RSウイルス感染症とは、RSウイルスに感染することによって引き起こされる呼吸器の疾患を指します。
RSウイルスは2歳になるまでに一度は感染するとされ、大人になってからも生涯にわたり感染と発病を繰り返すといわれています。
症状は咳や鼻水などの軽い風邪症状が一般的で、軽症で済む場合が多いです。しかし、乳幼児の約3割は症状が悪化し、気管支炎や肺炎などを引き起こすリスクがあるため、注意が必要です。
この記事では、小児の RSウイルス感染症の原因・症状・治療・予防方法などを解説しています。子どものRSウイルス感染症について詳しく知りたい方へ、ぜひ最後までご一読いただけましたら幸いです。
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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。
小児のRSウイルス感染症とは
RSウイルス感染症はどのような病気ですか?
RSウイルスは日本だけでなく世界中にいるウイルスで、生涯にわたって感染を繰り返します。 RSウイルス感染症の症状としては、発熱や鼻汁、咳などの風邪症状がみられることが一般的です。多くの場合は風邪症状のみで軽症ですが、重症化すると、気管支炎や肺炎などに移行する可能性もあります。特に初めて感染する場合や生後6ヵ月未満で感染する場合には重症化しやすいといわれています。これらに該当する場合には、特に症状の経過に注意しましょう。
小児のRSウイルス感染症が流行しやすい時期はありますか?
RSウイルスは夏から秋にかけて流行しやすい傾向にあり、秋にピークを迎えることが多いとされてきました。しかし、2021年以降は春から夏にかけて流行し、夏にピークとなる傾向にあります。
小児のRSウイルス感染症の原因・症状
RSウイルス感染症の感染経路を教えてください。
RSウイルスは、接触感染や飛沫感染で広がりやすいとされています。接触感染は、感染者との直接の接触や、感染者が触れてウイルスがついた部分に触れたり舐めたりして感染します。RSウイルスはテーブルや手すりなどの表面上で数時間生きているため、ウイルスに触れた手で、目・鼻・お口を触ることで感染しやすくなるのが特徴です。また、飛沫感染は感染者がくしゃみや咳をすることで、唾液に含まれるウイルスを吸い込み感染します。
RSウイルス感染症の潜伏期間はどのくらいですか?
RSウイルスの潜伏期間は2〜8日間といわれています。多くの場合は感染してから4〜6日間で咳や鼻水などの症状が認められます。
小児がRSウイルス感染症にかかるとどのような症状が出ますか?
小児がRSウイルス感染症にかかると、発熱や鼻汁、咳などの症状が数日続きます。多くの場合は軽症で、自然に軽快するケースが多いです。まれに喘息や呼吸困難などの重い症状が出現する場合があります。重症化すると、気管支炎や肺炎などを引き起こす場合もあるため、症状の経過に注意しましょう。
小児がRSウイルス感染症にかかったときの注意点や受診目安を教えてください。
多くは軽症で快方に向かうことが多いですが、重症化リスクの高い早産児・低出生児・生後6ヵ月未満の子ども・先天性心疾患がある場合は特に注意が必要です。初感染時には症状が重症化しやすいといわれており、初めて感染した乳幼児のおよそ3割は咳が悪化し、呼吸困難や喘息などの症状が出ることがあります。重症化した場合、無呼吸発作や急性脳症などの合併症に注意が必要です。子どもがRSウイルス感染症にかかった場合、必ずしも受診する必要はありません。食事や水分が普段どおりできて、機嫌や顔色がよければ、自宅で様子を見ても問題ないでしょう。目安として、呼吸が苦しそうな場合や食事や水分が十分に摂れていない場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。重症化リスクがあると考えられる乳幼児がRSウイルス感染症に罹患した場合、軽症だとしても急変する可能性も考えられます。夜間でも受診できる医療機関の連絡先や住所、行き方などを前もって調べ、家族で話し合っておくことをおすすめします。これらの対策を行うことにより、症状が悪化した場合にも落ち着いて対応できるでしょう。
小児のRSウイルス感染症の治療法・予防法
小児のRSウイルス感染症の診断にはどのような検査をしますか?
