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「網膜症の症状」はご存知ですか初期症状・末期症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/01/05
「網膜症の症状」はご存知ですか初期症状・末期症状も解説!【医師監修】

糖尿病網膜症は、視力を損なう重大なリスクを伴う病気です。初期段階では自覚症状が乏しいため、気付かないうちに進行し、失明に至ることもあるため、注意が必要です。

本記事では糖尿病網膜症の症状について以下の点を中心にご紹介します。

・糖尿病網膜症の進行分類と症状
・糖尿病網膜症の検査
・糖尿病網膜症の治療

糖尿病網膜症の症状について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

糖尿病網膜症の概要

糖尿病網膜症の概要

糖尿病網膜症とはどのような病気ですか?

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、神経障害と並ぶ糖尿病の三大合併症の一つであり、日本では成人の失明原因として多いとされている病気です。網膜は目の奥にある薄い膜で、光を感じて視覚情報を脳に伝える重要な役割を担っています。

血管が詰まると網膜の一部が酸素不足に陥り、新たに生じる新生血管は脆弱なため破れやすく、眼内出血を引き起こします。また、出血や増殖膜が網膜を引っ張ることで網膜剥離が生じ、視力低下や失明のリスクが高まります。糖尿病網膜症は進行性のため、早期の血糖管理と定期的な眼科検査が重要です。

糖尿病網膜症になる原因を教えてください

糖尿病網膜症は、糖尿病の影響で血管が損傷されることにより発症します。糖尿病では、血糖値が高い状態が続くことで血液中の糖分が過剰になり、細い血管が特に影響を受けやすくなります。網膜の血管も例外ではなく、詰まりや出血が生じることがあります。

既存の血管が十分に機能しなくなると、網膜は酸素や栄養を補うために新しい血管(新生血管)を作りますが、これらの血管は脆く、簡単に破れてしまうため、眼内出血や網膜のむくみを引き起こします。

この状態が進行すると、視界がかすむ、視力が低下するなどの症状が現れ、重症化すると網膜剥離や緑内障を伴い、失明に至る可能性もあります。そのため、適切な血糖管理と定期的な眼科受診が予防に重要です。

糖尿病と診断された場合どうすればよいですか?

糖尿病と診断された場合、早期の治療と継続的に管理することが重要です。糖尿病患者さんの30〜50%程度が糖尿病網膜症を発症するとされ、10%程度が失明のリスクを伴う重度の状態に進行します。そのため、血糖コントロールを徹底しながら治療を継続することが必要です。

まず、診断を受けたら、年に1回以上眼底検査を受け、目の健康状態を確認しましょう。また、治療を後回しにしたり中断したりすると、視力低下や失明のリスクが高まるため、医師の指示に従い継続治療を行ってください。

さらに、生活習慣の見直しも重要です。バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、ストレスを軽減することが血糖コントロールの安定に寄与します。放置せずに治療を継続することで、健康的な生活を維持できます。

糖尿病網膜症の進行分類と症状

糖尿病網膜症の進行分類と症状

糖尿病網膜症の初期症状について教えてください

糖尿病網膜症の初期段階では、自覚症状が少ないとされています。そのため、気付かないうちに進行してしまうことがあり注意が必要です。ただし、進行に伴い以下のような症状が現れる場合があります。

・視界がかすむ
・見え方にムラがある(部分的に見えにくい)
・光を見たときにまぶしさを感じる
・飛蚊症(視界に小さな黒い点や影が見える)

上記の症状は血管の損傷やむくみ、軽度の出血が原因で起こることがあります。
また、糖尿病と診断された場合や視覚に異変を感じた場合は、症状がなくても定期的に眼科検診を受けることが重要です。

糖尿病網膜症の中期症状について教えてください

糖尿病網膜症が中期に進行すると、自覚症状が現れることが増えてきます。代表的な症状として、以下のようなものが挙げられます。

・視界がぼやける、歪んで見える
・飛蚊症(視界に浮遊物が見える)
・暗い場所での視力低下
・見える範囲に暗い部分や影ができる

これらの症状は、網膜の血管が詰まり、血液や体液が漏れ出すことで網膜がむくむ黄斑浮腫や、新しくできた脆い血管(新生血管)による軽度の出血が原因となっています。
この段階では、放置すると症状が進行しやすいため、早急な治療が必要です。

糖尿病網膜症の末期症状について教えてください

糖尿病網膜症が末期に進行すると、視力に深刻な影響を及ぼす症状が現れます。具体的には以下のような症状が挙げられます。

・突然の視力低下
・大量の眼内出血による視界の遮断
・網膜剥離による視野喪失
・視界が黒い影やカーテンで覆われる感覚

これらは、新生血管が破れて出血したり、増殖膜が網膜を引っ張ることで網膜剥離が引き起こされることが原因です。また、末期では緑内障を合併することもあり、眼圧の上昇によってさらなる視力低下や痛みを伴う場合もあります。

この段階では、適切な治療を受けなければ失明のリスクが高まります。

糖尿病網膜症の失明率はどのくらいですか?

