「白内障の手術後」に気を付けることはご存知ですか?術後の見え方も解説!
公開日:2025/03/19

中高年を中心に、白内障の手術を経験していたり、これから白内障の手術を受ける予定であったりする方がいるのではないでしょうか。
白内障は加齢とともに進行する病気です。
本記事は、白内障の手術後に気をつけたい点や術後の見え方などについての疑問点を、一つひとつ解説していきます。
これから手術を受ける予定の方やそのご家族は、ぜひ参考にしていただけると幸いです。

監修医師:
柳 靖雄(医師)
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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
目次 -INDEX-
白内障の手術後に気を付けること
術後に喫煙・飲酒してもよいですか?
白内障に限らず、手術後の飲酒や喫煙は避けましょう。アルコールは、血管を拡張する作用を持っています。血管の容積が増し、血液の流れが促されると傷からの出血リスクが高まります。手術の傷がある程度回復するまでに、1週間ほどの期間を要するため、少なくとも術後約1週間の禁酒が必要です。アルコールが血管を拡張させる反面、喫煙は血管を収縮させます。血管の収縮は血流を妨げ、傷が治癒する過程を遅らせるため、術後は禁煙を守りましょう。タバコの煙は眼の毛細血管や網膜に刺激を与えるため、飲酒同様に術後約1週間は避けるよう心がけましょう。
術後に入浴や運転をしても大丈夫ですか?
手術後1週間ほどは、感染予防のためにも入浴する場合は首から上を濡らさないようにします。洗髪したり洗顔したりしたいという場合には、眼を濡らさないように美容院などで洗髪するなどの工夫が必要です。洗顔の場合は、眼の周りを避けて、額や頬、顎といった場所を水で絞ったガーゼで拭き取るようにするとよいでしょう。女性の場合、スキンケアをする際も、誤って眼の周りに化粧水やクリームがつかないように調整が必要です。化粧をする場合は、眼の周りにファンデーションやアイシャドウなどを付けないようにする必要があります。運転は術後の検査で眼の状態を確認し、視野や視力などに問題がないかどうかを確認してから再開する必要があります。基本的には、術後1週間ほどで眼帯が取れると同時に運転が再開可能となるケースがほとんどです。しかし、傷の治癒過程には個人差があるため、自己判断で車を運転するのは控えましょう。
術後の翌日から仕事に行っても大丈夫ですか?
術後の職場復帰時期に関しては、患者さんがどのような職業に就いているかによって異なります。デスクワークなど座った状態で仕事をする方は翌日から仕事に復帰できます。ただし、長時間パソコンをみたり活字を見たりするのは眼精疲労をもたらすため、こまめに休憩を挟むのが大切です。身体を使う職種の方や運転が必要な職業の方は、手術後は視力が不安定であるため、術後の検査で傷の状態を確認してから再開するのが望ましいでしょう。家事や立ち仕事をする場合、汗には皮膚の常在菌が含まれているため、感染症を防ぐためにも汗をかかない程度の仕事量に留めるのがよいです。
術後どのくらいからスポーツや旅行をしてもよいですか?
術後にスポーツを楽しみたい場合は、医師の許可が必要です。散歩や椅子に座っての体操程度であれば、術後翌日から実施できます。ただし、屋外での実施は眼に埃や砂が入り、感染を起こしたり眼球が傷ついたりする原因となるため控えましょう。激しい運動や屋外および水中での運動、怪我のリスクがある種目の実施は医師の判断が必要です。旅行は近場であれば、眼帯が取れる時期の術後1週間を目安に可能となります。国内の長距離移動や海外旅行は、術後約1〜2ヶ月が経過してから体調に考慮して行くようにしましょう。
白内障手術後はどのくらいの頻度で通院が必要ですか?
白内障手術をしたら、通常は術後約1週間後と2週間後、1ヶ月後という間隔で定期的に通院します。通院間隔は術後の眼の状態によって、徐々に間隔を伸ばしていきます。白内障の手術は、両眼とも手術が必要な場合であっても、安全性の配慮から左右同時の手術を行うことは少ないです。そのため片方の手術を終えたら、間隔をおいてから、もう片方を手術します。左右とも白内障の手術をした場合、傷の程度や回復状態が異なるケースも考えられます。左右とも手術をしたからといって、通院間隔が同じとは限りません。
白内障手術後の見え方
手術後はすぐ視力が回復しますか?
