目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「動脈硬化の原因」はご存知ですか?動脈硬化になりやすい方の特徴も解説!

「動脈硬化の原因」はご存知ですか?動脈硬化になりやすい方の特徴も解説!

 公開日:2025/01/11
「動脈硬化の原因」はご存知ですか?動脈硬化になりやすい方の特徴も解説!

動脈硬化は動脈が硬くなり弾力性が失われる病気のことですが、突然発症する病気ではなく若い頃から蓄積した生活習慣が要因になるため、危険因子を理解した予防対策が重要です。

動脈硬化を発症する原因に肥満や中性脂肪の増加がよく挙げられますが、そのほか喫煙・飲酒・ストレスなども動脈硬化の危険因子になります。

また、動脈は心臓から全身に血液を送る役割があるため、異常が起こるとさまざまな病気を引き起こす原因になります。

特に冠動脈疾患や脳梗塞などの病気と関連が深く、一度動脈硬化を発症すると治療が難しくなるため、動脈硬化を起こさないための予防法を知っておくことは大事です。

今回は、動脈硬化の原因や予防方法などを詳しく解説します。

小鷹 悠二

監修医師
小鷹 悠二(おだかクリニック)

プロフィールをもっと見る
福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月 宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月 東北大学病院循環器内科・同大学院 医員 / 2017/4月~2018/5月 仙台オープン病院 循環器内科医長 / 2018/5月~ おだかクリニック 副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。 また、医師業務以外の副業も積極的に行っており、ビザスクなどを通して企業の医療アドバイザー業も副業として行っており、年間70社以上の会社にアドバイザーとして助言を行うなどしている。 ライティングも行っており、m3.comや、Ubie病気のQ&A(https://ubie.app/byoki_qa/doctors/yn8ueqd6kjn)などにて定期的に執筆活動を行っている。

動脈硬化の原因

血圧測定

動脈硬化の原因は何ですか?

動脈硬化は、加齢・脂質異常・喫煙・飲酒・糖尿病・高血圧などの危険因子が重なって発症すると考えられます。なお、動脈硬化は3種類に分類されます。

  • 粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化):太い動脈に発症する
  • メンケベルク型動脈硬化:四肢・骨盤内・腸間膜などが石灰化する
  • 細動脈硬化:脳内や腎臓の細い動脈が硬化する

一般的な動脈硬化は粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)を指します。

動脈硬化とはどのような状態ですか?

動脈硬化とは、動脈壁が脂肪で厚くなったりカルシウムの沈着で硬くなったりした状態です。健康な動脈壁は、弾力があるので血管内のコレステロールの流れはスムーズです。しかし、加齢や生活習慣病などの危険因子の影響で血管内皮組織が傷つくことで、悪玉コレステロール(LDL-C)が血管壁に入り込みやすくなります。すると、LDL-Cは酸化変性され、ドロドロのプラーク(お粥のようなやわらかい状態)になるのです。そして徐々に蓄積したプラークで血管が狭まり、臓器に酸素が届きにくくなります。プラークが増大して内膜が薄くなって破裂すると血栓ができ、血管が詰まるため心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高まるでしょう。なお、プラークが破裂するまでは無症状の場合が少なくありません。

動脈硬化が起こるメカニズムを教えてください。

動脈や静脈は、外側から外膜・中膜・内膜の3層で形成され、内膜のなかを血液が流れています。内膜には内皮下組織と内皮細胞があり、内皮細胞には血管の収縮・拡張・透過性を調整する役割があります。動脈硬化は、内皮細胞の働きが弱って生じたすき間に悪玉コレステロールが侵入して起こる病態です。内膜や中膜に起こりやすく、冠動脈・大動脈・頸部・腎臓・四肢などに発生するリスクが高まります。

ストレスが原因で動脈硬化になることはありますか?

ストレスが原因で発症する病気は少なくありませんが、動脈硬化もストレスやうつが要因になることがわかっています。循環器疾患は、肥満・高血圧・喫煙などの全身の血管の動脈硬化を生じさせる疾患が原因の1つになりますが、ストレスやうつが関与する場合も少なくありません。うつ症状がある方は健康的な生活習慣を維持するのが難しくなります。また、うつで生じるストレスホルモンは直接循環動態に影響を与え、自律神経障害・血小板止血作用の過度な活発化・血管内皮機能の低下などを起こします。

動脈硬化になりやすい方の特徴を教えてください。

動脈硬化は生活習慣病と関連の深い疾患です。以下に該当する方は発症リスクが高まる可能性があります。

  • 男性
  • 閉経後の女性
  • 喫煙者
  • 過度の飲酒
  • 高脂肪・高カロリー食を好む方
  • 運動不足
  • 両親に動脈硬化の病歴がある方
  • 過度なストレスが継続的にある方
  • 睡眠不足

加齢や老化が動脈硬化を生む原因になりますが、若い頃からの生活習慣の乱れも動脈硬化の危険因子になります。

動脈硬化が原因で起こる病気

胸を押さえる人

動脈硬化が原因で起こる病気にはどのようなものがありますか?

