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「うつ病」を発症すると「顔の表情」はどのように変化する?うつ病の方が使う言葉も解説!

 公開日:2025/01/29
「うつ病」を発症すると「顔の表情」はどのように変化する?うつ病の方が使う言葉も解説!

うつ病とは、脳の働きの低下や不調が原因で、落ち込みなどうつ症状が目立つ疾患です。症状はさまざまですが、行動の変化の1つとして顔つきや表情にも出ます。

思春期から中高年まで誰でもなりうる病気であるにも関わらず、その症状や対処法はあまりよく知らないという方も少なくありません。

今回の記事では、うつ病の方の顔の表情の特徴について、行動やよく使う言葉の特徴も併せて解説していきます。

心身の変調を感じて心療内科への受診を検討しているという方、身近な家族や友人にうつ病を疑う症状があるという方は参考にしてみてはいかがでしょうか。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

うつ病の方の顔の表情・行動・よく使う言葉の特徴

悩む女性

うつ病の方の顔の表情の特徴を教えてください。

うつ病にかかると気分が落ち込みます。そのため、無表情でぼんやりとした表情など、感情の表出が乏しくなるのが特徴でしょう。うつ病の人の顔の特徴には、以下のようなものがあります。

  • 無表情
  • ぼんやりしている
  • 作り笑いしているように見える
  • 悲しげで泣き出しそうに見える
  • 元気消失
  • 顔色が悪い

よく笑っていた方が笑わなくなったり、口角が下がったりするといった特徴もあります。笑っていたとしてもどこか不自然で、悲しげで泣き出しそうに見えることもあるかもしれません。夜眠れない・何度も起きるなどの症状から、目の下にクマができたり、顔色が悪くなったり、疲れた表情を見せることもあります。

うつ病で表情に変化が表れる理由を教えてください。

うつ病にかかると脳の働き全般が本調子ではなくなるため、顔つきや表情にも以前とは違う変化が現れます。また、うつ病では感情を表に出すことが難しくなるため、顔から表情が消えたようになって無表情になります。何をしても楽しいと思えない無気力感から、ぼんやりした顔つきになることもあるかもしれません。このような脳機能全般の不調が、うつ病で顔つきが変化する主な理由と考えられるでしょう。

うつ病の方の行動の特徴を教えてください。

うつ病は気分障害の一種で、脳の機能低下によって心身や行動にさまざまな症状が現れる精神疾患です。うつ病の方の行動には、以下のような特徴があります。

  • 周りの人とコミュニケーションしなくなる
  • 仕事などでミスが増える・遅刻や欠勤が増える
  • 夜眠れなくなる・朝起きられなくなる
  • アルコール・タバコなどに依存するようになる
  • 自宅に引きこもり外出しなくなる
  • 急に泣き出す・怒り出すなど感情の起伏が激しくなる

うつ病は、適応障害のように「会社に行きたくない」といった何か特定のストレスが原因となって発症するわけではありません。自分でも原因がはっきりとはわからないまま、「何もやる気が起きない」「生きているのが辛い」といった言動も多くなるため、それに続く行動にも注意が必要です。早めに精神科・心療内科での適切な検査・診断が必要となります。

うつ病の方がよく使う言葉の特徴を教えてください。

うつ病の方は何事も悲観的にとらえてしまいがちになり、生きることに意味を見出せずに「自分は不幸だ」「絶望的だ」など否定的な言葉をよく使うようになります。「絶対~だ」「~しなければいけない」「こうしなければだめ」 といった断定的な言葉使いも増えるでしょう。ネガティブで否定的な言葉・決めつけるような断定的な言葉のほかにも、視野が狭くなるため「わたしは」「ぼくは」「自分は」など一人称単数で話すことが多くなります。なかには、死を意識する方もおり、マイナスな言葉や消極的な言葉をよく使うようになるのも特徴でしょう。

身近な方がうつ病かもしれない場合の対処法

男性を慰める女性

身近な方がうつ病かもしれない場合どのような対処をしたらよいですか?