白内障の手術は、薬の作用によって瞳孔を開いた状態で実施するため、手術直後からはっきりと見えるようになるとは限りません。回復が早い患者さんでも、少なくともはっきりとものが見えるようになるまでは、手術後数時間〜1日ほどの時間を要するでしょう。ただし回復の早さは人それぞれで、年齢や眼科疾患の有無によって異なります。白内障以外に眼科疾患を抱えていない患者さんや年齢が若い患者さんは回復が早く、人によっては麻酔が取れると見え方が改善したと感じる方もいらっしゃいます。
手術前と手術後で視界はどのように変わりますか?
白内障の術後は視界が青みがかって見える場合があります。これは、加齢により黄色に着色し、青の光を通しにくくなった水晶体を、若い方の水晶体と同じ程度に青色の光を通しやすい眼内レンズに入れ替えるためです。このため、術後にものが青みがかって見える現象が起きることがありますが、見え方に慣れてくると気にならなくなることがほとんどです。さらに眼内レンズは光をより集める傾向があるため、術前よりも光が眩しく感じたり黒いものが飛んで見えたりするように感じるケースもありますが、徐々に慣れていくでしょう。
術後まぶしく感じる場合はどうしたらよいですか?
術後に眩しく感じる羞明という変化は、手術によって黄色く濁った水晶体を眼内レンズに交換したものによる生理現象です。眼内レンズの挿入によって水晶体の濁りが解消されるため、眼に入る光の量が増えてしまうのが原因となります。羞明は術後の経過に伴い、次第に気にならなくなっていくものの、不快感を覚える場合はサングラスをかけるとよいでしょう。
術後にメガネが必要となるケースについて教えてください。
術前から遠視や近視、乱視などの視覚異常がある場合は術後もメガネが必要です。眼内レンズは限られた範囲にしかピントが合わせられないため、術前のメガネをかけてもピントが合わないと感じるでしょう。術後は裸眼視力が安定するまでに1ヶ月ほどかかりますが、その都度、自分の視力に合わせてメガネを調整しましょう。近年は、手術で使用する眼内レンズの種類が増えつつあります。多焦点レンズや乱視矯正眼内レンズなどの種類があるため、医師と相談して自分に見合った眼内レンズを使用するのが大切です。
白内障手術の合併症
術後の合併症について教えてください。
白内障の手術は、病気によって濁った水晶体を眼内レンズに替える手術です。術後早期の合併症で注意したいものが、感染症です。感染症は悪化すると眼の組織が溶けてしまう恐れもあり、失明のリスクがあります。手術後には患部に眼帯を装着し眼を保護しますが、擦ると傷の悪化につながるため、傷に触れないよう気をつけましょう。ほかにも出血やチン小帯断裂、網膜剥離や角質混濁といった早期合併症があります。寝返りなど姿勢の変化で手術した側の眼が圧迫されると、新しく挿入した水晶体がズレる原因となるため注意が必要です。また、術後数ヶ月以降に起こりうる合併症に、眼内レンズのズレや後発白内障があります。これらの合併症は、再手術が必要なケースがあるため眼の違和感や見え方の変化を感じた場合は、医療機関の受診が必要です。
術後の目薬はいつまで必要がありますか?
術後に使用する点眼薬は、それぞれ抗菌薬と抗炎症薬、消炎鎮痛薬の3種類です。抗菌薬は、感染予防を目的とし、術後1ヶ月まで使用します。抗炎症薬は、眼内の炎症や感染症を抑えるために術後約1〜2ヶ月間使用します。点眼薬のなかで使用期間が長い薬が消炎鎮痛薬です。消炎鎮痛薬は鎮痛の役割も持ちながらも眼内の炎症を抑える働きも持っているため、術後約6ヶ月間は継続して使用します。点眼薬は処方する医師によって薬品名が異なります。不安な場合は、薬剤師に薬の作用や試用期間について確認するとよいでしょう。
編集部まとめ
この記事では、白内障の患者さんが術後に日常生活を送るうえでの留意点について解説しました。
眼は私たち人間が生きていくうえで、大切な感覚器のひとつです。
白内障手術は身体への負担が少ない手術ではあるものの、合併症のリスクがゼロということではありません。
健やかな生活を送るためにも、術後の眼の状態にしっかりと気を配り、少しでも小さな変化を感じたら医療機関を受診するよう心がけましょう。