「うつ病と適応障害の違い」はご存知ですか?医療機関にかかる目安も解説!
公開日:2024/11/08
適応障害という病名を時折耳にしますが、実際にどのような病気なのかはあまり知られていません。
また適応障害はうつ病とも混同されやすく、病気に関して誤解が生じている場合も見られます。
この記事では適応障害とうつ病の違いを解説するとともに、適応障害の診断基準や治療方法・ご家族が適応障害になったときの対応方法も紹介します。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
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保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
適応障害の診断基準やうつ病との違い
適応障害とはどのような病気ですか?
適応障害は何らかのストレスが原因で心身のバランスが崩れた結果、日常生活で起こる出来事や環境に対処できなくなり社会生活に支障をきたす病気です。原因が明確で、それに対して過剰な反応が起こっている状態を指します。憂鬱・不安感・頭痛・不眠などの症状が現れ、仕事や学業に向き合えなくなったり対人関係や社会生活を続けられなくなったりします。これらの症状は正常な人にも見られますが、適応障害の患者さんの症状は通常見られる症状の程度を越えた過敏な状態です。
適応障害の原因を教えてください。
主な原因はストレスであり、適応障害では病気の原因となるストレスが明確に存在します。外因的な要素であるストレスに、内因的要素である性格やストレスに対する耐性が組み合わさったときに発症します。学校や職場など環境の変化・人間関係の悪化・災害・身近な人との離別・健康状態の悪化など大きな変化がストレスとなることが少なくないようです。ストレスとの向き合い方や感じ方は人それぞれなので、ストレスそのものの質や大小は病気を発症するかどうかには関係ありません。大きなストレスに直面しても発症しない人もいれば、人から見れば些細と思われるストレスが原因で適応障害になり重大な症状に至る人もいます。
適応障害の診断基準を教えてください。
Rアメリカの診断基準では適応障害は原因であるストレスが始まってから3ヵ月以内に発症し、原因となるストレスが消滅するとそれから6ヵ月以内に改善されるものとしています。ただし原因であるストレスが持続する限り症状は持続します。ストレスの性質や強度に関する基準はありません。さらに、原因であるストレスから予測される程度をはるかに超えた苦痛があること・社会的職業的機能が著しく損なわれていること・ほかの精神障害の基準を満たしていないことも診断基準です。
うつ病との違いを教えてください。
適応障害でははっきりとした原因となるストレスがあり、そのストレスがなくなると症状も改善します。このことから原因となるストレスがあるものが適応障害であり、それがないものがうつ病であるとする考えもありますがそれは不正確です。たしかに適応障害の診断では発症の原因となった明らかなストレスがあることが前提とされていますが、うつ病でも発症にはストレスが引き金になっているケースがほとんどなので、原因となるストレスの有無ではうつ病と適応障害を分けません。またうつ病と適応障害は重症度で区別できるとの誤解もありますが、両者の区別はそれぞれの診断基準を満たすかどうかで判断されるもので、必ずしも重症度での区別はありません。
適応障害の受診目安や治療方法
適応障害で医療機関にかかる目安を教えてください。
適応障害で医療機関の受診をおすすめするのは以下のような症状が現れた場合です。
- 抑うつ
- 不安
- 食欲不振
- 拒食・過食
- 不眠・睡眠状態の悪化
- 過呼吸
このような症状が続く場合は早めに医療機関の受診を考えてください。
ストレス対策としてどのような治療を行いますか?
治療では主にカウンセリングを行います。丁寧なカウンセリングによって適応障害の原因となるストレスを分析し、どうしたらそのストレスを取り除けるか直接的な対応の検討をします。適応障害では原因となるストレスがなくなると症状も消滅していくため、まず原因であるストレスを取り除くことが大切です。職場の人間関係がストレスになっている場合は人間関係の改善をはかるなどの対策が考えられます。しかしこういった問題は解決が容易でない場合もあり、周囲の理解と協力が必要です。あるいは患者さん自身の自分に対する認識を検討して、可能であれば変化を促すことも考えます。患者さん自身の認識や考え方、ストレスへの対応方法をよく知って、変えられる部分があれば変えていく方法も探ります。
薬物療法を行うこともありますか?
適応障害の治療には薬物療法も用いられます。一般的には抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬などを投与しますが、適応障害は薬物で完治するものではないので、ストレスを取り除く環境調整や心理療法が優先されます。薬物療法は強すぎる不安や憂鬱などの症状を抑えながら、環境調整や認知行動療法を進めやすくすることが目的です。
適応障害の早期発見やうつ病への進行
適応障害を早期発見する方法はありますか?
適応障害では、焦燥感・不安感・抑うつ・行動異常・身体の不調などに気付き医療機関を受診することにより病気の早期発見がはかれます。ご家族やまわりの人がまず患者さんの変化に気付くケースも見られ、それも病気の早期発見につながっています。またストレスチェックを行うのも適応障害の早期発見に役立つ方法です。職場などでは定期的なストレスチェックの実施が勧められます。また人間ドックが身体疾患だけでなくストレス関連疾患の予防と早期発見のきっかけとなるように、健診項目にストレスチェックや面接を組み込むことが今後重要となるでしょう。
家族の適応障害に気付いたらどのように対処すればよいですか?
ご家族の様子がいつもと違うことに気付いたら、まずはじっくり話を聴いてあげてください。ただし患者さんが話したくない様子を見せたときは無理に聞き出そうとする必要はありません。話したくなったらいつでも聞く態度を示しておくのがよいでしょう。そのうえで会社であれば産業医や相談窓口に相談するよう促してみてください。患者さん本人が相談をためらうようであればご家族からの相談も可能です。ご家庭ではリラックスできる環境を作るよう努めてください。それでも症状の改善が見られないようでしたら医療機関の受診をすすめましょう。精神科医・心療内科医を受診するのが妥当ですが、かかりつけ医がいる場合は、まずそこを受診すると、専門の医師を紹介してくれるかもしれません。ご家庭では過度に励まさない・無理に特別なことはしないなどの配慮も有効です。患者さんが医療機関を受診する際は付き添ってあげると一緒に主治医の話が聞け、患者さんのよりよいサポートのしかたを知ることもできます。
うつ病に進行してしまうこともあるのでしょうか?
症状に改善が見られず病気が進行した場合に、適応所街がうつ病や不安障害に進行するケースは少なくありません。適応障害が適応障害であり続ける確証はなく、むしろうつ病になりやすい病気ともいわれています。うつ病への進行を防ぐために患者さんの経過観察には慎重さが求められ、こまめな診断の再検討が必要です。
編集部まとめ
適応障害には明確な原因となるストレスが存在し、そのストレスが消えると症状も改善にむかうことがわかりました。その点がうつ病と異なります。
適応障害の治療には原因となるストレスから一時離れたりそのストレスをなくしたりするように努力することが大切です。外因的要素であるストレスを取り除く対策を取ると同時に、患者さん本人の認識を変化させるなど内因的要素へのアプローチも必要です。
適応障害で症状の改善が見られない場合はうつ病に進行するケースも少なくないので治療と診断には慎重な態度が求められます。
ご家族が適応障害ではないかと感じた場合は、話をじっくり聞くなどリラックスできる環境を作ると同時に早めに医療機関への受診をすすめてください。受診には付き添って行くとその後の治療に役立つでしょう。