身近な方がうつ病かもしれない場合は、まずは静養を優先しましょう。心の不調のときこそ、家族や身近な方がゆっくり休息できる環境を支えることが大事です。いつもと違う態度や行動に戸惑うかもしれませんが、励ましや厳しい言葉ではなく、さりげない気遣いによって苦しむ患者さん本人が静養するように見守りましょう。ゆっくり憩いの時間を過ごし、身体の回復を待ってから、病院にいくことをすすめてみましょう。

うつ病の方の話を聞く際の注意点を教えてください。

うつ病の方は、多くの悩みを抱えており、話を聞いてもらうことで自分を理解してもらえたことに喜びや勇気を得ることができます。話を聞く際には、プライバシーが守られ、落ち着いて話せる場所を用意しましょう。うつ病の方の話を聞く際は、相手の感情や体験を理解しようとする態度を示し、話の腰を折らずきちんと聞くことが大切です。また、うつ病の方は自分を過小評価し、自分に価値がないと思い込む無化価値感の症状が現れることがあるかもしれません。その場合は、否定的な言葉かけをしない・不用意に激励してプレッシャーを与えないことにも注意しましょう。否定的な言葉かけを行うと症状に追い打ちをかけ、さらに心理的な窮地へと追い込んでしまう可能性があります。うつ病の回復には長い時間がかかることもあることを知っておき、本人のペースを尊重し、焦らずに支えることが求められます。

医療機関への相談を促した方がよいですか?

以前と違う様子や状態が続くようでしたら、医療機関への相談をすすめてみるとよいでしょう。厚生労働省の全国医療機関検索サイトでは、全国の精神科・心療内科を紹介しています。うつ病などという言葉を使わずに、疲れが抜けない状態がずっと続いているから心配だと気持ちを伝えて受診するよう打診します。初回の受診には家族が付き添うことが望ましいでしょう。また、長時間労働の恐れがある場合は、総合労働相談や労働条件相談など医療機関以外にも相談をした方がよいかもしれません。過重労働がうつ病の発症につながっていると考えられる場合など、家族の方からでも相談は可能です。

うつ病の症状や治療方法

カウンセリング

うつ病で精神面や身体に出る症状を教えてください。

うつ病は、脳の不調から精神・身体の両面にさまざまな症状が現れる気分障害です。精神面から現れるうつ症状には、意欲の低下・抑うつ気分・不安・イライラ・思考力や判断力の低下があります。さらに、身体への影響として、身体バランスが崩れることでさまざまな自律神経失調症のような症状が出ることがあるかもしれません。身体面に現れる症状には、食欲不振・不眠・過眠・倦怠感・喉の渇き・頭痛・動悸・めまい・耳鳴り・胃のもたれ・便秘などです。心と身体は密接な関係があり、脳機能の変化が行動にも変化を与えることがあるでしょう。例えば、うつ病によって行動の1つである顔つきや表情にも変化が現れるようになります。

うつ病はどのように診断されますか?

うつ病は、目に見えない心の病気なので、患者さん本人からの問診を中心に判断せざるを得ません。抗うつ気分・興味と喜びの喪失・易疲労感の増大のうち2つ以上の症状があり、かつ以下の症状の2つ以上のチェック項目が2週間以上続く場合、うつ病と診断されます。

  • 集中力と注意力の減退
  • 自己評価と自信の低下
  • 罪責感と無価値感
  • 将来に対する希望のない悲観的な見方
  • 自傷あるいは自殺の観念や行為
  • 睡眠障害
  • 食欲不振

なお、医師によって診断のブレをなくすために、アメリカの精神医学会のDSMとWHOが作成したICDの2つの判断基準があります。

うつ病の治療方法を教えてください。

うつ病が発症する原因には、脳のセロトニン不足が関与するといわれています。セロトニンは、脳のバランスを整える物質で、不足により物事への興味や反応が低下してしまって自発性がなくなることもあり、さまざまな脳の機能が低下するため薬物療法で補うことが考えられます。脳内のセロトニンが補充され気分の安定性が増すと、落ち込みや不安が目立たなくなるでしょう。また、脳の考える能力や認知機能全般が低下することによって、思考力・集中力・記憶力が低下します。さらに、身体のバランスも崩れるため、自律神経失調症のような状態に陥ることもあるかもしれません。運動療法のほかに散歩や音楽などリラックスして気分が楽になることを生活に取り入れるのも有効です。うつ病の治療には、休養をメインに環境調整・薬物療法・精神診療といった治療で気長に対処していきましょう。

編集部まとめ

落ち込む男性
今回は、うつ病の方の顔の表情の特徴・行動やよく使う言葉の特徴などを解説しました。

うつ病は、患者さんが心身の変調を自覚していないこともあり、治療が遅れる傾向があります。

今回お伝えしたようなうつ病の表情や顔つきは本人にはわからないため、心療内科を受診するまでには、相当の時間を要することもあるかもしれません。

表情の変化やうつ病特有の顔つきや言動が現れた場合には、早めに精神科や心療内科を受診することをおすすめします。

受診を焦る必要はありませんが、家族や周りが顔の表情や行動の変化に気付くことで、症状が重くなる前に治療を開始できることも覚えておきましょう。

この記事の監修医師