「急性カフェイン中毒の症状」はご存知ですか?好発年齢も解説!【医師監修】
公開日:2025/03/07

カフェインはコーヒーやお茶などの嗜好飲料や食品に含まれる身近な成分です。覚醒作用や集中力の向上のために摂取する方も少なくないでしょう。 適量であればメリットがありますが、過剰に摂取すると急性カフェイン中毒を引き起こす可能性があります。 またエナジードリンクにも少なくないカフェイン量が含まれており、子どもから大人まで中毒を起こす事例が報告されています。 急性カフェイン中毒になると動機やめまい、手の震えなどの症状が現れ、重症になると意識障害やけいれんを引き起こし命に関わるケースもあり注意が必要です。 この記事では急性カフェイン中毒の症状や原因、予防策を詳しく解説します。日常的にカフェインを摂取する方の参考になれば幸いです。

監修医師:
吉川 博昭(医師)
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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。
目次 -INDEX-
急性カフェイン中毒の症状
急性カフェイン中毒とはなんですか?
急性カフェイン中毒とは、一度に大量のカフェインを摂取してしまうことで中枢神経系が過剰に刺激されて、さまざまな身体の不調が現れる状態です。
カフェインは、アデノシンという神経を落ち着かせる物質の働きを阻害するため、過剰摂取によって神経の興奮作用が強く現れます。カフェインはコーヒー豆や茶葉に含まれるほか、食品添加物として清涼飲料水などにも使用されます。また風邪薬や眠気防止薬などの医薬品にも含まれている場合もあるでしょう。特にエナジードリンクには高濃度のカフェインが含まれていることが多く、短時間で大量に摂取しやすい傾向があります。
急性カフェイン中毒の症状を教えてください。
急性カフェイン中毒の症状は、カフェインに対する感受性に個人差があるため症状や程度が異なりますが、主に以下のものが報告されています。
- 精神神経症状:めまい・興奮・不安・震え・不眠など
- 循環器症状:心拍数の増加・動悸・不整脈
- 消化器症状:吐き気・嘔吐・下痢
急性カフェイン中毒は後遺症を残しやすい症状ですか?
急性カフェイン中毒は適切な治療が行えば後遺症が残ることはほとんどありません。しかし、重症化して意識障害やけいれんなどを起こした場合は、脳や心臓にダメージが残り後遺症につながる可能性があります。またカフェインの過剰摂取には不眠などの症状が慢性化したり、高血圧のリスクが高くなったり、妊娠中の場合は胎児が低体重になりやすかったりするなど長期的な作用もあるため気をつけましょう。
急性カフェイン中毒は救急搬送される症状ですか?
急性カフェイン中毒は、症状が軽い場合は自宅で様子をみることができますが、次のような重症化した症状がみられる場合は救急搬送が必要になる可能性があります。
- 激しい嘔吐や下痢が続く場合
- 呼吸困難や胸の痛みを伴う場合
- 意識障害やけいれんがみられる場合
急性カフェイン中毒の原因
急性カフェイン中毒の原因は何でしょうか?
急性カフェイン中毒の主な原因はカフェインの過剰な摂取です。カフェインは天然の植物に含まれている成分でもありますが、清涼飲料水や医薬品に人工的に添加されることがあり、食品や飲料の種類によってカフェインの含有量が大きく違うため注意が必要です。主な食品や飲料に含まれるカフェインの含有量を説明します。
- コーヒー:レギュラーコーヒー1杯(約150ミリリットル)あたり約60~100mg
- 緑茶:煎茶1杯(約150ミリリットル)あたり約20~40mg
- 紅茶:1杯(約150ミリリットル)あたり約30~50mg
- エナジードリンク:1缶あたり100mg以上
- 清涼飲料水:コーラ1缶あたり約30~40mg
- チョコレート:ミルクチョコレート1枚あたり約20mg
- 市販薬:風邪薬や眠気防止薬または酔い止め薬など
- その他:マテ茶やココアなど
急性カフェイン中毒の好発年齢はありますか?
急性カフェイン中毒は、年齢に関係なく誰にでも起こる可能性があります。特に子どもや高齢者はカフェインの影響を受けやすい傾向がありますが、次の方もリスクが高いでしょう。若年層はエナジードリンクを好んで摂取する傾向があること、妊娠中・授乳中の方はカフェインの代謝が遅くなり胎児や乳児に影響を与える可能性があることが指摘されています。精神疾患を持つ方は治療薬との相互作用や、衝動的な行動から過剰摂取のリスクが高まります。肝臓でカフェインを代謝する酵素の活性が低い方も症状が現れやすいでしょう。
急性カフェイン中毒の治療法を教えてください。
急性カフェイン中毒の治療は、軽度であれば水分補給や安静にするなどで経過を観察できますが、重症の場合は入院治療が必要になる場合があります。嘔吐や下痢で脱水症状がある場合は輸液で水分補給を行い、状況によって電解質の補正や不整脈やけいれんに対する薬物療法が行われます。重症例では人工呼吸器や血液透析、持続的血液ろ過透析(CHDF)が必要になることもあるでしょう。カフェインの推定服用時間によって、胃洗浄や活性炭投与が選択される場合もあります。
カフェインを過剰摂取しない方法
カフェインを過剰摂取しない方法について教えてください。
カフェインの過剰摂取を防ぐために、次のことに注意しましょう。
- カフェインの摂取量を把握する
- カフェインの摂取を制限する
- カフェインを含む食品や飲料の同時摂取に注意する
- 体調に合わせて摂取量を調整する
- カフェイン摂取によるリスクを理解する
カフェインの致死量について教えてください。
カフェインの致死量は個人差が大きいため、具体的な数値を示すことは難しいです。あくまでも目安として成人の体重1kgあたり約150~200mgと示されている情報もありますが、カフェインの摂取量だけでなく摂取からの時間経過や代謝能力にも影響されるため、それ以下の量でも重度の中毒症状を起こす可能性があります。
急性カフェイン中毒を防ぐ方法はありますか?
急性カフェイン中毒を防ぐには、カフェインを過剰摂取しないことが重要です。成分表示を確認する習慣をつけ、カフェインの含有量を把握しましょう。カフェインを摂る際は時間を分散し一度に大量摂取しないことも大切です。カフェインを摂取しない日を作ったり、カフェインレスの飲料を選んだりするのもよいでしょう。市販のカフェイン入り医薬品は摂取量が増えないよう注意が必要です。カフェインの摂取による体調の変化に気付いたら速やかにカフェイン摂取をやめ、状況に応じて医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
カフェインはコーヒーやお茶などの嗜好品だけではなく、市販薬やエナジードリンクなどにも含まれており、日常的に摂取されている成分です。
しかし過剰に摂取すると急性カフェイン中毒を引き起こし、重症化すると後遺症につながったり命に関わったりする危険性があります。
急性カフェイン中毒の症状は、めまいなどの精神神経症状や循環器症状、消化器症状などさまざまです。
中毒症状はカフェイン摂取後数時間で現れることがほとんどですが、個人の代謝能力に差があるため出現時間や症状、程度が異なります。
すべての年齢層に起こる可能性があり、特にカフェインに敏感な方や子ども、妊娠中や授乳中の方や精神疾患を持つ方は症状が強く出る可能性があります。
成分表示を確認してカフェインの含有量を把握し、一度に大量摂取するのを避け1日量をコントロールしましょう。
カフェイン摂取にはリスクがあることを理解して、健康な毎日を過ごしましょう。
参考文献



