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「うつ病になりやすい人」の特徴はご存知ですか?セルフチェック方法も解説!

 公開日:2024/12/19
「うつ病になりやすい人」の特徴はご存知ですか?セルフチェック方法も解説!

「うつ病」という言葉を聞いたことがある方は少なくないでしょう。しかし、なぜ罹患するのか・どのような症状があるのか・どうやって治療するのかを答えられるでしょうか。

「心の弱い人がなる病気なんじゃないの?」「自分には関係ない」そう思っている方もいるかもしれませんが、うつ病は環境やきっかけ次第で誰でもなりうる病気です。

この記事ではうつ病の特徴や原因・症状・治療方法を解説していきます。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

うつ病の原因や症状

寝不足・不眠症・ストレス・うつに悩む男性

うつ病とはどのような病気ですか?

うつ病は、長期間にわたって続く気分の落ち込みや興味・喜びの喪失を主な特徴とする精神疾患です。精神的・身体的なストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなったり考え方が否定的になったりし、日常生活や人間関係に深刻な影響を及ぼす可能性があります。適切な治療を受けることで、多くの人が回復へと向かうことができます。うつ病は一人で抱え込むのではなく、周囲の理解と協力を得ることが必要です。

どのような症状が出るのですか?

主な症状として以下が挙げられます。

  • 強い悲しみや絶望感、空虚感を感じる
  • 以前楽しんでいた活動に興味を持てなくなる
  • 疲れやすさ、エネルギーの欠如、物事に集中できない
  • 不眠(寝付けない、途中で目が覚める)や過眠(寝すぎる)
  • イライラする、怒りっぽくなる
  • 集中力がなくなる、物事が判断できない
  • 食欲不振や過食、体重の急激な増減
  • 自分を無価値だと感じる、過度な罪悪感を抱く
  • 死にたいと思ったり、自傷行為を考えたりする

上記の症状が2週間以上続いている場合、うつ病の可能性があります。疑わしい症状があれば早めに受診しましょう。

うつ病の原因ははっきりわかっているのでしょうか?

うつ病の原因は科学的に解明されていませんが、脳内の神経伝達物質や神経回路の異常が関与していると考えられています。主要な仮説の一つが、脳内のセロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンといった神経伝達物質の不足やバランスの乱れです。これらの物質は感情や行動、ストレス応答を調整する役割を果たします。特にセロトニンの減少が、気分の低下や興味の喪失といった症状に関係していると考えられております。脳の神経細胞同士の接続や再編成能力の低下、コルチゾールというストレスホルモンの過剰分泌、 炎症・免疫系の関与も原因の一つであると考えられています。うつ病は多様な要因が絡み合う複雑な疾患であり、遺伝的要因・心理社会的要因・生物学的要因が複雑に相互作用して発症する疾患です。研究は進歩を続けていますが、現時点では解明されているとはいえず、引き続き多角的なアプローチが求められています。

どのような出来事がうつ病のきっかけになりやすいですか?

うつ病の発症は心理的・社会的な要因・生物学的な要因・環境要因が複雑に絡み合うことが多いです。以下に主なきっかけを挙げます。

  • 長期間の強いストレス(仕事のプレッシャー、家族や恋人との不和、経済的問題など)
  • 親しい人の死、離婚、失業などの喪失体験
  • 社会的なつながりが少ないため生じる孤立感・孤独感
  • 遺伝的な素因
  • セロトニンやノルアドレナリンなど脳内化学物質の変化
  • ホルモンバランスの変化
  • 結婚、引っ越し、新しい仕事など重大なライフイベント
  • 虐待やトラウマ
  • 完璧主義な性格
  • ネガティブな思考

これらの複数の要因が重なり合うことで発症リスクが高まります。例えば、ストレスフルな仕事環境にいる人が、過去にトラウマを抱えていたり、家族歴としてうつ病の素因を持っていたりする場合、発症リスクが増加する可能性があります。

うつ病になりやすい人の特徴やセルフチェック方法

体調不良を訴える男性

うつ病になりやすい人の特徴を教えてください。

几帳面・完璧主義・真正直・がんばり屋・内向的で自分の中に閉じこもりがちな方が、うつ病になりやすいといわれています。また、慢性疾患にはうつ病が合併しやすいことが知られています。うつ病の発症率はがんで約20~38%・糖尿病は約25%・冠動脈疾患は約16~19%です。

うつ病にかかる人の割合はどのくらいですか?