糖尿病網膜症の適切な治療を受けていない場合、10%程度の割合で失明する可能性があります。

なかでも、血糖コントロールが不十分な場合や、網膜症が末期に達した場合には、失明のリスクが飛躍的に上昇します。

しかし、適切な血糖管理と定期的な眼科検診、進行状況に応じた治療(レーザー治療や手術など)を受けることで、失明を予防できる可能性が高まるため、早期発見と治療が視力を守るために重要です。

糖尿病網膜症の検査や治療・予防について

糖尿病網膜症の検査や治療・予防について

糖尿病網膜症の検査について教えてください

糖尿病網膜症の診断には、眼科検査に加え、以下の専門的な検査が行われます。

・蛍光眼底撮影(フルオレセイン蛍光撮影)
静脈に蛍光色素を注射し、その後眼底を撮影して血管の状態を詳しく調べます。この検査によって血管の詰まりや漏れ、新生血管の有無を確認し、病気の進行状況を判断します。

・光干渉断層計(OCT)検査
網膜の断層画像を撮影するもので、黄斑浮腫や網膜層の変化を詳細に把握でき、特に糖尿病網膜症に伴う黄斑症の診断に役立ちます。

糖尿病網膜症は初期には自覚症状が少ないとされているため、定期的な検査を受けることで早期発見と適切な治療につながります。

糖尿病網膜症の治療にはどのようなものがありますか?

糖尿病網膜症の治療は、病気の進行度に応じて選択され、以下の3つが挙げられます。

・網膜光凝固術
レーザー光を用いて、新生血管の発生を抑える治療法で、早期段階の糖尿病網膜症に効果が期待できます。

・硝子体注射
抗VEGF薬を眼内に注射して新生血管の退縮を促し、黄斑浮腫の改善を図ります。

・硝子体手術
進行したケースでは硝子体手術が必要になる場合があり、硝子体出血や網膜剥離の治療に用いられます。

いずれの治療法も、病状の進行を抑えることが目的で、元の視力をすべて取り戻すことは難しい場合があります。糖尿病網膜症の早期発見と治療開始が視力の保護が重要となるため、定期的な眼科検診を受け、症状が出る前の対応が推奨されます。

糖尿病網膜症の予防法を教えてください

糖尿病網膜症の予防には、血糖コントロールが重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠といった健康的な生活習慣を根気よく続けることで、発症リスクを低減し、進行を防ぐことが期待できます。

また、定期的に眼科検診を受け、早期に異常を発見することが視力を守る鍵となります。なかでも、糖尿病と診断された方は、症状の有無に関わらず、年1回以上の眼底検査を欠かさないようにしましょう。

ただし、血糖値が高い状態から急激にコントロールを厳しくすると、網膜症を悪化させる場合もあるため、医師の指導のもとで行うことが重要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

糖尿病網膜症は進行すると視力を大きく損なうリスクがありますが、早期発見と適切な治療によって視力を守れます。
また、糖尿病と診断された方や気になる症状がある方は、定期的な眼科検診を受けることをおすすめします。血糖値や生活習慣の管理を徹底し、病気の予防と進行抑制に努めましょう。

編集部まとめ

網膜症 症状
ここまで糖尿病網膜症の症状についてお伝えしてきました。
糖尿病網膜症の症状について、要点をまとめると以下のとおりです。

・糖尿病網膜症は初期・中期・末期の3段階に分類され、初期は自覚症状が少なく、中期は酸素不足が進行、末期では新生血管の破裂や網膜剥離が起こり、失明リスクが高まる
・糖尿病網膜症の検査には、血管状態を確認する蛍光眼底撮影や、網膜の断層画像を撮るOCT検査がある
・糖尿病網膜症の治療には、進行度に応じ、網膜光凝固術、硝子体注射、硝子体手術がある

糖尿病網膜症は、早期発見と適切な治療で進行を抑え、視力を守れます。糖尿病と診断された方やリスクを感じている方は、定期的な眼科検診を欠かさず受け、生活習慣を見直すことが大切です。

本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修医師