「大人がマイコプラズマ肺炎」を発症するとどんな症状が現れるかご存知ですか?
公開日:2025/11/12

マイコプラズマ肺炎は子どもがかかる病気と思われがちですが、大人も感染することがあります。
本記事ではマイコプラズマ肺炎の大人への感染について以下の点を中心にご紹介します。- マイコプラズマ肺炎について
- 大人のマイコプラズマ肺炎
- マイコプラズマ肺炎の診断・治療・予防

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
マイコプラズマ肺炎について
マイコプラズマ肺炎とはどのような病気ですか?
マイコプラズマ肺炎は、”肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)”という細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。小児や若年層に多くみられますが、成人にも発症することがあります。
発熱や喉の痛みなど風邪に似た症状から始まり、その後、乾いた咳が数週間続くことがあります。重症化することは少ないものの、肺炎として適切な治療が必要です。
マイコプラズマ肺炎は一年を通じて発生しますが、感染は飛沫を介して広がるため、注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎はどのような症状がみられますか?
マイコプラズマ肺炎は、発熱、倦怠感、頭痛、のどの痛みなど、風邪に似た症状から始まります。
その後、乾いた咳が徐々に強くなり、長引くのが特徴で、咳は解熱後も3〜4週間続くことがあり、特に夜間に悪化しやすい傾向があります。
小児は軽症で済むことが多いとされていますが、年長児や成人は症状が重くなる傾向にあります。また、稀に中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を引き起こすことがあり、重症化すると肺炎が進行するケースもあります。
マイコプラズマ肺炎の感染経路を教えてください
マイコプラズマ肺炎の主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
感染した患者さんの咳やくしゃみに含まれる細菌が空気中に飛び散り、それを吸い込むことで感染が広がります。また、細菌が付着した手や物に触れた後、口や鼻に触れることで感染することもあります。
家庭や学校などの場所では感染が広がりやすく、なかでも小児や若年層で発症することが多いとされています。
マイコプラズマ肺炎の潜伏期間を教えてください
マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は2〜3週間と長いのが特徴です。
このため、感染していてもすぐには症状が現れず、知らないうちに周囲の方にうつしてしまう可能性があります。
インフルエンザのように急激に感染が拡大することは少ないものの、家庭や学校、職場などの場所では感染が広がることがあります。なかでも、症状が軽いまま過ごしている患者さんが周囲に気付かれずに接触を続けることで、感染がじわじわと広がるとされています。
また、症状が治まっても体内に病原体が残っていることがあり、咳が続く間は周囲への感染リスクが残ります。
そのため、しばらくの間はマスクの着用を心がけ、激しい運動を避けるなど、身体に負担をかけないよう注意することが大切です。
大人のマイコプラズマ肺炎
マイコプラズマは大人もうつりますか?
マイコプラズマ肺炎は全年齢に感染の可能性があり、大人もうつることがあります。特に家庭内では、子どもが感染した場合に看病する親や同居家族が感染するケースがよくみられます。
大人の症状は子どもと共通する部分もありますが、高熱を繰り返したり、咳に痰が絡んだりすることがあります。
また、子どもよりも重症化しやすい傾向があり、特に高齢者では呼吸不全を引き起こすリスクもあるため注意が必要です。
大人のマイコプラズマ肺炎の症状の特徴を教えてください
大人のマイコプラズマ肺炎は、子どもと同様に発熱や倦怠感、咳などの症状がみられますが、いくつか特徴的な違いがあります。
大人の場合、発熱が続くだけでなく、一日のうちで高熱と平熱を繰り返す”弛張熱”がみられることがあります。
また、咳の特徴も異なり、子どもは乾いた咳が長く続くのに対し、大人は気道の炎症が進むことで痰を伴う湿った咳に変わることがあります。
さらに、大人は重症化しやすく、高齢者では肺炎が進行し呼吸不全や胸水貯留を引き起こす可能性があるため注意が必要です。免疫反応が強いことで炎症が悪化し、肺を傷つけてしまうことも指摘されています。
長引く咳や発熱が続く場合は、風邪と自己判断せず、早めに医療機関を受診することが重要です。
大人がマイコプラズマ肺炎になったら仕事は休んだ方がよいですか?
