インフルエンザは、毎年12月〜3月頃をピークに流行する感染症です。
急に体調を悪化させる可能性があるため、早い対策が重要になってきます。迅速に適切な対応を取ることで、他者への感染や自分自身の重症化を防ぐことができるでしょう。
そのためにもインフルエンザの症状を正しく理解することは、自己管理と健康維持においてとても重要です。
この記事では、インフルエンザB型の症状やA型との違い、治療方法について解説します。
監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。
インフルエンザB型の症状
インフルエンザB型の特徴を教えてください。
インフルエンザは風邪とは違い、潜伏期間を経て急速に症状があらわれます。また、一般的な風邪の症状と併せて関節痛や筋肉痛などの全身症状を発症するのもインフルエンザの特徴です。インフルエンザは流行すると短期間で多くの方へ広がっていくウイルスであるため、症状がでた場合は迅速に医療機関へ受診するのが望ましいです。
インフルエンザB型の症状を教えてください。
インフルエンザB型特有の症状はありません。インフルエンザの症状として、次のような症状が挙げられます。
- 38度以上の高熱
- 全身症状(頭痛・関節痛・筋肉痛など)
- のどや胸の痛み
- 鼻水やくしゃみ、咳など
- 下痢や腹痛
インフルエンザはこれらの症状が急速にあらわれることが一般的です。症状がでた場合は、重症化する前に医療機関へ受診しましょう。重症化する可能性がある方として、次のような方が挙げられます。
- 高齢者
- 幼児
- 妊娠中の女性
- 持病のある方(喘息・慢性呼吸器疾患・慢性心疾患・代謝性疾患など)
稀ではありますが、小児では急性脳症、高齢者の方や免疫力の低下している方では肺炎を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。まず、インフルエンザから身を守るためにも予防対策をしっかり行うようにしましょう。
インフルエンザA型との症状の違いを教えてください。
どちらの型も似たような全身症状を来たしますが、症状の強さに違いがあり、A型よりもB型の症状の方が相対的に軽い場合が多いといわれています。小児の場合では、A型に比べてB型の方が嘔吐や下痢などの消化器官の症状が強く出現するといわれています。しかし、インフルエンザの感染症に続発して胃十二指腸潰瘍を引き起こしている場合、消化器官の症状が出現しているA型が多くある例も報告されています。また、インフルエンザA型とインフルエンザB型のウイルスの排出パターンが異なるのも違いの一つです。A型の症状は発症時がピークとして順次に下がっていきます。それに対しB型は数日間、症状が上下し、発症時よりも増加していく可能性もあることがわかっています。重症化する前に医療機関を受診し、正確な検査を行ってもらいましょう。
風邪との症状の違いを教えてください。
風邪には全身症状はみられず、インフルエンザの場合に全身症状があらわれるのが風邪との違いです。そして、風邪の場合はこれらの症状がゆっくり発症していきますが、インフルエンザでは潜伏期間を経て急速に発症することがわかっています。どちらも共通の症状の一つとして発熱が挙げられますが、風邪の場合の発熱は37.5度以上を指しているのに対し、インフルエンザの場合は38度以上の高熱のことを指しています。
インフルエンザB型の治療方法
インフルエンザB型の検査方法を教えてください。
一般的な検査方法はキットによる抗原検査で判定が行われます。抗原検査とは、検査をしたいウイルスの抗体を用いてウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。検査方法は鼻腔ぬぐい液がついた綿棒を鼻から2cm程度挿入し、5回転させます。5秒程度放置させ、引き抜いたら検査終了になります。5分〜15分で判定結果がわかるので時間もかかりません。
検査はどのタイミングで受ければよいですか?
