障害
- ADHDは計画性に欠ける傾向がある一方、ASDはルールや手順を重視する傾向がある
ADHDとASDは、どちらも特性が異なるため、それぞれに合った対応が求められます。大切なのは、診断名にとらわれすぎず、一人ひとりの特性を理解し、適切な環境を整えることです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献