動脈硬化は死亡の直接的な原因にはなりませんが、さまざまな病気の要因になります。
以下が主に動脈硬化が原因で起こる病気です。

  • 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
  • 脳梗塞(非心原性)
  • 腎梗塞
  • 大動脈瘤
  • 末梢動脈疾患
  • 手足の壊死

血管の狭窄や血栓が心臓やそのほかの臓器に障害を起こします。血流が止まると心停止など重篤な症状に発展するでしょう。また、脳梗塞が起こった場合は、血管の閉塞箇所によってめまい・言語障害・視覚障害・感覚障害・運動障害・認知症などが起こる可能性があります。

動脈硬化を早期発見するためのポイントを教えてください。

動脈硬化は自覚症状がほとんどありません。そのため、動脈硬化の危険因子がある方は、定期的に健康診断を受けたり毎日血圧を測定したりすれば早期発見につながります。クリニックでの動脈硬化の検査方法は以下のものがあります。

  • 血液検査
  • 画像検査=超音波検査・CT・MRI・血管造影
  • 血管内皮機能測定=PWV検査(脈波伝播速度)・ABI検査(足関節上腕血圧比)・FMD検査(血流介在血管拡張反応)・CAVI検査(心臓足首血管指数)

動脈硬化は初めに内皮組織に傷がつき血管の拡張がうまくできなくなるため、FMD検査をはじめとする血管内皮機能の測定は、病態をみつけるのに有効な検査方法です。治療効果や予後の予測の判定にも役立ちます。

動脈硬化は治りますか?

発症したプラークは自然消滅しません。なお、動脈硬化を生じさせた危険因子を放置すると動脈硬化は徐々に悪化します。そのため、動脈硬化を引き起こした原因を特定し個々に適した治療が必要です。動脈硬化の治療には以下のものが有効です。

  • 食事療法:塩分や飽和脂肪酸を控え、野菜・果物・魚類を積極的に摂取する
  • 運動療法:毎日30分以上の有酸素運動
  • 薬物療法:スタチン・抗血小板薬・ACE阻害薬・ARB
  • 外科的治療:経皮的冠動脈形成術・冠動脈バイパス術

生活習慣の改善が重要なポイントになります。過食や過剰な飲酒を控え、食物繊維が多く含まれる食品を積極的に増やすようにしましょう。

動脈硬化の予防方法

料理する男性

動脈硬化予防のために食事や生活習慣で注意すべきポイントは何ですか?

動脈硬化を予防するためには、脂肪分の少ないものを摂取するように心がけましょう。肉類より魚介類を多めにとることを意識し、塩分や炭水化物を控えるようにします。塩分の代わりに香辛料や酢を利用するとよいでしょう。野菜や果物などの繊維質を含む食材やオリーブオイルなども有効です。ただし、果物や果糖含有加工食品の過剰摂取は中性脂肪が上昇するため注意が必要です。動脈硬化の予防に日本食を基本にするのもよいでしょう。禁煙や節酒は効果的ですが、意識しすぎることでストレスがたまるようでは逆効果になりかねないため、自身の危険因子に適した方法をみつけるようにしましょう。

動脈硬化予防に効果的な運動を教えてください。

有酸素運動は、ややきついと感じる程度で毎日30分以上実施すると動脈硬化の予防になります。毎日続けるのが難しい方は、1日30分の有酸素運動を週3回以上を目指して行いましょう。脱水予防として、1時間に100ml以上の水分補給も忘れないようにしましょう。有効な有酸素運動には、水中歩行・水泳・ウォーキング・速歩・ベンチステップ運動などがあります。一方、激しい運動を突然行うと筋肉や骨を傷めたり、突然死や心筋梗塞の危険があったりするため注意が必要です。特に高齢者は担当の医師と相談して過度な負担にならない方法をとるようにしましょう。

編集部まとめ

運動する人
動脈には、心臓の収縮で起こる圧力に耐えるための動脈壁があります。通常はエネルギー源になるコレステロールは、動脈壁内をスムーズに通過して体内に取り込まれています。

しかし、コレステロールが変性したり大量に取り込まれたりして内膜にプラークが蓄積されると、血栓ができ血液の流れが悪くなるのが動脈硬化の状態です。

プラークが形成される原因は、脂質異常・糖尿病・高血圧・喫煙・肥満などの生活習慣病の危険因子が重複したことによって起こります。

動脈硬化は冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)や脳梗塞などの疾患の引き金になるため、予防や早期発見が重要です。

中高年で発症する場合がほとんどですが、長期間の生活習慣が原因になることも少なくありません。

そのため、若い時期から正しい食事や運動の習慣をつけることで動脈硬化の発症を予防できます。

動脈硬化は初期の自覚症状がほとんどないといわれているため、ほかの疾患を誘発してから発見される場合も少なくありませんが、血液検査や画像検査でみつけられる病気です。

動脈硬化の危険因子がある方は定期的に検診を受け、コレステロール値の変化を観察しましょう。

この記事の監修医師