インフルエンザは1〜3日間の潜伏期間を経て、初期症状があらわれます。そのため、感染していてもすぐに症状はでません。そして発症していても24時間以内であれば検査を行っても陽性反応が判定しづらいとされています。重篤な状態でなければ、症状出現の翌日を目安に医療機関へ受診するようにしましょう。
インフルエンザB型の治療方法を教えてください。
主なインフルエンザの治療方法は薬物療法です。インフルエンザ治療薬には、カプセルや吸入粉末剤、錠剤などの種類が複数あります。医師と相談をしながら検討していきましょう。薬物療法のなかにも抗インフルエンザウイルス薬を用いる原因療法と、症状を和らげるための対症象療法があります。抗インフルエンザ薬は、ウイルスの増殖を抑えて感染の拡大を防ぐ薬です。発症後はなるべく早く服用を開始することが重要になってきます。対症療法では、高熱の場合に解熱剤を使用し、黄色痰などの細菌の2次感染が疑われる場合には抗菌薬が処方されることがあります。また、睡眠や休養、脱水症状を回避するための水分補給を十分に行うなどの基本的なことを指す一般療法もインフルエンザの治療方法の一つです。
どのような薬が使用されますか?
インフルエンザに対する治療薬には、次の抗インフルエンザウイルス薬が挙げられます。
- タミフル
- リレンザ
- ラピアクタ
- イナビル
- シンメトレル(A型にのみ有効)
- ゾフルーザ
ただし、これらはインフルエンザの症状が出始めてからの時間や状態によって異なります。また、すべての患者さんに対して必須でない場合もあるため、使用の有無は医師の慎重な判断に基づきます。その他にもインフルエンザウイルスには直接効果はありませんが、解熱剤やインフルエンザに合併する肺炎や気管支炎に対する治療方法として抗生物質が処方されることもあるでしょう。
インフルエンザB型の予防対策
毎日習慣にしたいインフルエンザB型の予防対策を教えてください。
習慣にできるインフルエンザB型の予防対策には次のようなものが挙げられます。
- 外出後の手洗い
- 適度な湿度の保持
- 十分な休養とバランスのよい食事
- 人が集まるような場所への外出を控える
- 室内でのこまめな換気
インフルエンザの感染経路は飛沫感染と接触感染です。体調の悪い方はもちろん、高齢の方や妊婦の方は人が多い繁華街への外出は控えた方が望ましいでしょう。自宅内でも家族や同居者に感染させないために、不織布マスクの着用や手洗いを徹底することが重要です。また、タオル、食器などの共有するものは避け、できるだけ別の部屋で過ごすようにしましょう。
インフルエンザワクチンの有効性について教えてください。
まず、インフルエンザワクチンの有効性は、ヒトを対象にワクチンを接種しなかった方が病気にかかるリスクを基準とした場合、接種した方が病気にかかるリスクがどれだけ減少したかという指標で示されます。そこで6歳未満の小児を対象とした研究では、インフルエンザワクチンの有効率は60%とされています。必ずしもワクチンを接種したからといってインフルエンザにかからないわけではありません。しかし、ワクチンを接種することによってインフルエンザ発症後の重症化を予防することには、一定の効果があるといわれています。また、ワクチンの接種回数に関して13歳未満の方は、1回接種よりも2回接種後の方がより高い抗体価の上昇が得られるとされています。ショックやアナフィラキシー症状を引き起こしたことがある方は予防接種が受けられないため、予防対策を徹底的に行っていくことが重要です。また、接種に注意が必要な疾患を持っている方はあらかじめ医師に相談しておくことが必要です。
編集部まとめ
インフルエンザウイルスの感染力はとても強いです。日本では毎年約10,000,000人、約10人に1人が感染しています。
多くの影響を与える感染症ですが、予防接種や日々の体調管理、適切な治療を通じて、そのリスクを大きく減らすことが可能です。
早期の診断と適切な治療を受けることで、症状を和らげることができ、また周囲への感染を防ぐこともできます。
日常の手洗いやうがい、そして十分な休息と栄養も、インフルエンザ対策には欠かせません。
ただの風邪だと判断せず、自分や大切な方々の健康を守るために正しい情報を理解し、予防や対応をしっかりと行いましょう。