目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「ノロウイルスの初期症状」はご存知ですか?潜伏期間も解説!【医師監修】

「ノロウイルスの初期症状」はご存知ですか?潜伏期間も解説!【医師監修】

 公開日:2024/11/20
「ノロウイルスの初期症状」はご存知ですか?潜伏期間も解説!【医師監修】

胃腸炎は年齢や性別に関係なく、誰もがかかる可能性があります。そのなかでも一般的に広く知られているのがノロウイルス感染症です。

ノロウイルス感染症のつらい症状に悩まされて苦しむ期間を少しでも減らすためには、特徴を十分に把握し対策しておくことが大切です。

この記事ではノロウイルス感染症の初期症状を中心に、感染経路や治療方法も含めて解説します。罹患しないための予防法も参考にしてみてはいかがでしょうか。

眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

プロフィールをもっと見る
信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

ノロウイルス感染症の感染経路・潜伏期間

口に手をあてる作業着の男性

ノロウイルスとはどのようなウイルスですか?

ノロウイルスは直径30~38nmの正20面体をしており、ウイルスのなかでも小さい部類に属します。32個のコップ状のくぼみを持つカプシドタンパク質に覆われていて、粒子内にウイルスRNAゲノムを遺伝子として持っているのが特徴です。小腸の上皮細胞で増殖し、物理的に高い安定性を有しています。宿主域が異なる10の遺伝子型グループが存在し、主要な流行株の遺伝子型は多様化しています。また、ノロウイルスを培養できる生きた細胞がなく培養ができないため、ウイルスを特定するのが困難です。一般的に食中毒として認識されているものの、食品中のウイルスの検出が難しいことが原因究明を遅らせています。

感染経路を教えてください。

ノロウイルス感染症の感染経路の多くは経口感染です。ウイルス性急性胃腸炎の場合、ウイルスを大量に含んだ嘔吐物や排泄物による二次感染や、ヒトからヒトへの直接の感染などが多くみられます。さらに、ウイルスに汚染された食品や水を飲食したことで起こるウイルス性食中毒にも注意が必要です。近年では、罹患した食品取扱者を介してウイルスに汚染された食品を摂取したことによる感染が増加傾向にあります。そして、口腔内に10~100個のウイルスが入るだけで感染が成立する程、強力な感染力を有していることが報告されています。それにより人が密集する閉鎖空間で感染が拡大し、集団食中毒となって発覚するケースが多いです。特に食品産業・医療施設・高齢者施設・教育施設で頻繁に発生しています。

潜伏期間はどのくらいですか?

ウイルスが体内に侵入し感染してから症状発症までの潜伏期間は、24~48時間程度です。短い場合には数時間で症状が現れることもあり、反対に3日以上後になって症状がみられる患者さんもいます。潜伏期間中から他者への二次感染が考えられるため、感染が疑われるなら自宅でゆっくりと休養しましょう。

流行しやすい時期を教えてください。

日本での月別発生状況によると、通年発生はしているものの特に11月頃から発生件数が増加し始め、12月から翌年1月頃までがピークとなる傾向にあります。その後、4月頃まで流行が続くと考えられます。これらの時期は発生件数が多いことに加え、ひと月あたりの患者数が1,000人以上になることもあるでしょう。ノロウイルスは低温や乾燥した環境に強い性質があり、冬に感染が拡がりやすいです。日本の夏は高温多湿のため発生は少なくなるものの、鮮魚や肉類など水分活性が高い食品のなかでもウイルスが生き残ることから、夏も引き続き注意が必要です。

ノロウイルス感染症の初期症状

お腹を抑える女性

ノロウイルスに感染するとどのような初期症状が出ますか?

ノロウイルス感染症は顕著な前兆がなく、突然症状が現れます。発熱を伴うケースは少ないですが、初期状態で37~38度程の微熱が生じることはあるでしょう。明確な初期症状は、突発的な吐き気や嘔吐です。胃がムカムカするような症状がみられた後、半日程の間に複数回嘔吐を繰り返します。また嘔吐に続いて、下痢症状が引き起こされます。酸っぱい臭いのクリーム色をした下痢が生じてから、水様性の下痢が1日に2~3回程度出るでしょう。嘔吐や下痢は、体内のウイルスを排出しようとする身体の自然な反応です。これらに伴い、刺すような腹痛もみられます。一方で、感染しているにも関わらず自覚症状がない方や軽い風邪のような症状で済む方もいます。この場合、患者さん自身がウイルスを持っていることに気付かず感染を拡げてしまいやすいです。

症状はどのくらいの期間続きますか?