RSウイルス感染症の診断のためには、小児科クリニックなどの医療機関で鼻腔吸引液や鼻腔拭い液や咽頭拭い液などの検体にRSウイルスが含まれているかチェックします。一般的には、鼻の粘膜を綿棒でこすって検体を採取し、約15分で結果がわかります。
小児のRSウイルス感染症の治療法や効果のある薬を教えてください。
RSウイルス感染症の特効薬は残念ながら今のところありません。根本治療ではありませんが、対症療法といって、熱を下げたり咳や呼吸を楽にしたりするための治療を行います。食事や水分が摂れていない場合には、点滴をするケースもあります。
小児のRSウイルス感染症を予防する方法はありますか?
小児のRSウイルスは子どもが多く集まる保育園や幼稚園などで感染しやすいです。RSウイルス感染症は接触感染や飛沫感染により感染するため、予防のためには以下の対策が重要となります。
- 子どもや周囲の大人が手洗いをしっかりと行う
- 風邪症状のある方と接触するときは、マスクを着用する(マスク着用できる年齢の場合)
- 子どもたちが使用するおもちゃや触れる場所をアルコール消毒する
- RSウイルス感染症が流行している時期は人混みを避ける
乳幼児はマスクの着用も難しい場合があることから、保育園や幼稚園などの集団生活をしているなかで、感染を防ぐことは難しいこともあります。しかし、これらの感染対策を徹底すれば、RSウイルスへの感染リスクを減らすことができるでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
RSウイルスは、2歳までに一度は感染するといわれ、生涯を通して繰り返し感染します。小児のRSウイルス感染症は、多くの場合において発熱や鼻汁などの風邪症状のみで快方に向かうといわれています。ただしRSウイルスに初めて感染する子どもや生後6ヵ月未満の子ども、低出生体重児や先天性心疾患のある乳幼児は、重症化のリスクを否定できません。重症化すると、肺炎や喘息を引き起こす可能性があるため注意が必要です。RSウイルスはあらゆるところに存在するウイルスであり、感染経路としては飛沫・接触により感染することが考えられます。感染予防のためには、子どもだけでなく周囲の大人も手洗いやうがいを励行し、子どもがマスクの着用ができる年齢の場合はマスクを着用しましょう。また子どもが触れる場所やおもちゃなどのアルコール消毒や、RSウイルスの流行期には人混みを避けるといった対策を徹底することが大切です。小さな子どもが罹患した場合には重症化するリスクも考慮し、夜間も受診できる近隣の医療機関を調べ、家族で話し合っておくと落ち着いて対応できるでしょう。
編集部まとめ
いかがでしたでしょうか。ここまで、小児におけるRSウイルス感染症の症状や治療法、予防方法について解説してきました。
RSウイルス感染症は、RSウイルスに感染することによって引き起こされる呼吸器疾患で、多くの場合は風邪症状のみの軽症で快方に向かいます。
生涯を通して繰り返し感染するといわれ、ありふれた疾患ではあるものの、生後6ヵ月未満の子ども・低出生体重児・先天性心疾患がある乳幼児においては重症化リスクも考えられます。
感染症にかかった場合にも、基本的には自宅で経過をみて問題ありません。
ただし、普段より機嫌がよくない場合・水分や食事が摂れていない場合・呼吸がしにくそうな場合には、呼吸困難感や喘息などを引き起こす可能性があります。早めに医療機関を受診することが大切です。
感染経路としては接触感染や飛沫感染が考えられるため、日頃から手指衛生や子どもが触れやすい場所やおもちゃの消毒など、感染予防策を徹底しましょう。年間を通して常に感染予防策を行うことが大切ですが、RSウイルスは夏から秋にかけて流行しやすい傾向があるため、その時期は特に注意が必要です。
保育園や幼稚園などの集団生活のなかで感染を避けられないこともありますが、RSウイルスに関する正しい知識をもって対策を練ることで、罹患した場合にも冷静に対処することが大切です。