「白内障手術」の費用や術後にやってはいけないことはご存知ですか?【医師監修】

白内障は、カメラのレンズの役割をする眼の水晶体が、濁って見えにくくなる病気です。ほとんどが加齢に伴って発症するため、誰にでも起こる可能性があります。
しかし、短時間の手術で改善できるため、手術を受ける方が増えている病気です。本記事では白内障の手術に関して、手術の手順や使用するレンズの種類・費用・術後の注意点を解説します。
何となく視界がぼやけると感じる方は、白内障の可能性があります。白内障が心配な方は、参考にしていただければ幸いです。

監修医師:
柳 靖雄(医師)
目次 -INDEX-
白内障手術の流れとレンズの選び方
白内障手術の方法にはどのようなものがありますか?
取り出し方にいくつかの種類があり、通常は水晶体を超音波で細かく砕いて吸い出す超音波乳化吸引術で行われます。切開創が2~3mmと小さく、縫合せずに自然に癒着する治療方法です。
加齢の影響で水晶体が硬い場合や、水晶体の支持組織が弱い場合は、大きく切開して水晶体を丸ごと取り出します。水晶体を包む膜を残して、核と皮質を摘出する手術が水晶体嚢外摘出術で、膜も含めて全部摘出するのが水晶体嚢内摘出術です。手術方法は通常、事前に決めますが、手術中に変更することもあります。
白内障手術の流れを教えてください。
- 洗顔と消毒
- 麻酔
- 切開
- 水晶体を破砕して吸引
- 眼内レンズを挿入
- 眼帯で覆って終了
このような流れで、手術自体は15分前後で終わります。手術室に入ってから出てくるまでは30〜40分程度で、院内での滞在は2~3時間でしょう。翌日は経過観察で通院し、その後は医師の指示どおりの通院です。化粧・洗顔・洗髪・入浴は医師の許可が出るまで控えます。点眼・眼帯も医師の指示に従います。
眼内レンズはどのように選ぶのがよいですか?
メガネを使用したくない方は、広範囲にピントが合う多焦点レンズを選ぶとよいでしょう。このレンズだと遠くも近くもピントが合いやすいため、メガネをかける頻度が低くなります。ただし、メガネが不要になる一方で、見え方の鮮明さが低下する可能性があります。レンズを選ぶ際には事前に医師の説明を聞いて相談のうえ決めます。また、周囲に経験者がいれば感想を聞くのも有益でしょう。
白内障手術に痛みはありますか?
術中の痛みはほとんど感じませんが、終わった後に痛みを感じる場合はあります。そのときのために痛み止めが処方されるので、痛くて眠れないようなことはまずないでしょう。翌日以降に痛みが出ることはほとんどありません。ただし、数日間はゴロゴロ・チクチクとした異物感を覚えることがありますが、自然に収まります。
白内障手術には入院が必要ですか?
ただ基礎疾患があって合併症リスクが高い方や、高齢で単独行動が不安な方、ご自身が不安で入院を希望する方などは入院した方が安心できます。入院するかどうかは手術前に医師と相談して決めます。入院設備がないクリニックであれば、総合病院を紹介してもらえるでしょう。
合併症のリスクについて教えてください。
- 感染性術後眼内炎
- 前囊収縮
- 眼内レンズの偏位・脱臼
- 眼内レンズ混濁
- 後発白内障
感染性術後眼内炎は、手術部位が細菌に感染して組織が壊れる症状で、対応が遅れると失明のリスクがあります。感染予防が大切で、注意事項を守り異常を感じたらすぐに手術を受けた医療機関を受診しましょう。
前嚢収縮は手術時に切開した前嚢部分が線維化して白濁した症状で、レーザー治療で治せます。眼内レンズ偏位・脱臼は固定がうまくいかずズレが生じた状態で、再手術での対応です。眼内レンズ混濁はカルシウムの沈着などで発生し、レンズ交換で対応します。後発白内障は残った水晶体上皮細胞が増殖して白濁したもので、レーザーで切開します。
白内障手術について
白内障手術の費用はどのくらいですか?
- 日帰りで単焦点レンズ使用:約150,000~160,000円(税込)
- 入院で単焦点レンズ使用:約230,000~250,000円(税込)
個人負担額は上記費用に負担割合(1~3割)をかけた金額になります。
多焦点レンズの場合は選定療養が適用され、手術費用は保険適用になり、多焦点レンズにかかる費用は自由診療で自己負担です。金額は単焦点レンズの手術費用に、多焦点レンズ代を足した金額になります。
レンズ代はレンズの種類や各医療機関によって異なりますが、おおむね200,000〜300,000円(税込)です。
白内障手術は健康保険が適用されますか?
レンズ代やそれにかかる検査代は自由診療になり、全額が自己負担になります。レンズの費用は種類や医療機関によってまちまちです。
白内障手術後の注意点
白内障手術後に行ってはいけないことはありますか?
- 強く眼を閉じたり周囲をこすったりしない
- 点眼薬は指示どおりさし続ける
- 眼を頻繁に動かさない
- 洗顔と洗髪は1週間避ける
- 当日は入浴しない・翌日以降は入浴後に抗菌薬を点眼
- 力仕事は1週間休む・軽労働や家事は翌日から可能
- 激しい運動は1ヶ月控える
- 化粧は1週間控えアイメイクは1ヶ月控える
- 車の運転は視力0.7以上なら医師と相談のうえ可能・距離感の変化に注意
- 新しいメガネの作成は手術後1ヶ月経過してから行う
手術後は当分の間上記の注意事項を守って、注意深く穏やかな生活を心がけましょう。
白内障手術後すぐに視力は戻りますか?
直後の見え方も個人差があり、多くの方でまぶしさを訴える例が見られます。これは濁りが取れて眼に入る光の量が増えたためで、時間とともに軽減するものです。
ほかにも視界が青みがかって見える現象や糸くず、幕のようなものが見える場合もありますが、やがて慣れて気にならなくなります。
いずれも濁りで見えなかったものやレンズの反射光が見えている現象です。また手術の超音波で一時的に生じた角膜の曇りや、多焦点レンズの見え方に脳が慣れない現象でも視力が落ちますが、しばらくすると回復します。
編集部まとめ
白内障の手術は少し前まで入院して行うものでしたが、現在では日帰りが主流です。その手術の概要や一連の流れ・レンズの選び方・費用・注意点などを解説しました。
眼の水晶体を取ってなかにレンズを入れるのは、実は大変繊細で高度な手術です。しかし、医療技術の進歩により、負担が少なく短時間で受けられる手術になりました。費用も保険適用で少ない負担で受けられます。
眼がかすむ・ぼやけるなどの変調を感じたら、近くの眼科で診察を受けることをおすすめします。白内障を手術することで、明るい日常が取り戻せるでしょう。