ノロウイルス感染症の症状は平均1~2日程度と短期間です。発症から1週間程度が回復期とされ、大半の患者さんはその期間内に治療せずとも自然に回復し、後遺症もないのが一般的です。しかし患者さんの体調や感染状況によっては、1週間以上長引くこともあります。特に腸管免疫が確立されていない5歳未満の小児や免疫力が低下している高齢者は、重症化しやすい傾向にあります。嘔吐・下痢に伴う脱水症や嘔吐物の誤飲による誤嚥性肺炎などの症状が引き起こされると、回復までに時間がかかってしまうでしょう。

ノロウイルス感染症の治療・予防方法

腹痛を訴える女子高生

ノロウイルス感染症で医療機関へ行く目安を教えてください。

ノロウイルス感染症にみられる突然の吐き気・嘔吐・下痢の症状がみられる方は、なるべく医療機関の受診を検討すべきです。とはいえ1回嘔吐するたびに1時間程度お腹を休ませ、その後こまめに水分が摂れるのであれば受診せず自宅で経過観察してもよいでしょう。反対に、発症から半日~1日経過しても食事が摂れず水を飲んでもすぐに吐いてしまう状態であれば、早急に受診する必要があります。また小児や高齢者は重症化のリスクを抑えるために、症状の程度に関わらずすみやかに受診するようおすすめします。

医療機関ではどのような治療を行いますか?

ノロウイルス感染症には、特効薬となる抗ウイルス薬がいまだありません。症状の期間が短いため、吐き気止めや整腸剤などの薬を用いて対症療法を行い回復に努めます。また、治療中は下痢や嘔吐による水分や電解質の喪失で脱水症になる危険があります。患者さんの状態をみて、脱水症状が起こっている場合には点滴が行われるでしょう。なお、細菌による感染症に用いられる抗生物質は効果がなく下痢の期間を遷延させる恐れがあるため、ノロウイルス感染症の治療では通常は使用されません。さらに下痢が長引く場合は下痢止め薬(止瀉薬)が投与されますが、ウイルスが十分に排出されず回復を遅らせる可能性があり、基本的には避けられます。

家庭でのセルフケア方法を教えてください。

自宅で経過をみる場合は、まず嘔吐が始まってからは嘔吐を誘発しないように無理な飲食は避けましょう。水分摂取を開始する目安は、吐き気がある程度落ち着いてからです。水分はなるべく体温と同程度に温め、少量ずつ摂取します。飲み物でおすすめなのは、麦茶・リンゴ果汁・経口補水飲料です。スポーツドリンクは糖質が多くかえって喉が渇くため、スポーツドリンクしかない場合には半分程薄めて飲みましょう。食事は水分が十分に摂れるようになってから行います。すりおろしたリンゴやおかゆなどのやわらかく消化のよい流動食を、少量ずつ摂るようにしましょう。徐々に食事の内容を変え、固形物も食べられるようになると順調に回復に向かっていきます。

ノロウイルス感染症の予防方法を教えてください。

効果を期待できる特定の抗ウイルス薬がないのと同じように、ノロウイルス感染症にはワクチンもありません。とはいえ手指からの感染ケースが多いウイルスのため、流水と石鹸を使った手洗いの効果が認められています。石鹸自体にはウイルスを殺す力はないものの、手からウイルスが剝がれやすくなる効果を持っています。食品・排泄物・他者との接触があるタイミングでは、石鹸を使って十分に手洗いを行うのがおすすめです。また、調理をする際には調理道具の洗浄や消毒を徹底する点や、食品を十分に加熱する点も重要です。感染者の嘔吐物や排泄物には大量のウイルスが含まれているため、処理を行う場合には丈夫なマスクと手袋を着用し、メガネやゴーグルで目を保護しましょう。そして嘔吐物や排泄物をペーパータオルで拭き取り、塩素系消毒剤を浸した布で水拭きをします。拭き取る際に発生する飛沫によって感染が拡大しないよう、処理者以外をその場から遠ざけることも大切です。汚れた衣類は塩素系消毒剤で30分程度浸け置きした後に、洗濯機で通常通り洗濯するのが効果的です。症状は緩和されても回復期の間は引き続きウイルスが便で排出されます。この期間は二次感染のリスクが高く、同居するご家族がいる方は感染拡大への対策が必要です。免疫抑制剤を服用している患者さんでは、ノロウイルスの排出が28日以上続いた症例も報告されているため、十分注意しましょう。

編集部まとめ

ベッドルームにいる男性

この記事では、ノロウイルスの感染経路や初期症状に関する情報を詳しく解説しました。感染経路が多彩なため、誰しもかかる可能性があります。

症状の期間自体はあまり長くないものの、注意していないと脱水症を起こして体調が弱り、症状が悪化する危険が伴います。

日頃からできる予防対策を徹底する点と、初期症状が出た際に早めに医療機関を受診し自分自身でも脱水対策を継続する点に注意して、身を守っていきましょう。

この記事の監修医師