厚生労働省の調査では、うつ病の生涯有病率は約6%であると報告されています。特に、女性のほうが男性よりも罹患率が高い傾向にあるようです。しかし慶應義塾大学病院の資料では、日本人の6人に1人(約16%)が一生のうちに何らかの状態でうつ病を経験するとされています。ただし、これは軽症から重症までうつ病全体の広義の概念を指しており、医療機関で診断され治療を受ける人はこれより少ないです。

うつ病のセルフチェック方法を教えてください。

日本うつ病学会では、以下の項目を2週間以上感じた場合に、うつ病の可能性を疑うことを推奨しています。

  • ほとんど一日中、悲しく憂うつな気分が続く
  • 趣味や興味を持っていたことが楽しく感じられない
  • 食欲や体重に大きな変化がある
  • 睡眠に問題がある(不眠や過眠)
  • 疲労感が強く、エネルギーがない
  • 自分に価値がないと感じる
  • 集中力が低下している
  • 死や自殺について考えることがある

上記の症状が5つ以上当てはまる場合、医療機関での相談を推奨しています。厚生労働省の簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)や一般のアプリやオンラインツールでも用いられているPHQ-9というテストも有効な指標です。ただし、セルフチェックはあくまで参考であり、最終的な診断は専門の医師が行います。もし、セルフチェックでうつ病の可能性が高いと出た場合や、自分で気になる症状がある場合は、早めに心療内科や精神科に相談しましょう。

うつ病の治療方法

テーブルの上の飲み薬

うつ病は治りますか?

うつ病は、適切な治療を受けることで多くのケースで改善が見られます。軽度〜中程度のうつ病の場合では数ヶ月から1年程、重症例では数年以上の治療とサポートが必要となる場合もあるといわれております。しかし、経過には個人差があり一概に治療期間を定めることはできません。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。うつ病の再発リスクは完全に排除することはできませんが、以下の方法でリスクを減らすことができます。

  • 治療を途中で中断しない(特に薬物療法)
  • 生活習慣を整える(睡眠、運動、ストレス管理)
  • 支援体制(家族、友人、医療チーム)を活用する

治療方法を教えてください。

うつ病に用いられるのは主に薬物療法、次いで認知行動療法・心理療法などです。うつ病に処方される治療薬は、以下の3つに分かれます。

  • ベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする抗不安薬
  • 抗うつ薬
  • 抗精神病薬

抗不安薬は服用して数十分で効き目が出ることが多いですが、大量を長期間続けることの問題も指摘されています。一方で抗うつ薬は、服用してから効果があるまでに数週間から数ヶ月かかりますが、うつ病への薬物療法の中心となることが多い薬です。また、抗精神病薬は本来統合失調症の治療薬ですが、抗うつ薬と併用をすることで症状の改善が得られる場合もあります。治療期間の注意として、十分な休息をとること・重大な決断は先に延ばすこと・周囲ははげまさないようにして見守ること、などが挙げられます。

精神科と心療内科どちらで受診すればよいですか?

精神科と心療内科のどちらにかかるべきかは、症状の性質や重症度によって判断するとよいでしょう。ただし、どちらも適切な診断と治療を行う医療機関であり、最終的には患者さんが利用しやすいほうを選ぶことが重要です。精神科は、心の病気全般を専門的に治療する科です。特に重度の症状(自殺念慮・日常生活が困難になる程の症状)がある場合は、精神科を受診するのがよいでしょう。また、複数の心の病気が併存している可能性がある場合にも精神科が適しています。精神科医はうつ病に対する豊富な経験を持ち、薬物療法や心理療法の選択肢が広いことが特徴です。心療内科は、ストレスが関与する身体の症状(頭痛・胃痛・不眠・動悸など)を伴うケースに対応します。仕事や人間関係のストレスがきっかけで体調不良が現れるなど、身体的な症状が主で心の病気が原因である可能性がある場合に利用されます。精神的な症状と身体的な症状を統合的に評価してもらえるため、身体の不調が強い場合に受診しやすいです。診療科の違いに拘りすぎずに初回の受診で安心感や信頼感を感じられる医師を選ぶことが重要です。症状が重い場合や迷う場合は、総合病院の精神科や心療内科を利用するのも選択肢でしょう。早めに専門の医師の診断を受けることが回復への近道です。

編集部まとめ

屋外でラジオ体操をする男女
うつ病は適切な治療とサポートがあれば、多くの場合で症状が改善し、社会生活への復帰も可能です。

ただし、長期的な治療と再発防止への取り組みが重要となります。

治療を続けることで回復の道が開けますので、早めの受診と相談をおすすめします。

自分だけでなく周りの大切な方のこころと身体を守るためにも、うつ病に対する理解を深めましょう。

この記事の監修医師