マイコプラズマ肺炎にかかった場合、出勤停止の規定はありませんが、体調や周囲への感染リスクを考慮し、仕事を休むことが推奨されます。
解熱後すぐに出勤すると、身体への負担が大きくなり回復が遅れる可能性があるため、解熱後2日間は安静に過ごすことが望ましいとされています。
また、マイコプラズマ肺炎は飛沫感染で広がるため、職場での感染拡大を防ぐ配慮も必要です。発熱や強い咳が続く間は無理をせず、在宅勤務を活用するのも一つの方法です。
マイコプラズマ肺炎の診断・治療・予防
マイコプラズマ肺炎はどのように診断されますか?
マイコプラズマ肺炎の診断は、問診や聴診のほか、必要に応じて検査を実施されます。
迅速な診断には、喉のぬぐい液を採取する抗原検査が用いられることが多く、15分程度で結果が判明します。
ただし、この検査は、陰性でも感染の可能性があるため注意が必要です。
より精密な診断には、血液検査や核酸増幅法(LAMP法・Qプローブ法)などが行われます。血液検査ではマイコプラズマに対する抗体を測定しますが、結果が出るまでに時間がかかります。
ただし、核酸増幅法は、実施できる医療機関が限られているため、注意が必要です。
どの検査を受けるかは、患者さんの症状や医師の判断によって決まるため、診察時に相談することが重要です。
マイコプラズマ肺炎の治療法を教えてください
マイコプラズマ肺炎の治療には、マクロライド系の抗菌薬が用いられます。
ほとんどの患者さんは軽症で済み、適切な治療によって症状が徐々に改善していくとされています。
ただし、近年では抗菌薬が効かない”耐性菌”の増加が指摘されており、その場合は別の抗菌薬が選択されることもあります。
軽症の場合は自宅での安静が基本ですが、重症化すると入院が必要になることもあります。高熱が続いたり、呼吸が苦しくなったりした場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。また、咳が長引くことが多いとされているため、症状が続く場合は適切な治療を受けることが推奨されます。
マイコプラズマ肺炎の予防法を教えてください
マイコプラズマ肺炎には有効なワクチンがなく、予防法は確立されていません。
そのため、日常的な感染対策を徹底することが重要です。
予防の基本は、手洗いや咳エチケットを守ることです。外出後や食事の前後には石鹸を使って丁寧に手を洗い、咳やくしゃみをする際にはハンカチや腕でお口を覆うようにしましょう。また、家庭内感染を防ぐため、食器やタオルの共有を避けることも効果的とされています。
なかでも、家族のなかに感染した患者さんがいる場合は注意が必要です。こまめな換気を行い、マスクを着用することで感染リスクの減少が期待できます。
免疫力を維持するために、十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけることも予防の一環となります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
マイコプラズマ肺炎は、長引く咳や発熱を伴う感染症で、特に秋冬に発症しやすい病気です。大人も子どもも感染する可能性があり、重症化を防ぐためには早期の診断と適切な治療が大切です。
予防のために、手洗いや咳エチケットを徹底し、体調管理を心がけましょう。
編集部まとめ
ここまでマイコプラズマ肺炎の大人への感染についてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。
- マイコプラズマ肺炎は長引く咳や発熱を特徴とする細菌性の呼吸器感染症で、飛沫や接触で感染し、特に小児に多いとされている
- 大人のマイコプラズマ肺炎は高熱や長引く湿った咳を伴い、重症化しやすく、家庭内や職場で感染が広がる恐れがある
- マイコプラズマ肺炎の診断は抗原検査や血液検査で行い、治療は抗菌薬が基本となる




